第111回体感バトル1000字小説部門

エントリ作品作者文字数
01煙突からの手紙でんでろ31105
02ドラッグファイト土目1008
03シャツゆうじ725
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  煙突からの手紙     でんでろ3


「2→5,3→4,3@18」

 今日は10月30日(日)。遅く起きて郵便受けから新聞を取り出すとき、この手紙が落ちてきた。私宛ての手紙。差出人「えんとつより」。誰だ? 見覚えのない字。というより、わざと崩してある。薄気味悪くもあるが、家族の誰かの出題かも知れない。ならば、犯人探しの前に謎を解いておかないと恰好がつかない。でも、私が手紙を受け取ったことを妻に知らせておくのは良いだろう。どんな顔で白を切るか、少し楽しみだ。
 しかし、その期待は裏切られた。家に入ると、「お母さんがいない」と2人の幼い娘がベソをかいていた。確かに、家の中に妻はいなかった。ご丁寧にダイニングにブランチが用意してあった。しかも、置手紙すらない。……手紙? ひょっとして、あの煙突からの手紙がそうなのか? だとしても、訳が分からない。「えんとつより」が、暗号を解くカギなのか?
 ケータイに電話しようかと思ってやめる。それでは、ギブアップになってしまう。
 頭を悩ませていると小さなお化けが2人、「とりっく おあ とりーと」と言ってきた。
「やぁ、かわいいお化けだね」
「ねぇ、お母さんいなくて、今夜のハロウィーン・パーティーは、どうするの?」
「そうだねぇ。こんなにかわいいお化けさんを放って、お母さんは何をしているんだろうねぇ」
ん? 今、何か引っかかった。なんだろう? お化け?
「お化け煙突だ!」
私がいきなり大声を出してしまったので、2人の娘は、かなりビックリした様だ。
 子どもの頃、私が住んでいた町には、お化け煙突と呼ばれる5本の煙突群があった。見る場所によって見える煙突の本数が変わるので「お化け煙突」と呼ばれていた。
 私は、すぐにパソコンに向かいグーグルアースを呼び出した。

2本に見えた駄菓子屋。
3本に見えた五十鈴橋。
4本に見えた秘密基地。
5本に見えた高台。

すべて幼馴染だった妻との思い出の場所だ。今はもう、煙突も駄菓子屋もない。しかし、道や川が変わってないので、それぞれ位置は判った。駄菓子屋と高台を結んだ線と五十鈴橋と秘密基地だった場所を結ぶ線、その交点にあたる場所を、今度はストリートビューで見る。一軒の店があった。その店を調べると、そこはとても小さな店で、だけど、逆に小さなパーティーをするには、もってこいだという。
 じゃあ、「3@18」は? そうか! おそらく3はSUN。サンデー、つまり、日曜日である今日だ。そして、at18は18時だ。
 時計を見ると、もう16時だった。少し早いが良いだろう。なんだかじっとしていられない。娘2人に「お母さんが待っているところへ行くよ」と言って支度をさせる。そうだな、お化けの格好で行こうか。







エントリ02  ドラッグファイト     土目


格闘健康法が立証されてはや幾年。
近年では医師と患者は合意の上で健康促進のための格闘、
<ドラッグファイト>を行うことが日常化し始めていた。
いち早く番組体勢を整えた某放送局は今宵も某大学病院中央に敷設されたリングの状況を放映していた。

「さぁさぁ今宵も始まりますドラッグファイト、本日のクランケは不眠症の方と言うことで睡眠時間の確保のた

めゴールデンタイムで行わせていただきます。実況の久保田です」

「不眠症は精神面から来ることも多いですからね、何よりも眠ろうと言う意志が大切です。解説の滝川です」

わあああ

「おおっと傍聴席から歓声! どうやらクランケの入場のようです」

『クランケサイド! 病名不眠症! 平均睡眠時間二時間! 眠れぬ獅子! 横山雄一!』

わあああ

「本日のジャッジは前口上と立ち回りに定評の有る、中里警備員が勤めるようです。」
「ゴールデンですからね、まだ勤務時間じゃないんでしょう。」
「横山はまるで幽鬼のような足取り、あれでホントに戦えるのでしょうか?」

わぁああ

「今度は逆サイドからの歓声どうやらドクターが到着したようです。」

『ドクターサイド! 専門心療内科! こなした診察1万以上! 精密検査マシーン! 斉藤秀和!』

わああああああ

「これはドクターサイドはベテランの斉藤が出場です。横山には少し厳しい戦いになるでしょうか? 滝川さん


「専門が心療内科ですからね、これは面白い勝負になると思いますよ」
「両者ゴングがなる前にもかかわらずにらみ合い威嚇しあっています」
「もう医者と患者の絵には見えないですねコレ」
「中里警備員が間に入って押さえていますが今にも弾け出しそうです」
「警備員を挟んでちゃ手が出ないですよね」

「ウォオオオオオオオ!」

「あぁっと横山吼えたー! まるで自分を鼓舞するように大きく吼えた!」
「ただでさえ意識がはっきりしてませんからね、目を覚まそうとしているんでしょう」
「対する斉藤は眼鏡を拭きなおして余裕の表情です」
「ベテランの威厳が感じられますね」
「今気づきましたが両者ともナースがセコンドに付くようです」
「医者にとっても患者にとってもナースはパートナーですからね」
「あ、今審査員の面々とゴングの準備が整ったようです! 間もなく始まるのでしょう」

『ドラァァァァァァッグ・ファイッ!』
カーンッ!

「今里中の合図により戦いの火蓋が切って落とされました!」

『番組の途中ですが臨時ニュースです。』







エントリ03  シャツ     ゆうじ


「おい、あの外国人」
「あ? どいつだ?」
「こっち来る、ほら、金髪の」
「ああ、あれか。背ぇ高くて結構イケメン……って、何だあのTシャツ、『鼻毛』?」
「ぷぷっ、だろ? 漢字プリントはともかく、『鼻毛』はねぇよなー」
「あはは、意味が分かんないからなぁ。知ってたらとても表歩けないな」
「あー、君たち」
「うわっ、こっち来た!」
「日本語喋ってるー!?」
「君たち、笑っていたようだけど」
「あ、いや、それは、ほら、あの」
「一日出来るだけ笑おうっていう健康法で」
「……このシャツの文字がそんなにおかしいかい?」
「ええと……その」
「僕はそうは思わないよ。神が作りたもうた人体のどの部分にも無駄や笑うべきものなんてない。実際、他の様々な器官同様に、鼻毛には外気に含まれるゴミや埃を取り除き、呼吸器官を守るという重要な役割があるしね。ちょっと地味だけど、大変大事なものなんだ。例えば口呼吸をし続けていると、この機能が使われずにアレルゲンを素通りさせてしまい、アレルギーの発生率が上がるとの報告もされているぐらいなんだ」
「あの……なんか、すみません」
「鼻毛、凄いです。感心しました」
「改心したようだね。じゃあ、仲直りだ」
「はい」
「えへへ」
「うん、これで僕らは友達だ。何か記念が欲しいな、そうだ、スポーツ競技に倣って、君とシャツを取り替えようじゃないか! 二枚重ね着しているから丁度良い!」
「いいんですか!」
「やった!」

『ただいまー』
『あら、ジョニー、お帰り……あら、ママがあげたカリグラフィーシャツ、どうしたの?』
『うん、新しい友達が出来てね、トレードしたのさ!』
『そう、それは良い事をしたわね。じゃあ、また新しいの買って来るわね』
『……い、いや、もう充分だよ、あは、ははは』