マニエリストQ

遠くの月

麦茶おむすびシガレット コンビニ袋ぶらさげた 深夜 
黒く流れる水音お伴に 爺がご帰還 

おやご覧
アスファルトに真黒ぽかり 肩幅ほどの円い穴がある
  
思いきや閉じる
こいつ川に棲む鯉の退屈しのぎか悪戯か 鴨も棲む

思いきや開く
爺の首は穴のなか 暗中模索でキャタピラ工事の看板ひとつ見る
薔薇一輪がご愛嬌 綺麗事の裏にはいつでも闇がある 

これはプラネタおむすび 海苔で丸める突貫工事
地下1メートル地中1000メートル どれだけ違う
海苔が腐る
糊塗が剥げる
腐水が増す
塩気がたっぷり
いつのまにやら プラネタ海苔茶漬け
 
おっと穴ぽこ閉じる
薔薇一輪の底に 挟まれた爺の首がころりと落ちる
ボゥボゥ お精霊様が川で啼く が 啼くに啼けない首なし爺 
鯉の生き血もやれず 鴨の首もひねれず 蜻蛉釣りさえままならぬ
しかたない 廃れた川辺の墓場で平胡座 蝙蝠が笑いやがる 貴君も笑う

酒ほどほどにバスあるうちよ 支度あるにおむすび か
うたうはよかれ どうともよかれ くりごと婆さんの小言幸兵衛

さて
爺の首は穴の底 ころ ころ ころ と 貴様の首と駈けっこ
婆さんの永久の子守唄 遠くの月が眠っている


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