第85回体感バトル1000字小説部門

※プロントさんの作品の文字化けを修正しました。(2009.9.9)

エントリ作品作者文字数
01素晴らしき哉、人生山崎豊樹※データ無
02殺し屋の笑顔土目1000
03第一回 地デジ化推進委員会にてプロント817
04久遠701
 
 
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エントリ01  素晴らしき哉、人生     山崎豊樹


 僕は野球が大好きだ。父が草野球をやっていたこともあって、物心ついた頃から白球が玩具代わりだった。
 小学生になってからは朝から晩まで野球漬けの毎日。父のミット目掛けて思いきり投げ込み、近所のバッティングセンターでは何百球もフルスイングする日々が続いた。
 強豪校からの誘いもあったが、高校は家からいちばん近い学校に入学した。一回戦敗退の常連であった弱小野球部だったけれど、エースで四番に抜擢された三年生のとき強豪校を相手に次々と番狂わせを演じていく。ついには甲子園出場をも決めるのだ。甲子園ではベスト4で敗退したけれど、プロ入りの誘いは引く手数多であった。
 進学希望だった僕の気持ちを揺るがしたのは家庭の事情であった。世間は百年に一度の大不況の真っ只中で、父の会社も例外ではなく経営は傾き始めていた。プロ入りにあたっては、契約金と年俸を重視してオーナーがIT企業の社長を兼務するチームに決める。
 ところが投手で入団したけれども、なかなか結果はついてこない。二軍と一軍を行ったり来たりする日々が続き、三年目には野手転向を余儀なくされた。しかしここから才能が開花する。開幕からの連続試合安打の記録更新を手始めに、シーズン最多安打の記録まで塗り替えてしまったのだ。打率と最多安打、最高出塁率のタイトルも獲得。ただチームはクライマックスシリーズで敗退。次なる目標はリーグ優勝と日本一だ。
 そんなとき親会社の経営危機が囁かれ始め、やむを得ない事情ではあるけれど、オーナーは僕に人気チームへの金銭トレードを通達する。年俸は倍になったが、この悔しい思いはバットにぶつけるしかなかった。チームは史上最速でリーグ優勝を決め、僕はついにはWBCの日本代表にも選出された。
 しかし酷使してきた体は突如悲鳴をあげる。体調不良を訴え、担ぎ込まれた病院で待っていたのは非情な通告であった。「選手生命と、貴方の生命どちらをとりますか?」そう言われれば、どうしようもなかった。オフに挙式を控えていた妻にはもうひとつの命が宿っていたのだ……。
“この度はバーチャルライフシミュレーション『素晴らしき哉、人生(プロ野球選手編)』を御利用いただきありがとうございます。申し訳ございませんが、この続きをシミュレートするにあたっては追加料金が発生致しますので、下記をクリックしたあとにお楽しみいただきますようお願い申しあげます”
〔YES]
〔NO]







エントリ02  殺し屋の笑顔     土目



ドサリ
三度ほど乾いた音が小気味よく鳴り響き
一つの命が儚く消えた

「フーッ」

吐いたため息は一仕事終えた安堵からか不安定になった情緒からか
だが肩の力は抜けても心の箍までは緩めない
今この場で自分の命が狙われることなど当たり前に起こりうるからだ

いつまでもこうしているわけにも行かない
というよりあまり長居したくない
誰だってそうだろう、死体と一緒に血なまぐさい部屋に二人きり
いやこの場合は一人きりか?
わずらわしくも思うがこの感情が未だ自分が正常な人間であることを教えてくれる
けれど昔ほど手惑わなくなっているのもまた事実だった

また一歩人でなくなった気がする

殺しの技術を叩き込まれたときにソレと同じぐらい叩き込まれたのが
人を殺し続けると人で居られなくなるという事だった
その上でどうしろとは教えて貰えなかった
自分で考えろという事だったのだろうか…

手際よく事後処理を済ませ追憶から復帰する
部屋のものには一切手を触れていない
ドアからして相手に開けてもらって
三発弾を吐き出しただけだ
シゴトはシンプルなのが一番だ
このまま帰るだけでいくらかの『金』と周りの言う『名声』とやらが上がる
本当は一服でもしていきたい気持ちもあるのだが
手際よく仕事をこなした後は余計なことはしない、ソレが基本にして鉄則だった


二駅ほど歩いて小腹がすいて居ることに気付く
近場に見つけたファーストフード店でフライドチキンを購入
慣れていないころは仕事の後に肉など食べれたものではなかったのだが
ここ最近では全くそんなことはない
仕事をするたび慣れていく自分を誇るように嫌悪していることに気付き苦笑いをする

いったいどうしたいんだ俺は?

