第28回体感バトル詩人部門


エントリ作品作者文字数
1この日、その夜、あの崖下で秋扇331
2君は、信頼とは、裏切られても信じることだ、と僕に言ったさくら、兄さん元気だよ。341
3娘色忠 美希生217
4自沈小鴨真帆302
5ワカレミチ綺有139
6クモの糸鵯 砂弐依163
7人魚日生藍香162
8ほんの5分の悪足掻きありの巣237
9かすみ椿※データ無
10ひっつきキャンディー絢神 淋檎144
11反響する足音百田 大地670
12パラダイスシルバー204
13秋と道あお優150
14無題紅粉チコ13
15クリスマス?それって食えるんですか?泉 利緒555
16怠慢峯田梓228
17いぶき八白132
18三連譚実践婆76
 
 
バトル結果発表
 ☆投票受付は終了しました。











エントリ1  この日、その夜、あの崖下で     秋扇


きみは
待っててくれてるかな?
ボクってさ、きみがいないと何も出来ない
なんてヤツじゃないんだぞ!
ボクだってひとりで一人前だもん
きみがいなくたって平気
だけど
いつかどこかで
きみは待っててくれてるよね?

ボクはきみがいる場所まで走っていくからさ
息をきらしても
足が疲れても
汗が目に入って辛くても……
ボクはきみのいる場所まで
走っていくよ
絶対
立ち止まったりなんかしない!
きみのいる場所まで
全速力で走っていくよ!
だから追いつくまで
ちゃんと待っててよね!
必ず行くから
それまで待っててよね!!

ふたりで約束した
あの月夜の下
あの崖下で……

愛してるなんて言わない
愛してるなんて言われたくない
そんなこと言い合わなくても通じ逢える
ボク達って
そんなだもんね

だから
ボクが行くまで
ちゃんと
待ってるんだぞ






エントリ2  君は、信頼とは、裏切られても信じることだ、と僕に言った     さくら、兄さん元気だよ。


私は、全ての人に認められようなどという
ハレンチな野望をもっていない
みせつけ、凌駕しようとする虚栄心
歩み寄り、分かち合おうとする良心
そのせめぎあいの中で自分らしくありたいだけだ

優越感のために偽善を売る者たち
「神は、そんな中途半端な者たちを忌み嫌うであろう」
そう予言し、この世を真紅に染めたクライスト
今日もお洒落れな言葉たちが
刹那で仕立てられた生真面目をまとい
この世を魅了する …サタンの使者たち


真心は、諦めずに続けていく中にある


私は、人に憎まれても、嫌われても
人を愛する人間でいたい
必ずしも正しくなくてもよい
必ずしも賢くなくてもよい
少々助平な俗人であってもよいと思う

真心は、一瞬の器用な言葉の中には存在しない
それは理解と反目、好意と嫉妬の織り成す
長い長いクロノロジーの中に存在するのだ






エントリ3  娘色     忠 美希生


 幼い娘が絵を描いた
小さな手にクーピーをしっかりと握りしめて
「何を描いているの?」と聞くと
「ままの赤!」と答えた
「じゃあパパは?」と訊ねると
「ぱぱは青!」と答えた

 あぁ、そうか
娘はちゃんと見ているんだな
私達のことが、ちゃんと見えているんだな
「さっちゃんは何色かな」と何気なく言うと
「さちはみ〜んな好き!」と答えた

 いつかはお前にも、お前自身の色が見つかるんだろうな
見つかるといいな
 
 だけどな、幸
パパの大事な書類に描くのはよしなさいよ






エントリ4  自沈     小鴨真帆


好きだった物への執着が消えた
好きな物が何なのか分からなくなった
霞んでいく夢を眺めながら溜め息

ただ生きる為に食べて
生きる為に寝て
生きる為に働いて
他には何もない
「そういう人にはならない」
幼い頃に誓った想い
けれど現実はこんなもの
生きる為の作業で
24時間は
いとも容易く食い潰されてしまう
最初の頃は焦った
やりたいこと叶えたい夢
たくさんあった
必死に時間を作って追いかけていた

けれど

なんだか急に面倒臭くなって
いつしか全てがどうでも良くなって
気づけば夢すら後回しになっていて
ただ生きているだけ

思い出したい
思い出したいよ

僕は何が好きだった?
僕は何を夢見ていた?
僕はどんなふうに笑っていた?

