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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第49回バトル結果

おめでとうございます

今回のチャンピオン作品は、サヌキマオさん作『八百屋』です。

投票結果
得票数 
1
私の履歴書
小笠原寿夫
2
サヌキマオ
2
3
ごんぱち
1
4
Rytr/ アレシア・モード
1
5
改造の正月
岡本一平
6
戦時の正月(その一)
岡本かの子
7
戦時の正月(その二)
岡本かの子

感想票をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。

「私の投票がない!」「内容が違うような?」……掲載もれ、ミスなどがございましたら、QBOOKSインフォデスクのページよりご連絡ください。

推薦作品と感想

八百屋
サヌキマオさん


感想:
八百を売る店は比較的辿り着きやすいが、八百そのものの描写はやはり難しい。床屋で床を売ったり、古屋のもりで中古同人誌を売ったりするのとは訳が違う。
この手の解釈に関しては、既に吉田戦車の丸焼きが存在する為、おいしそうと思わせる方向に感動の方向性を誘導する事は、1つの正解で間違いなかろう。
投票者: このバトルへの参加作者

感想:
いちおう私の性分なのでリサーチしてみたんですがね、「エリマキトカゲの棒のついたやつ」は今ではAmazonでも売ってない、でもまあ似たようなのはあるんですが、これが小さい。鉛筆の先につけて転がすミニチュアなんです。商品名は「エリマキトカゲくるくる鉛筆キャップ」とあります。こんなものを鉛筆につけて試験会場に持ち込んだら私なら出禁にします。少なくともいい大人が転がして帰るような代物ではありません。で、これが八百八十八円、しかし三色セットなので一体あたり二百九十六円なんです。安すぎではありませんか(個人の感想)。でもこれはまだ小さいから安いんだろうという解釈は可能です。では当時のエリマキトカゲは幾らだったのか。リサーチを進めますと、二〇二〇年、ヤフオクに当時の「ぼくはエリマキトカゲです。(スエヒロ製)」のデッドストックが出品されてました。これに当時の値札が付いています。税込三百円って書いてます。やっぱり安いです。たしかにパチもんぽい雰囲気ではありますし、率直これも少し小さいミニサイズですし、税込ってことはブームもとうに終わった平成以降の処分価格ですが、でもSTマークもついた立派な製品です(STマーク取るのはとても面倒なことです)。しかしこれはあくまで当時の値段であり、二十一世紀ともなればレトロ玩具にはプレミアもついて当然です。オークションの結果はいかがですか。入札1、落札価格は九十五円です。ハア? 間違いではありません。これが現代の「エリマキトカゲの棒のついたやつ」の価値なのです、はい。然るに、この八百屋は何ですか。税込八百八十円。食料品なのに軽減税率も無視? しかも手足はヘナヘナ、本体は起き上がりコボシでエリマキトカゲ要素は前後に絵が描いてあるだけのパチモンです。もう何から何までデタラメなインチキ商売、まさにこれこそ嘘八百でございます。
投票者: このバトルへの参加作者

人の不幸は蜜の味
ごんぱちさん


感想:
何度も言う通り、ごんぱち先生はベタをやってくれる。だから面白い。終始、台詞にしてくださった事も好もしく思えます。
投票者: このバトルへの参加作者

仕事初め
アレシア・モードさん


感想:
「私の履歴書」
 面白いね。ふつう「自己紹介」とか「履歴書」というと自慢アワー(もしくは、自分がいかに駄目か、という特殊さを訴えてくる)になりそうなもんなんだけど、どうにも掴み所がない。「どこを見てほしいのか」が前面に押し出されてこない。「笑いの魔力にとりつかれた」というわりには読者を笑かしにもこない。おろかにも「アドバイスをしてやろう」みたいな輩からすれば「書きたいことをもっと絞ろう!」とかいい出しそうなんではあるが、この「とりとめのなさ」をどうにか読んだほうがいい気がする。
 ただまぁ、理解の範疇を超えるには超えているので「さよか」という感想しか出てこず、そのへんが読み手側の限界であろうと思うわけです。

「八百屋」
 八百屋のお店に並んだ八百を見てごらん、なわけなんだなうーんこれが。

「人の不幸は蜜の味」
 また浮世根問をやっている。

「仕事初め」
 AI面白いなぁ、浮世根問より面白いぞ。ただ、この面白さは「人間でないものが、人間らしいことをしようとしている」からこそ面白い部分であって、もっと原則的に比較しちゃいけないものなんであろうとはわかっている。そう、わかっているのです。幼稚園児が描いた絵が面白いのと感覚としては似ている。
 もっと真面目に人間と張り合わせるのであれば<彼女は口から水蒸気を吹き>あたりは「彼女は噴き出して」あたりに置換可能であろうし、<一人の男が私の目を直接見つめ、アイコンタクトをとった時、彼はすぐに背を向けました>も「一人の男と目があったが、すぐにそむけられた」くらいに滑らかにはできようというものです。
 なんかこう、タロット占い的な引用はできるのかなぁ。解釈が占者に委ねられるという意味では……。

「改造の正月」
 昔から虚礼廃止というのはいわれとったげな、でも無くならない、というところに本質がある……。

「戦時の正月(その一)」
「戦時の正月(その二)」
 岡本かの子が書いた、というエクスキューズがないと、どこかのいいところのお嬢さんが当時の生活を書いているように見える。「そこがいい」という話にしてしまえば平穏無事であるが、描写されたものにそこまでの思い入れがないように見えるのはなんなんだろう。「そういうことがあったが別に良いとも思っていない」というのは、伝わってくる。

 その二はもう少し後、日本人倶楽部なる団体があって、海外にいながらにして普段どおりの正月の設えが出来ているというのが面白い。こっちの文章のときのほうがよっぽど状況を「面白い」と感じており、その一にはなかった比較文化的な視点がうかがえるんであった。明確にこっちのほうが筆が冴えているわね。
投票者: このバトルへの参加作者