公園のベンチに座り購入した昼食を食べることにしたがものの5分で食べ尽してしまう
包み紙をゴミ箱に投げ込む、見事命中
外したら拾いに立つついでにそのまま帰ろうかとも思っていたのだが
何となくそのまま立つことをためらい拳銃を取り出し弄ぶ
誰も居ない公園で誰に咎められる事もなく不躾極まりない事をする
平和な用で危険な世の中だな
と危険の代名詞が思い浮かべる

この世界ってモノもとことん狂っていやがる

「あ」
パンッ

手からすべり落とした拳銃から弾が飛び出し自分の脚を撃ち抜く
弾は全て抜いたつもりだったが残っていたらしい
焼け付くような鈍痛と硝煙の匂いが吹っ飛びかけた意識を確かなものにする

間抜けなことをした、とも思ったが
なによりこれでしばらく仕事が休めると思った







エントリ03  第一回 地デジ化推進委員会にて     プロント


「イメージキャラクタは誰が良いでしょうな」
「知名度と好感度の高い人間が良いですな」
「女子アナなんかどうでしょう?」
「元々、現行の受像器をガラクタに変えるネガティブなものですぞ。それを許容出来るようにするには、ある程度尊敬を受けるような人間の方が良い」
「女子アナは、アシスタントのイメージが強いですからなぁ」
「だとして男性の、説得力のある感じの……N井喜一なんかはどうでしょう?」
「ふむその路線は悪くないですな。もっとも、彼はMキプルーンのCMに使われているせいで、イメージ最悪ですが」
「S田紳助はどうでしょう。主婦層の好感度高いですよ」
「確かに主婦層は高いですが、男性ウケはどうでしょう。いや、ウケるかどうかというより、悪い印象を持つ人が多いのも困る」
「いっそ、人間を離れて鹿か何かにしたらどうでしょう? 地デ鹿とか何とか」
「予算はたっぷりあるのだから、使わなければ損だろう」
「鹿は宮島や奈良の人にとっては、決して良いイメージの存在ではないでしょう」
「その鹿の話ですが」
「なんだね、君は賛成かい?」
「いえ。でも、名前の響きで語呂合わせするのはどうでしょう」
「響き?」
「地デジなんて名前の人いたか?」
「T井武雄を地デジ井武雄とか言わせるのはどうだろう」
「あまり語呂が良くないですな」
「地デジ、地デジ地デジ……そうだ!」
「ん」
「どうした、何か出たのか?」
「大滝地デジというのはどうでしょう!」
「おお、それはピッタリだ」
「しかも好感度は高すぎず低すぎず」
「良いですな」
「……ちょっと待って下さい」
「なんだね、決まりかけている時に」
「一つだけ、確認したいんですが」
「ん?」
「地デジへの切り替えは二〇一一年でしたね」
「うむ」
「……後、何年もかかりますけど、その……ええと、あの、何と言いましょうか、あまり先の計画を立ててしまうと」
「SMAPの誰かとかどうだろう」
「そ、そうだな、うむ」
「Kなぎメンバーは、クリーンなイメージで良いんじゃないか――」







エントリ04       久遠


 蝕まれていくのは、恐怖と快楽。


 コンビニでタバコを買った。今時はタスポだの何だので自販機で簡単に買えなくなったし、何より行きつけのコンビニでバイトしている女の子は可愛いし、俺の顔を見るとすぐに愛用のタバコを用意してくれるから良い。
 部屋に戻ると、すぐに火をつけた。ゆらゆらと浮上する白い煙。
「タバコを吸う人なんて嫌い。あたしの前では絶対に吸わないでよねっ!」
 と、言ったのは、ミキちゃんだっけ、ミカちゃんだっけ? 結局吸ったから別れたんだっけ? もっと別な理由だった気もしなくはないけど、思い出せない。そもそも、覚えていないのかもしれないな。脳味噌にまで、煙が入り込んでいる気がする。
「あなたが死ぬとしたらきっと肺ガンよ」
 そう言って笑ったのは、ユカリちゃんだっけ、アリサちゃんだっけ?
 なんだかもう、女の子の顔は皆一緒に見えて、よく覚えていない。そもそも覚える気もなかったのかもしれない。笑ったその子の顔も、タバコの煙越しに見ているみたいに、ぼやけている。
 女の子との縁は簡単に切れるくせに、俺はタバコとだけは一生縁を切れない、と、確信している。そしてその確信は時々恐怖だ。人以外のものに執着するなんて酔狂だ。いや、人に執着するよりはまだましなのかな。……もう良いや、どっちでも。
「あなたは肺ガンで死んだら、きっと幸せでしょうね」
 そう言ったのは、誰だっけ?
「どうして?」
「だって、好きなものに体を蝕まれて死ぬんだから」
 ああ。そういう考え方もあるんだね。
「じゃあ、俺が君を殺そうか?」
「――そうね」
 彼女はふわりと柔らかく微笑んだ。俺はそのまま彼女に口づけて……。


 彼女の死体、どうしたんだっけ?


※作者付記:お久しぶりです…覚えている人はいらっしゃるのでしょうか。
久々に話が浮かんだので投稿しました。短いですね。
読んでくれてアリガトウ。幸いあれ。