第16回タイマンバトル、開票開始――








感想一覧

作品2

えーと、いくつか気になった表現とかはありましたが、単純に、
作品1は、何度か戻って読み直さないと読めなかったのですが、
作品2は、すっと内容が入ってきて、読みやすかったです。

作品1


 匿名タイマンバトル。どれが黒やら彩霞やら、てんですが。カメレオン男とカメレオン女。こうも印象が違うものか(笑)。
 作品1は題材はありきたりながら、非常にスタイリッシュなんである。おしゃれなんである。小説をどう書こうか、みたいなところもちゃんと心得ていて、オチもやんわりと……て、確かに深さという意味では学生小説みたいなのではあるが、でも、この雰囲気は悪くない。だがしかし、仕様の所為でもあるが、無駄にブツブツ入る改行を処理しなかったのは個人的に大減点。スタッフも気がきかねぇよな、というのもあるが、でも、やっぱり自分で作品を見直して欲しかった。この辺の傷は大きい。
 作品2。これはまた、テーマのハッキリした作品である。実に実直に、ある種、朴念仁ともいえるほどに自分の持つテーマにしっかと向き直っている辺りは至極評価したい。内容だけ見ると立派ともいえるが、だがしかし、だがしかしだ。この延々と続く説明と説教口調は非常に痛々しい。確かに「カメレオン」になろうとしてカメレオンになれない「俺」(おれ、俺。表記にブレがあるけどね)を書こうという意図は明確ではあるが、ただ、作家自身がそのシーンを見下ろして書いているのがどうしても鼻につく。つまりは、感情移入などして読んでいる読者さえも見下されたような感覚があって、非常によろしくないのである。まぁ、これは個人的なことかもしれないが、表現者としてもっともやってはならんことだと思うのだ。「何でも書けるにゃー」という作家のおごりさえも見えてくるような気がするので、作品2の作者への提言もこめて、今回は作品1に投票。……反省せいや、こら。(−−(M)

作品1


作品1は非常につくりものじみたお話。
カメレオンというお題に対しては、「周りに適応する」という観点から処理。話の展開はやや強引な印象もあるけれど、構成は面白いです。
三つの証言、各場面ともに行間の描写も面白く、巧く纏まっていると思います。どうして美咲が千尋の髪にこだわっていたのか、最後まで読み取れませんでしたが、それは私の読解不足でしょうか。
登場人物は裏側の存在まで予感させていて、巧いと思います。字数の配分上仕方無いのですが、もう少し美咲がカメレオンとなった理由付けが丁寧に説明されていれば善かったかも知れません。
3000文字で完成させているところに非常に好感を持ちました。

作品2はある意味で教科書通りの展開。
登場人物はステレオタイプで、駒のような存在。この作品から感じるメッセージ性を明確にするには、こういった手法の方が善い場合もあると思いますので一概には言えませんが、もう少し深みを感じられれば、と思いました。この短編の字数制限の中では非常に難しい問題ですね。
吉川の独白で進んでいくお話の中で、一人称の文体に、多少の違和感を感じましたが、原因は不明です。御免なさい。
結びの部分はややご都合的な流れと思いますが、解りやすい展開でメッセージを伝える、という点では成功していると思います。
最後の一文の僅かな照れのような印象が、吉川のものか、作者のものか難しいところです。全体にもう少し丁寧に文章を組み立てていれば、もっと印象はよくなると思います。

作品2

最後まで一気に読まされてしまった。人のネガティブな部分、ポジティブな部分を軽い文体で見事に描いている。作者の力量を感じた。軽さの中にありながら、腹の底から力が湧くようなラストが好きだ。

作品1


 多分、作品1は彩霞さんだろうなぁ。
 いや、3000字バトルと振られて、3000字にならない作品を用意するのは、Qバトル参加経験の浅い黒ちゃんの方だろう、と。

 で、内容について。

 作品1は、読んでいてちょっとごちゃついた。
 要するに、自分の事を聞いてたのだと判断出来たけど、オチとしてどうだろう。
 いや、勝手に自分を不幸だと思いこんでいる自作自演の悲劇のヒロイン、みたいな嫌さがあって。

 作品2は、と。
 分かり易い話。
 文章や語り口でそれなら良いのですが、結果が見え見えって意味でも分かり易過ぎです。
 イジメに文句を言うキャラが、「美少女の委員長」ってのも、あんまりと言えばあんまりのステロタイプでしょう。最後に主人公が、いじめられるのを覚悟の上で、彼女の味方に付くって結論も。
 折角特殊技能としてカメレオンを用意したんですから、用心棒よろしく双方の勢力にコロコロ鞍替えしていじめグループを潰すとか、いじめられてる生徒が出る度にカメレオンの極意を伝授していきしまいに誰も目立たない教室になるとか、何となくいじめに荷担したけどいじめられた経験がないので歯止めが全くきかず逆にみんな引くとか、なんか「世界で初めて見る」意外な展開が欲しいです。

 で、結論としては、字数を守った1番の勝ち。
 通常のバトルならそれほど気にはしないけれど、タイマンですから。
 ピッタリに書けないなら、バトル条件に字数制限を付けるべきではないですよ。

