第13回タイマンバトル、開票開始――







感想一覧

マニエリストQ


階段の埃、女のざらりとした感触、飛び散る赤色のダンス、もう、すべてが圧巻でした。蛮人さんのバウムクーヘンの甘さにもヨロっと行きそうになったのですが、今回はもうとにかくQワールドにひきこまれました。

マニエリストQ


 一読、どっちとも言えず。こういうときに優劣を決めねばならないというのは、ナンセンスとは言わないまでも、もにょすごく切ねえのである。
 でも、バトルはバトルである。五鈷杵を振りかざさねばならず。


 ホテルから、明日へ 蛮人S

 革命軍と王室。手塚治虫も、魔夜峰央も(みんな漫画家だけれども)意外と大御所はこのシチュエーションを取り上げるようで。ただ、それを追われる側と追う側、ということで考えたときに、作家としての自分の立場が如実に出てしまうのである。本作はリウル王子、第一子、無論、王位継承者である。
 さて、ここで王室と反乱軍の関係がわからなくなってくる。暴政に耐え兼ねての暴動なのか、それとも他の国に扇動されての暴動なのか。でも、革命軍と一般人民を分けているのだ。単に血祭りに挙げるために王子を探しているわけでもなさそうだ。とすると、やはり他国からの侵略だろう、と考える。はて、では時代は何時だろう。ホテルがあるということは、重火器もそれなりと考えていいだろう。窓辺で燃える王宮を見て、押し寄せる革命軍、ある種軽率とも言えるこの動きはなんだ?
 一つのシチュエーションの為に登場人物がみんな同じ方向を見てしまっている、ということだろうか。バームクーヘンのディテールは美味しかったが、作品としての膨らみ具合は、今一つ。


 サマータイム、ふたたびの恋 マニエリストQ

 まさにゴシック、である。ただ、ゴシックとして終わってしまうとただの循環として閉じてしまうが、血の吹いて、墜落した飛行機の脇で軽快なジャズの音楽、別に救われたわけではないが、ただ、コントラストと明度が、握り締めていた、爪の食いこんだ手の平がゆっくりと開かれるような朝を迎えるのである。サマータイム、再びの恋。なんじゃいな、近しいもの、そうか、禿山の一夜か、ワルプルギスの夜か。小粒ながら濃厚な時間を見せきってふう、とため息をつき。
 ただ、某W賞の応募作品もそうだったけれども、この作家はある種、Artの高みから降りきれていない。蓮如が仏教をわっかりやすく村人に崩して伝えたように、一遍が踊念仏で村人に浄土を「体感」させたように、手塚治虫がエロやってもPTAが怒らなかったように(しつこいですな)、この美酒をもっと蒸留させるといいのだが。
 と、冒頭のデザイン云々の設定は今一つ要らない気がします。ここにおける「俗」はあとのメイン部分を殺しはすれど、いかにも生かしはしないかと考えるわけで。

 判定

 ディテールの差。作品コアは小粒なれど、やはり厚みのあるほうが美味しい。完成度の高いほうがいい。
 というわけで、今回はQさんの勝利とします。(MAO)


マニエリストQ


蛮人Sさんの「ホテルから、明日へ」を初めに読んだ時、隅からすみまで計算された、非の打ち所が無い作品だと思いましたが、どうも綺麗過ぎる点が気になりました。マニエリストQさんの作品を次に読んだときにその理由がわかりました。
Qさんのは大人の読み物で、Sさんのは大人が子供に読み聞かせる読み物だという点でした。
 ちょっと引っ掛かったのは、中原と女の過去の関係が、後悔の念があるというだけで、ほとんど触れられていないため、昔はただの女たらしという感じがしたというところでしょうか。もう少し説明が欲しかったと思いました。


