第99回体感バトル1000字小説部門

エントリ作品作者文字数
01普通の人かぼちゃ男爵972
02怖いものうまいか棒772
03自殺未遂ナキ1097
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  普通の人     かぼちゃ男爵


 私は、両親や兄弟の影響で、人と同じ事をするのが嫌いな性質なのである。
 小さい頃から同い年の子がやらないようなことばかりしてきた。
 3歳の時、カエルに恋をして、5歳の時に鯉とキスをした。
 私の家族は近所から、変わった家族と噂されるくらい変わった家族だそうである。
 父はいつも水泳用のゴーグルをつけて外に出かける。
 一度、どうしてゴーグルをつけて外に出かけるの?と聞いたら、父は
 「外は、町中醤油臭くて、ゴーグルをつけないと目に染みて歩けないんだ」と言った。
 母はと言うと、いつも外に出かける時、フライパンを持って出かける。
 一度、どうしてフライパンを持って外にでかけるの?と聞いたら、母は
 「フライパンを持って外に出かけると、今晩の晩ご飯を何にするか思いつくのよ」と言った。
 一番上の今年30歳の姉は、いつも外に出かける時、鼻の穴にピーナッツを詰め込んで外に出かける。
 一度、どうして鼻の穴にピーナッツを詰め込んで外に出かけるの?と聞いたら、姉は
 「鼻の穴にピーナッツを詰め込んで外を歩くと、自分が女であることを実感するの」と言った。
 一番上の今年28歳の兄は、いつも外に出かける時、白のブリーフパンツを頭から被って外に出かける。
 一度、どうしてブリーフパンツを頭に被って外に出かけるの?と聞いたら、兄は
 「だって、ヒーローになったみたいじゃん」と言った。
 今年、25歳の誕生日を迎えた私はと言うと、高校を卒業してから外に出かける時はいつも顔中に洗濯バサミを挟んで出かけるようになった。
 どうしてかと言うと、答えは単純にかっこいいからである。
 半年前、最近近所に越して来た高橋家が、私も含め私の家族を裁判に訴えたのである。
 なぜかと言うと、気味が悪くて近所にいてもらいたくないそうである。
 先日、その裁判が開かれ、そこで裁判長にごく普通の生活をしなさいみたいな判決が言い渡され、私達家族は周りと同じ生活をするようになった。
 おかげで、父は外に出かけると目から大量の涙を流すようになり、母は毎日の献立が思いつかないようになり、姉は自分が女なのか男なのか分からなくなり、兄は自分が悪人になったように思い、私はと言うと、自分が不細工に思えて仕方がないのである。
 人と同じ生き方や、普通の生活をするのは、私達家族にとってなんと生き辛いことなのだろうか。
 
 
 
 


※作者付記:真夜中の眠い時間に書きました。あ〜早く寝よっと。






エントリ02  怖いもの     うまいか棒


「お前ぇらの怖いものって、一体なんだ?」
「オレは蜘蛛だな。あのわさわさ足が生えてるところなんざぁゾッとする」
「へぇ?」
「蜘蛛なんて可愛いもんじゃねえか。百足の足の多さと来たら! ううっ、考えただけでゾッとする!」
「ふぅん」
「分かってねえ。足なんて手前ぇの臍下にも二本でっかいのが生えてるじゃねえか。怖いのはそれがない蛇さ。足もねえのに動くし、にょろにょろ気持ち悪い動きをするし、チロチロと出す舌も気味が悪いし、毒を持っていやがる上に、頭さえ通ればどんな小さい穴からも入りこんで来る。この前なんぞ、尻穴にもぐり込まれる夢を見るちまった! ひぃぃ、今思い出しただけでも寒イボが出る!」
「なるほど?」
「へっ、そんなもんちょっと捻れば殺せちまうじゃねえか。雷なんてのは、当たれば死んぢまうんだぜ、ゴロゴロッと来ただけで身体がすくむ」
「そうかねぇ」
「雷だぁ? あんな物はそうそう落ちて来るもんでもねえ。言ってみりゃあ、犬が遠吠えしてるぐらいのもんだ。恐ろしいと言えば人間さ。懐を狙って刃物を突き付けられた時のゾォッとした事と言ったらなかったぜ。言葉が通じるクセに、相手はおれの懐の中の物を手に入れる為なら、遠慮なく刺そうってんだぜ?」
「ひひひ、そりゃあ怖い怖い」
「熊公、お前はどうなんだ? さっきからニヤニヤ笑って混ぜっ返してやがって」
「……あまり、言いたくはなかったが、おれが怖いのは、まんじゅ――」
「あたいはねぇー、古屋の漏りが怖いよ」
「ははは、そりゃ違えねえな」
「なかなか洒落た事を言うじゃねえか、与太」
「あれは怖いな。古屋の漏りが起きた日には、長屋の屋根も床もみんな湿って腐っちまう。それで店賃を下げりゃいいけど、強突大家、びた一文下げやしねえ」
「怖いなぁ、古屋の漏り」
「ああ、まったく怖いな、古屋の漏り!」
「――ちっ、この場はそっちだったか!」







