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第21回パラ1000字小説バトル



エントリ作品作者文字数
01カラメル3737☆★1000
02童話の世界へようこそ日向さち1000
 
 
 ■バトル結果発表
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エントリ01  カラメル     3737☆★


空メールが届く。

これはあと30分で家に帰るよという知らせだ。
恋愛結婚なんてするもんじゃない。
幻想にだまされてしまう。

「結婚は人生の墓場」とかいう人がいるらしいが、
私にしてみれば「結婚は恋愛の墓場」と言うほうがぴったり。

テレビでは塩キャラメルが流行とかやっている。
ご飯を催促する空メールは、そんな優雅なお茶の時間を私から奪うんだ。

冷蔵庫を開けるとぷっちんプリン、私がぷっちんとなってしまいそう。

だけど、ぷるぷる震えるキャラメルソースをみてちょっと考えた。

キャラメルソースって確か……砂糖と水のみ。

煮詰めて、でも焦がさないように。

煮詰めすぎると鼈甲飴になってしまって、それもうまいことはうまいんだけれども、「動けない」状況に落っこちる。

ちなみに恋愛歴7年で腐れ縁みたいに結婚した旦那との新婚生活3ヶ月。

「今会いに行くからね」の空メールは、「ご飯食べにかえる」の空メールに変わったわけだ。でもこれは煮詰まりすぎたのかも知れないな。

恋愛も結婚も単に材料は私と旦那。

ちょっと距離を置くべきかも。

さくさく料理を作りながらそんなことを思った。

がじゃりとノブの回す音がして、ドアがをぐぁっちゃんとしまる音がして、くぁちゃりとチェーンを掛ける音がする。

距離を置こうかなとか思ったのを見透かされて、閉められたようだ。

「ただいま」

と鈍い声がして、料理の手を休めて荷物を持ちに出迎える。

「あれ?今日は何があったか聞かないの?」
「ん、ちょっと考え事していたの。」
「ふーん。あ、そうそう、美味しいプリン買ってきたんだ。」
「ぷっちんプリン?」
「違うよ、モロゾフ」
「高かったんじゃないの??」
「だって三ヶ月記念だからさ、結婚して。」

妻の言葉に「何かしたかな」と心配になった。
恋愛していたときには、彼女のほうが「何ヶ月記念」とか「何年記念」とかよく飽きないなと思っていたのだが。

恐る恐る尋ねてみる。
「ぷっちんプリンの方がよかった?」
「え、なんで?」
「いや、家計に響いたかなとか。」
と、妻は笑って答える。
「ぷっちんプリンはあるけどね、それに家計にも響かないよ、お小遣い制じゃない。それに、たまには同僚の人と呑んできてもいいよ。」

確かに。じゃあ、何でと思って考え込む。男か?うーん??まあ、同僚にも「かかあ天下になっちまってんじゃねーの」と言われた日なので複雑ながら妻に感謝する。
あと意味深に「空メールとプリンに感謝して」といわれたけども。

作者付記:1000字達成。





エントリ02  童話の世界へようこそ     日向さち


 エンドウの種を蒔いたところを次の朝に見てみると、すでに一メートルほども育って、お互いの蔓を絡ませあっていた。驚いたけれど、仕事があったのでそのまま出かけたら、帰ったころには、大木のように数本が束となって、まっすぐに天へ向かって伸びていた。まるで――。
「ジャックと豆の木ですよ」
 やっぱり。ていうか、あんた誰?
「竪琴とか金の卵とか、欲しくありませんか?」
 いや、いらない。
 斧はなかったけど、物置からチェーンソーを持ち出した。
「東へ倒すとあなたの家、西へ倒すと隣の家、南へ倒すと畑、北へ倒すとあなた自身が潰れます」
 き、北? じゃあ、南に倒すか。仕方ない。
「おおっと、それは出来ないな」
 なぜ出来ない? あと、口調が変わったのもなぜ?
「私が畑にいるからだ」
 えー、どこに? だったら、どいてよ。
「やだ」
 なんだと。
「のっぼっれ、のっぼっれ、それ、のっぼっれ!」
 じゃあ、三メートルくらいなら。
「馬鹿言うんじゃねえ、大男の家までだ」
 つーか、ほんとに大男いるの?
「信じる者は救われる」
 うそ臭いな。
「いや、マジで、大男が私の竪琴とか持ってるから!」
 あんたのかよ。なら、自分で行けばいいじゃん。
「大男、怖いもん」
 南へ倒すとするか。
「待って! 待ってくれ! ほんと、お願いだから!」
 まあ、いいや、すばしっこさと腕っぷしには自信があるからな。
「よろしくお願いします、ジャック様」
 ジャックじゃないし。
 大男の家は意外と遠くなくて、天高く聳えている豆の木の途中に建っていた。
「雲の上まで登ったら疲れるかと思って」
 思って? あんたが建てたの?
「さあ、早く入ってくれ」
 戸のすき間から侵入して、辺りを窺いながら奥へ進んだ。どこまで行っても部屋があったけれど、だれの気配もないし、竪琴なんかも見当たらない。次第に疲れてきたので、余力があるうちに入り口へ戻ろうと思った。
「さっがっせ、さっがっせ、もっとよく、さっがっせ!」
 もしかしたら、大男が持ち出してるんじゃないか?
「それはない」
 なんでだよ?
「いいから、さっがっせ!」
 迷路のような家を、探して探して探し回った。もう、ほんとにへとへとだ。
「もう降りていいよ」
 え? だって、何も見つかってないよ?
「大男も竪琴もみんな、うそぴょーん」
 なんだよそれ、ムカつく。じゃ、その辺のベッドで一休みするかな。
「一時間三〇〇円です」
 最初に言えば、泊まってあげたのに。