マニエリストQ


蛮人さんもQさんも甲乙決めがたし。
蛮人さんの作品は風景と情景が一定しすぎていて展開していく話に同じ色しか感じ取れなかった。これでは常設の3000字バトルでも票を集めるのは難しいだろう。
Qさんの作品は多少懲りすぎている設定が裏目に出ているんじゃないだろうか。しかし、雰囲気と展開、難解さからすると読後感は圧倒的。
文章うんぬんはどちらも安心して読めるのでストーリーの内容とその濃さ、それと雰囲気が勝負どころで、多少の好みも含まれてくる。そう考えるとQさんの作品の方が一枚上手だと感じました。
ダンス、ジャズ、飛行機、南の島。そして断崖と海。ホラー系を除けば男女の悲しい恋愛物語でもう少し、しんみりと出来たかもしれません。こう云うのは好きなもので、こちらに決めました。


マニエリストQ


両作品、楽しく読ませていただきました。
ストーリーがQさんの作品の方が好みだったので、一票。
ただ、どちらもタイトルがイマイチのような気がします。
もうちょっと練っても良かったのでは?
蛮人さんの作品は、もう少し話にメリハリがあった方が良かったと
思います。ちょっと平坦すぎました。
Qさんの方は、女性のセリフまわしが多少不自然のような気もしましたが
描写の上手さと、オチが良かったです。


マニエリストQ


ストーリーで読ませようとした蛮人さんと、イメージで勝負したQさんのバトル!! という感じでした。
Qさんを選んだのは、高級ホテルがボロボロになっていたから(^^;
高級なものがボロボロになっているのが、自分の中で好きなのです。
丈夫なものとか人工的なものとかが風化してたり植物に飲みこまれたりしているのが……。
廃墟最高!! 分解万歳!! 微生物万歳!!(←農学部)
蛮人さんの作品は読みやすかったです。
セリフで話と世界が作られていたので、劇かマンガっぽい感じがしました。(Qさんのはおしゃれなプロモっぽい感じでした)
あと、どちらも描写が視覚中心?? なのでしょうか。
触覚中心の自分には、少し一体化ができなかったです。(キャラの年齢差もあるかも)
それでも、王子様よりも踊るオジサンにより同化できたのは、
王子様のやんごとなき体が自分の庶民ボディーと合わなかったから??

…なんかまとまらない感想票ですが、Qさんに一票!!


マニエリストQ


うーん、やっぱりQさんのだなあ。
蛮人さんのはどうも人間っぽくないんですよね、良くも悪くも。
血の通ってない感じがして。
Qさんのも3000字に無理やり詰め込んだ、って感じがして、
ちょっと展開を急いでいる感じもした。
タイトルも、なんか読んでいて気持ちよくない感じ。

って文句ばっかり(笑)。いつものQさんのクオリティではないんだけど、
やっぱ好きだから入れちゃいます。



マニエリストQ


久しぶりな正統派対決になったと思います。
どちらの作品も楽しませていただきました。
今回は、Qさんのほうが、音楽まで聞こえてきたので、
一票を投じることにします。

蛮人さん、ごめんなさい。


マニエリストQ


怖かったけど、面白かったです。

蛮人S


このテーマでこんなお話が読めると想像していなかったので、
とても驚きました。読み進むにつれ、ほろほろと涙が出てしまいました。
「テルル・ホテルのケーキが毎日でも食べられれば良いなあと、いつもそう思ってるんだよ」と
「風は吹けばよい」というリウルの言葉が、すごく好き。
この話についてあまりたくさんのことを語りたくない気がする。
とても好きだということをお伝えしたい限りです。

マニエリストQ氏の「サマータイム、ふたたびの恋」では、
ダンスが佳境に入り、加速度が増すにつれ、女が次第に分解されていく
イメージがとてもよかったです。読んでいて、血の味がしました。
髪が印象に残るような描き方をされているように思いつつ、
読後に一番自分の中に残ったのは、白壁やそこらに付着した女の肉片でした。

本当に力がある方同士のバトル、とても堪能させて頂きました。
音がない、激しく斬り合わないのに、お互いの身が深く切れて、青い血
(岡本喜八のブルークリスマスではなく…笑)が流れるような印象の戦い。
とても面白かったです。読み応えあったです、本当に。長い感想でスミマセン。
(初めて記名投票する佐藤yuupopicより☆)

