poem
氷月そら
カーテンコール

さいごの音、
ピアニシモ、まんなかのFの音、を、
そおっと、とめて
指揮者の腕が、ゆっくり下がるのを、みる
空気がふわっと、ゆるむ
そして

「ブラボー!」

客席からあがったその声で我に返る
見えなかった景色がだんだんはっきりしてきて
音の渦の世界から市民ホールへとかえってくる
客席からぱちぱちと、ざーっと、拍手
からだの中にすうっとしみこんで
おなかの下のほうが熱くなる
スポットライトが、まぶしい

そういえば
スポットライトはビールと同じいろをしている
それに
この大きな拍手、は
ぱちぱち、ざーっと、のどをすべりおちて
からだの中にすうっとしみこんで
おなかの下のほうを熱くする、
あの、魅惑の液体、ビール!
と、同じかんじがする

指揮者が出たり入ったりして
そのたびに立ったり座ったりしながら
私はただ、ビールのことを考えていた
きんいろの、あの魅惑の飲み物を思って
のどがくるっと鳴る
まったくこの指揮者はカーテンコールが、ながい
一体あと何回立ったり座ったりすればビールにたどりつける?

どんな高級ビールよりも、世界一おいしい
「打ち上げのビール」
大きな拍手をあびながら
私はただ、打ち上げのビールのことを考えていた

ああ 早く ビールが 飲みたい。



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