エントリ03  自殺未遂     ナキ


俺は将来の学費の為に今までせっせと親が貯めてきた金を全部銀行からおろして、あるビルの屋上に立っていた。ざっと五百万以上はあるだろうその金を両手に鷲掴みにしながら俺はフェンスから下を見下ろした。

上から見たところで変わらない。この国は、地球は汚い。排気ガスで空気は汚染されているし、金と地位にしか興味ない人間の心は冷え切っていて醜い。
人間が便利になればなるほど、此処は壊れるのだ。自らの首を絞めていることに何故気づかない?馬鹿共め。

俺はこんな時代に生まれたことを恨み、嘆いた。俺は両手にしていた金をおもむろに見つめた後、地上に向かってばら撒いた。風に乗ってひらひらと金が舞い落ちる。
その金に気づき、ざわつき、金を取り合う醜悪なゴミ共を俺は見下していた。
汚ねぇ。汚すぎる。こんな奴等が存在する意味はあるのか?金なんかただの紙切れだろ?どうせお前等の所為でこの地球はいずれ滅びるんだ。その時金が何になる?金で世界が救えるか?

否。無理だ。俺はお前等ほど馬鹿じゃない。下等なお前等と一緒に死ぬくらいなら今自分の意志で死んでやる。お前等はせいぜい見苦しく生きてろよ。
フェンスに足をかけたとき、背後から突然男の声がした。俺はゆっくりと後ろを振り向いた。

「おい、早まるなって」
言葉とは裏腹に、全く止める気のなさそうな声でそいつは言った。

「お前、誰だよ」
「悪魔って、知ってっか?」
にやりと口の端をあげて笑うそいつを無視して、俺は再びフェンスに足をかけた。

「待てって!」
「黙れ。お前に止められる筋合いはない」
「いやいや、お前が死ぬと困るんだって!」
「何故だ?」
「地獄は今、お前みたいな馬鹿で溢れかえってんだ。自殺者は全員、地獄行きだからな」
「俺が、馬鹿?」
俺の心を見透かしたようにそいつは笑って言った。
「馬鹿だろ?」
だってそうだろ?と。

「お前はなんだかんだ屁理屈こねて逃げてるだけじゃねーか」
「逃げてない。この馬鹿共に付き合っていられないだけだ」
「それ、逃げてるって言うんだぜ?」
俺はあからさまな不快の色を浮かべた。
「その馬鹿共のお陰でお前は死ぬのか。考えが甘いよなぁ?言っとくけどお前が死んだからってこの世界は変わったりなんかしねぇぞ」
悪魔は厭味な笑みをその口元に携えている。
俺はフェンスから足を外した。
「じゃあ俺が変えてやるよ、世界を。よーく見とけ」

まんまと奴の思惑にはまった俺は、悪魔の目をきつく睨んでそう言い放つと悪魔を突き飛ばして背を向けた。
あいつ、最後まであの笑いを携えたままだった。くそ野郎。

「あーっ!どうせ生きるならあの金、流石にちょっともったいなかったな」

遠くの方で悪魔の笑い声が聞こえた気がした。