蛮人S


確かに、「サマータイム……」に比べると荒削りな印象。
もうちょっと読ませ方があったんじゃないのなんて歯がゆかったりする。
でも、このバトルのお題「高級ホテル」をより生かしてるのは
こちらの作品だと思う。

「高級ホテルを高級たらしめているのは伝統と誇りである」
という前提がまずあり、その思想に、地位を追われた王子の境遇を
ダブらせているのは、さすがの手腕である。

また、燃える王宮の描写も生々しい。
この4月のバグダッドの中継画像をみたものなら、
容易に情景を思い浮かべることができるだろう。

――とまあ堅苦しく書いてしまいましたが、要は、
ストーリーとコンセプトが、こちらの方がより好みだったということなのです。
読んだ後に、テルル・ホテルに泊まってみたいと真剣に思いました。


マニエリストQ


シーンがとても圧倒的で惹き込むようで、とても気に入りました、時間がないので一言感想で失礼します。

蛮人S


オフ会でQさんには入れないと言った以上、蛮人さんに入れるしかないんですが、一応、改めて読み返してみました。
Qさんのはヴォリューム感がありますが、その分、はみ出してるなという印象。蛮人さんは、ややこじんまりとまとまっているという印象。
内容はQさんのほうが奇抜さを感じますが、蛮人さんのほうが私の好み。
読みやすさにおいても、蛮人さんのほうが好み。Qさんのは、読みづらい箇所がよりによって頭の一文にきているのは、ちょっと気になる点ではあります。Qさんの作品は、「忌わしい後悔」という言葉で片付けてしまっている部分があるようにも思います。
まぁ、どっちかを買えと言われた場合に選ぶなら蛮人さんの作品だな、ということで、一票。


蛮人S


 Qさんの話は、いっつも読まないタイプのものを持って来られるので、投票には結構困る。
 ゴシックロマンってぇのが何なのかもさっぱりだが、今際の際の走馬燈のお話と理解して良いのかなぁ。ファンタジーな感じ。そう、ファンタジーだな。考えようによっちゃ、妖怪物っぽいし。
 女に裏付けがちょいとあった方が良かった気が。筋は特に好みではない。

 で、蛮人Sさんのは、普通に良い話系。
 ちゃんとまとまってはいる。ただ、正直もっとはっちゃけた――いや端的にいってアホな物を期待していたんだけど。3000字を主戦場としない蛮さんのせいか、何だか「らしくない」。そもそもそのペンネームは小綺麗にまとまった話を志向する作家のそれではないでしょうが。
 3000字だと、かなりのアホアホ設定が出来ます。1000字と比べて五アホアホぐらいアホ率の増加が可能なのです。
 やりませんか。
 つーか、次回から一般3000字にも参加なさい。ええ、ええ。
 そーゆー諸々を込めた一票であります。


ひきわけ


今回のバトルは蛮人さんの作品に少し期待していたのだが、
いつもの蛮人ワールドが出ていない。
1000字くらいの作品にした方が良かったのかもしれない。
それに比べQさんの作品が良かったかというと、
いつものQさんの作風は感じるのだが、いつもの終わり方という
インパクトに欠けた作品だった。
という事で、今回は両者引き分け。