ほら、もう
思い出すことすら
面倒臭い






エントリ5  ワカレミチ     綺有


終わらないものも在るように
終わるものも在った
それだけだった

今日終わったあたしたちは
明日もこれからも終わっていて
それでも終わらない事も在る
これからも顔を合わせるだろう日常や
きみの目を細める仕草や
あたしの変わらない想いや

けれどそれでも
今日終わったあたしたちは
違う道を歩いてゆくんだ






エントリ6  クモの糸     鵯 砂弐依



 確かに今此処に在ったのに

 其れを忘れてしまっていた

 崩れる寸前で氣付くのだけど

 無力だから触れることすら出来ない



 最近 夜空を観るのが

 毎晩の習慣に成っている

 幾度と嗚呼、落ちて仕舞うと想うが

 宇宙に落ちて行った事は無い

 もう半分ほど落ちて居るのかも

 知れないけど
 

 本当に未だ流れ星は降ってこない


 此の街に

 此の静かな街に




※作者付記:
 下校中に夜天を見上げたんです。
 宇宙に引かれて、首が痛くて、息が白くて。







エントリ7  人魚     日生藍香


昔々
魚は人に憧れて
人は魚に憧れた

魚は2本足で歩くことを夢見た
「早く走ることも出来る
 ゆっくり散歩することも良さそう」

人はひれで泳ぐことを夢見た
「海の中を自由に泳ぎまわれる
 海の上で浮かぶのも良いね」

それならば交換しようということになり
魚は足を手に入れて
人はひれを手に入れた

そして
魚は土の冷たさに気付き
人は水の冷たさに気付いた






エントリ8  ほんの5分の悪足掻き     ありの巣



「幸せだなぁ・・・」

淡い吐息で男が呟いた
その声にうっすらと浮上した意識が
一人暮らし用の小さな部屋と
カーテンに透ける陽光を確認した

「あ、起こした?ごめん」

ゆっくりとめぐらした視界に
乾電池の吹っ飛んだ目覚まし時計と
一枚の新幹線のチケットが映った
現実に少し気分が冷めていき
瞼を閉じた

次に開けるとそこは暗闇で
でも
強まった彼のにおいで状況はわかる

「まだ、朝じゃないから寝ていなよ」

その嬉しい嘘に切なくなって、また瞼を閉じた
ほんの5分の悪足掻き
腕の中の夜を味わった

涙を再開の希望にかえて






エントリ9  かすみ     椿


貴女へと連ねるこの想い
名を紡げども かすむ記憶の中
冬に凍える冷たい月と
待ちわびていた貴女が其処にはいない

解けた糸を手繰り寄せ
至純の想い出 むせび泣き
擽るあの香も温もりも
果ては涙と為りて朽ち逝く

手の中に愛すべき貴女
其れは虚しき華と知り
救い給わんことを欲すれど
全て壊れ 夢の中






エントリ10  ひっつきキャンディー     絢神 淋檎


少し前に買ったあめを取り出してみたら
なかなか包装紙と離れたくれなくて
食べるとなんか気持ち悪くて
捨ててしまおうと思っても
なかなか捨てれなくて
そのまま放置してしまう
それは好きな人とケンカした時に
あやまりたくてもあやまれなくて
そのままじゃダメなんだけど
ズルズルと引きずってしまう
きっとそんな感じ






エントリ11  反響する足音     百田 大地


足音(自分の皮膚から顔をだした自我におびえながら踏み出した一歩の)
閉ざされた(閉ざされた、世界で閉ざし、閉ざした世界が閉ざされる)
無限の世界(広がり、伸び、真理に近づくにつれ、宇宙の闇が広がる。宇宙の闇と瞼の中の闇は無限)
耳元(常に一方通行で、沈黙を保つ)
黄色い嘴の中の黒い喉の中(その繰り返しが永遠に続く)
古い扉が幾度も閉ざされる(明後日と五年前の音のハーモニーが伴って)
ゴムボールが跳ね飛ぶような(真っ赤な、しかし砂埃で桃色になった)
アスファルトの白か黒の道(太陽、又は街灯による絵画)
人々によって
ミニマリズムが
繰り広げられる
やがて静寂を向かえ
自分の音が自分の耳を捕らえる(両者とも、まるで鏡に映った自分に驚いたように)
砂でできたビルディング(ゼラチン質)
音を伴いながら彼は口を開けた(分裂質)
そこには独りしか存ないのに(思考停止)
灰色に反響する自分に他人を被せ
追廻、悪戯を欲する
終わりの迎え方を忘れた
追いかけっこが螺旋階段を回りだす
やがて
頂上が見え
定めを七割弱悟る
足音
閉ざされた無限の世界
耳元
黒い喉の中で古い扉が幾度も閉ざされる
しかし
そこにあった匣は独り入れば
ただ独り入れば
もう二度と開かない
もう二度と(閉ざされない)
窓ガラスに打つかって屈折した光(彼女と目が合ったけれども、彼女は知らない振りをして過ぎ去った「待ってくれ!」光は音より速い)
足音の反響
閉ざされた無限の世界
耳元で反響
黒い喉の中で古い扉が
幾度も閉ざされる
匣の中から反響が笑う
そして
彼は見てしまう
そして
彼は九割弱悟る
ここは独りから発せられた
足音を独りの耳で聞く
閉ざされた無限の世界だと