作品1


「ペルソナ」という言葉がある。
元々は「仮面」という意味であり、一般的には人格と称される。
今回の「カメレオン」というテーマに、両作品とも見事なまで
の共通点がまさに「ペルソナ」ではないだろうか。

作品1は、もう一人の「私」というペルソナ。
作品2は、周囲に溶け込む。「ぬっぺぼう」の意でのペルソナ。

結論から言えば、私は作品1に票を入れた。

作品1の良さは、その構成と物語のおもしろさにある。
一方で、作品2には、一人称語りでありながら、観察描写の中に、忠実に
己の心理描写を交えながら、物語を進行させて、読ませる力があった。

では、なぜ作品2に票を入れなかったのかというと「俺」がカメレオンではなく
人間かもしれないという証明を示す最後の描写。

今までカメレオンを徹し、ぬっぺぼうの仮面をかぶってきた「俺」が、いじめに
対して反旗を振るうまでの説得力が弱い。これまで、淡々と冷淡に観察してきたのに
いきなり、あの最後だ。その意外性を評価する人もいるだろうが、私は違った。

作品1は、「証言」の部分の描写は全体を通じてみると多少弱い感じもするが
私と「千尋」の関係を踏まえた上で、もう一度読み返すと、物語の構成、
その展開の仕方が作品2と比較して、優勢にあった。
カメレオンというテーマに準じて、自分を守るために、周囲に色を合わせるという
点からみても、実におもしろい。

故に、私は作品1に票を入れます。

作品2

題材が身近なせいもあるかもしれないけど感情移入がしやすくすんなりと作品の中に入れた。淡々としている主人公の一人称も作品の雰囲気にあっている。最後の一文が印象的でした。作品1は冒頭から他者へのインタビューで気持ちがぶちぶち切れてしまいその気持ちが最後迄続いてしまったので落ち着いて読めませんでした…スミマセン。

作品1


作品2は途中まで読者をうまくひきつけていると思う。
でも、最後があまりにもフツーで終わってしまったのが、
物足りなかった。

作品1


 最終的には好みで決めた感もありますが、作品1の方が3000字をより効果的に配分し、使っていたなあ、と思いました。ラストに意外性があまりなかったのがかえって落ちるところに落ちてくれた満足感があったり。

 作品2の方は、ラスト近くの主人公と西沢の会話をもうちょっと見たかったです。文字数的にも余裕があったようですし。最終的な主人公の行動はちょっと好きでした。

 色を変えるという行為が、作品1では能動的に作品2では受動的に作用していた気がします。そのせいか、前者が‘カメレオン’と言われた際にはより判りやすかったかもしれません。後者が悪いというのでは全くないですが。
 ともあれ、どちらの作品もとても面白く読ませていただきました。

作品2

たしかに、自分がいじめられていたほうが、他人がいじめられるより気楽だ、という人はいる。けっしてマゾとかではなくて。けど、この主人公はそういうタイプだとは思えないし、西沢さんだって庇ってもらって嫌な思いをするだろうなぁと思う。だいいち、こんな簡単に人の気持ちが変わるものだろうか。
どちらも小説としては無理を感じるのだけれど、作品2の主人公と西沢さんのキャラの違いが良かった、かなぁ、ということで。どうやったらカメレオンでいられるのかが書かれていないから、空々しいけれど。でも、1だって中身がない感じだし。

作品1


題材のカメレオンを、双方、同じように料理した感のある今回のバトル。
ストーリーの流れとしては作品1、ストーリーの結末としては作品2を推します。
でも、最後に残ったイメージの明確さ、というか生々しさを比べると少しの差が。
ベース音の太さで作品1を推します。

作品2

作品1
テーマの処理としては上手いと思います。なるほどカメレオンだし、小説のテーマとして充分面白く取り上げています。ただ、話がちょっと解り辛かった。視点が定まっていないのか、あるいは主観がメリハリついてないのか、語り手の立ち位置がちゃんと伝わって来なかった。オチとして最後にいきなり誰かに泣き出されても、何で泣いたのか、その辺の心理が描ききれていない。
作品2
素直に面白かった。いじめについて実にリアルな分析が、読んでいるだけで楽しい。最後に第三者である語り手が叫ぶという急展開も、物語として締まっていていい感じです。キャラクターがしっかり書き分けられており、その点でも読みやすい。

作品2

こっちのほうが、素直に読めました。

作品1


黒さんの作品は、感情の流れがとても直接的に感じられて、
読んでてついつい感情移入をしてしまっている。
でももう一歩、人間の奥に通じる深さへの引っ掛けがほしい。

彩霞さんの作品は、パズルのピースが合わさるように進み、
最後の全体図の現れ方が非常に鮮明でリアルだったのが印象的。
描写からもないようからも、いまいちレコーダーでなくてカメラでなければいけない理由がわからんかった。

本来の姿の現れ方の鮮明さと豊かさから、彩霞さんに投票。
おもしろい勝負でした。



投票結果!!




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