蛮人S


どちらも良作だと思いますが、「ホテルから明日へ」に一票。
消えゆくものへの哀愁とかすかな希望が伝わってきました。


蛮人S


蛮ちゃんは、やはり「上手い」と感じた。この人は、物語を作り上げることをきっちり認識しており、わたしみたいに好きな世界に寄り掛かった作り方をしていない。文章も宝石を鏤めたかのようにキラキラして美しい(図体の大きさに似合っていない)。苦言を一つ呈するとすれば、「いい人」でありすぎて「いい物語」で終始してしまうことだ。ここにほんの少しでも毒が盛られれば、わたしとしては文句がない。が、蛮人Sファンがいることは確かなので、この線は徹していいことではある。
で、せっかくだから、バトル裏事情も記しておこう。
このバトルは、ミニオフにて立会人であるところのカピバラさんによって仕掛けられたものだ。テーマはある方法によって「高級ホテル」となったが、当初はホラー仕立てでやることになっていた。これは蛮ちゃんの提案で、わたしはそれを受けて立つ立場となったわけだ。はっきり申して、これはわたしにとって不利である。ホラーなんて嫌いだし読んだことも書いたこともない。蛮ちゃんはそこを突いてきたのだ。小癪な奴だ。すでに手段を選ばないタイマンバトルは幕が切って落とされていたのである。嘗められたわたしは必死にホラーを研究した。20册は読んだ。(どれも嘘です)。ところが、いざとなると、ホラーは止め、なんでもいいや、と蛮ちゃんは見事、ひるがえしにかかったのであります。で、わたしのほうというと、パソコンの事故で〆切りが遅れてしまうという不様になってしまった。まあこれで五分やと独断、タイマンバトル担当の三月くんが多忙ということで、わたし自らアップ。バトルは開始された、といことなのであります。そこそこドラマがある。楽しいでしょ。どうでもいい? まあそうなんですけど。ありがとうでした。

マニエリストQ


 正統である。結局もっとも世の中で怖いものは、血でも怪物でもなく、人間の纏い付く情念であることをこの人は身をもって?知っている。ホラーは、ロマンだ。ホラーはジャンルではない、それはSFと同様一つの手段であって、その本質はやはり人間の物語なのである。その辺において、Q氏はそこらの理屈ぽい書生など寄せ付けはしないのである。
 難点をあげるとすれば、とっつき難く、導入部の時に不安定な文章だろうか。しかしこういう面はあまりマイナスにならない(特に超短編では)。ちょっと立ち止まればすむことだ。大切なのは主題、そして展開とイマジネーションであり(当たり前だ)、その点において申し分ない。
 あ、でも、タイトルはダサいよ。やっぱ。

 で、せっかくだから、バトル裏事情も記しておこう。
 このバトルは、ミニオフにて立会人であるところのカピバラさんによって仕掛けられたものだ。テーマはある方法によって「高級ホテル」となったが、当初は1000字で、しかもホラー仕立てでやることになっていた。これは私の提案で、当時ホラーに充ち満ちた精神状態にあったせいなのだが、はっきり申して、これはQ主宰にとって極めて不利な条件であると考えていた。そもQ主宰には――無遠慮に他人を恐怖せしめる人間にはありがちだが、恐怖という感情が欠落しているのである。欠落しているものは他にも色々あるが、とにかくそんな奴にホラーが書けるか。という愉快な計算が働いていた。賢明な読者なら矛盾にお気づきと思うが、妖酒ますみに侵されたその時の私の脳では、まともな判断は無理であった。
 数日後、毒の抜けた私はやっと失策を悟った。主宰こそホラーの権化、当人は気づかぬまま他人を恐怖せしめるのが十八番ではないか。しかし世間は私のほうがホラーづいてると思っているだろうし、しかも私の得意、てゆーか唯一の土俵である1000字での勝負を提案だなんて、老い衰えた主宰殿を若い挑戦者が一方的に陥れたと思われるに違いないのである。これでは勝っても負けても救いが無い。なんとかフォローしなくてわ。
 ええ、ええ、私が常に主宰を陥れることばかり考えているのは事実だよ。そのためにスタッフやって…(中略)

――えーと。
 終わってみれば、なんか一人相撲を取っていたかんじ。もう何も言いません。私の負けです。さすがです。宮本武蔵よろしくわざと会場に遅れてきてヤキモキさせた事もなにも申しません。そのあと「蛮ちゃんはゆっくり調整しててよ」とか直メールいただいて、直後にゴングを鳴らしやがったことも何も申しません。オフ会で「蛮ちゃんてば非道いんだよ」とか言いながらビール券や東京ドームチケット(日ハム戦)を配りまくったり首を絞めたり鏡に映ることを避けたり牙が生えてたり時おり覗く尻尾の先端が逆三角形だったりした事も何も申しません。
 とにかく今となっては夢のような、数週間でありました。楽しかったです。はい。




投票結果!!




QBOOKSトップ > バトル会場 > 第13回結果