SuzzannaOwlamp

水女房

こんばんは。秋味亭きいろでございます。苦味あと旨みというものは、コーヒーの醍醐味でありまして、そこへ行きますと、水というものは、味気もへったくれものない、無駄の多いものでございます。雨のなか、上を向いて口をあけていれば、少しは水分も取れますれば、雨が喉を潤すはずもなく、何の腹の足しにもなりません。さて、今回聴いていただきますのが、「水女房」という落語。まぁ、さして面白い噺でもないのでございますが。
「定吉! 定吉や! 定きっとんはおらんか!」
「はい、何でございましょう。番頭はん」
「最近、旦さんの姿が見えんが、どこへ行ったか知らんか」
「番頭はん、旦さんでしたら、鰻を食べに行くとかなんとか言って、お出掛けになりました。何の用事かございましたら、義姉さんにお尋ねになったらいかがでしょう」
「姐さんなら奥の間で針仕事をしてますよって、ちょっと顔見せてくれへんか」
「見せるのは結構ですが、番頭はん。直接行って、お聞きになってはいかがでしょう。そっちの方が心配の種も減りましょう?」
「…うん。マァせやねんけども私はここで棚卸しの算段をせにゃならん。どうしてもちうなら構いやせんが、手が空いたときにでも、おまはんがいてくれたら助かるねやけどなぁ。無理にとは言わんが、なあんにもありますよってにちとつまらんか」
「う゛、別に構いませんが、わての顔ちょっと見繕いせな義姉さんに怒られます」
「かまへんかまへん。ええからいっといで。おいどれ定よっ! ちょい待ち、この小袋持っていき。で、姐さんはしっかり挨拶するんやで」
「えい、いてまいりま」

「義姉さん、いてはりますか!? 義姉さん!」
「何や、定やないの。どないしたんなそない大きな声出して。ん? ちょっとこっちおいで。こっち来てみなはれ。顔に泥がついてるわ。拭ってあげまっさかい、ちょっとこっち寄り。ええからこっち寄りちうてんの。あんた、こんな顔で表でたら、うちのお店が笑われる。さあこれでええわ。で、用があってきなはったんやろ?」
「そうそう、そうでんねん。何や番頭はんが、これ持って義姉さんに挨拶してきっちうとりました」
「どれみせてみ。あぁ、これな。わかった。ほなこれを番頭はんに渡してき」
「義姉さん、なんでんのこれ只の手鏡やがな」
「あほ! 手鏡みたいなもんがその時代にあるかいな。定、これだけはよう覚えとき。三○八九九七」
「なんでんの、それ」
「うみみずの期限切れ」


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