エントリ12  パラダイス     シルバー


キザすぎるデザインのジャガーを

ぶっ壊してしまうんじゃないかってスピードで

某従者に運転させる

女王様(自称)

スピーカーから大音量で流れる

グラムロック

ロックに毒されてラリリまくる

基地外一同(女王様含め)

車内をゆする度に

カラコロカラコロいい声で鳴く

大量の瓶ラムネ

吐き気がするほど大量の

薄荷煙草の脂

向かう先はどこですか?

行き着く先はどこですか?

夜へ

「どうか明けないで」

ガキくさい願い

答えにたどり着くまで

期間限定のパラダイス






エントリ13  秋と道     あお優


優しさが痛いさ 膝にもしみるんだ
アスファルトに 車輪転がして走る

自転車は歩けないから
ゆっくりと 横顔を見ながら

あなたの涙が 私に伝わったみたい

優しさが痛い そう言った
膝にもしみるんだと

あなたの涙が 私 わかりました

沢山の落ち葉が アスファルトにこびりついて
それが まるで 雨に濡れたみたいだったから
 






エントリ14  無題     紅粉チコ


我欲するは風の中にありけり






エントリ15  クリスマス?それって食えるんですか?     泉 利緒


連日残業、休日出勤の俺に
世間はチキンを買えだのケーキを買えだの言ってくる
食える物ならまだいいが
女は女でリングが欲しいだのバッグが欲しいだの言ってくる
もう面倒なので携帯の電源は切っといた

「サンタはパパだと」子供が言う
今時の子供は夢が無いなと思いつつ
「今年のサンタは疲れてるから、お休みかもな?」
と、子供に言ったら泣かれてしまった
その場はアイスで誤魔化してなんとかなったが
現実的な事ばかり考えてしまうのは忙しいせいにしておこう

サンタに誰でもなれるのさ。とパンクな兄ちゃんが歌ってた
サンタになるのは簡単でも
サンタに遭遇する確率は、明日の天気が雪になる位の確率だ
この予報は気象庁より当たってる
今年は晴れのちサンタになる予定もない

家に帰れば帰ったで、家は真っ暗。当然だ
部屋に入れば入ったで
去年の女が置いてった、卓上ツリーが不気味に光る
「そんな物捨てちゃえよ」と家族は言う
言われるままに捨てた後
廊下の電気を着けたまま、部屋に入ったら
あんたら無茶苦茶怒るだろ!!

今年のクリスマスは平日扱いで
神が生まれためでたい日に労働するのも有りだろ?
働くサンタと働く俺、大して違いは無いだろう?
今年はサンタに素通りされても、笑っていられる大人で有りたい
来年? それは来年考えればいい事だ

今年のメリークリスマスは不気味なツリーに捧げておこう






エントリ16  怠慢     峯田梓


何故にあなたは
そんなに厳しいことばかり言うのだろうか
何も間違ってはいないのに
何をそんなにあせっているのだろうか

分かっているじゃないか
コンポを押す指や 45度に傾いた首
熱いシャワーや  梨の香り
電気を消した時の静寂
闇にぬるいお湯 綺麗に溶けてゆく

とてもちゃんとしている 大丈夫なのに

あなたと私の好きな色は同じ 
でも、興味はあまり、ないのでしょうか

だから私はこれらは全て意志に反すると断言するしかないのだけど

たばこの閃光 曇り行く 
修理に出したい
壊れてしまった






エントリ17  いぶき     八白


さびて あなの あいた
てつの ばけつ みたす
みずを よんだ くもの
うえの あおい そらの
さらに うえの くろい
くろい くろい そらを
とんだ しろい とりが
すきな きのみ おちた
じめん はっぱ ひろげ
なにか まって いると
うえを みあげ もりの
くうき すこし はいた






エントリ18  三連譚     実践婆


競べ馬 栗色の駒 苦しげに
暮れ峠越え 黒き影ゆく

眩みつつ、繰りかえす声 狂おしく
暮れ早し日を 黒山わけて

千切れ舞う 風の流れの 無常かな
襟に沁み入る 寒さに震え