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1000字小説バトル

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1000字小説バトルstage4
第51回バトル 作品

参加作品一覧

(2022年3月)
文字数
1
サヌキマオ
1000
2
ごんぱち
1000
3
柳田国男
555

結果発表

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コミュニケーション

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月曜日をぶっとばせ
サヌキマオ

 同時視聴接続十万人の人気ヴァーチャルユーチューバーが「月曜日をぶっとばせ!」などとツイートしたのを受けてファンが月曜日をぶっ飛ばしたため、令和四年三月七日(月)はぶっ飛ばされて時間軸の脇の砂利に転がり落ちた。本人からすれば何が起こったのかわからないままきょろきょろとあたりを見回していたが、冷え切った足元の砂利と、仰ぎ見た時間軸で三月六日(日)と三月八日(火)がみるみる間を埋めていく様子を認めるとそのままがっくりと頭を垂れた。
 月曜日がその身に持った月曜日ゆえに迫害されるのは古くからの因習であるが、それでもため息をつきながら持ったが病として会社や学校へ赴くのが人間の人間たる所以ではなかったのか。考えてみろ、月曜日が居なくなれば火曜日が、火曜日が居なくなれば水曜日が週明けとして設定されるがゆえに「月曜日をぶっとばす」という行為はナンセンスであると論理は展開し結論付けられたのではなかったのか。それともなにか、令和四年にして三月かつ七日であることが問題だったのか。令和四年三月七日は己の身体に刻まれた遍歴をあらためてまじまじと見る。三月七日、「キャプテン・クックがハワイに着く」「薩長同盟が成立する」「山手線の読みかたを『やまのてせん』に統一する」「松下電器(現パナソニック)が創業する」どれもぶっ飛ばされるほどのことはないように思える。いつしか履歴の一番上、令和四年の三月七日の項目に「三月七日、ぶっ飛ばされる」という記事が追記されている。するというとなんだろう、すべて偶然なのか。そうか偶然、そのヴァーチャルユーチューバーとかいうやつが「ぶっ飛ばせ」とか云ったばかりにぶっ飛ばされたのか。おれは。おれは。
 いつまで悔やんでいても仕方ないことはわかっていた。しかし、純然たる日付であるところの令和四年の三月七日(月)になにか未来はあるのだろうか。きっと先程の「ぶっ飛ばされた」記事以降、永劫項目は追加されることはないであろう。となったら――令和四年の三月七日の脳裏に閃くものがあった。そうか、やめてしまえばいいんだ。
「わたしはタヌキです。わんわん」そう思うと急に未来が開けた気がする。耳が生え、もさもさと毛が生え、しっぽまでそろうと急に腹が減ってくる。
 何が食べるものはないかしら、そう思った矢先頭上の線路から三月十四日(月)が勢いよく弾き出されてきて、タヌキのすぐ脇の砂利に頭からめり込んだ。
月曜日をぶっとばせ    サヌキマオ

大怪○のあとしまつ
ごんぱち

 勇者の一撃は、邪竜の顎下から脳天を貫いた。
 邪竜は力を失いながら、ゆっくりと王都に落下していった。

「――さて諸君。勇者が不用意に倒した邪竜が、王国の城塞のど真ん中に落ちて来た訳だが。これを処理する方法について、諸君の忌憚のない提案を聞きたい」
「王様! やはり焼肉が一番だと思います。こう、炎魔法の使い手をずらりと集めてこんがりと! 臭いが強いですから、香料もふんだんの用いるのが良いでしょう」
「参謀長、町中で炎魔法を使うなんて、一体何をお考えです? 刺身が良いに決まってますわ。邪竜の体温は水を湧かすほど高いので、寄生虫の心配がありませんでしょ。何より、建設局長の強い希望で2年前に肉の生食が禁止されてから、国民の不満は頂点に達しています。今も闇取引で法外な値段で流通して、膨れあがった犯罪組織は政府にも食い込んでいるとか?」
「衛生局長! そないな事実無根な噂に踊らされるなんて、底が知れるで! まったくもってアホらし、子供の空想やで! 邪竜の生肉には絶対に反対や。その理由は……ええと、なんや、邪竜だからや。ええと……邪竜の肉は瘴気を発しとる! せや、そうに決まっとる! 当然、聖水で瘴気抜きが必要や! どうせ聖水に漬けるんやったら、そのまま鍋でホロホロになるまで煮れば手間がないんや!」
「そんな事をしたら味が抜けてしまいますわ、建設局長。生肉をそんなに流通させたくないのかしら」
「だからやっぱり焼肉を」
「せやかて!」
「……どう思う、宮廷料理長?」
「はい、王様。この邪竜は1000ミルテ級の巨大な個体。肉の量は計算で30億フルタはございましょう。王都の人口が農地含めても1万人、毎日3フルタづつ食べても1万日、30年近くかかる計算でございます。刺身は乾き、焼肉も茹で肉も冷めてしまいます」
「ふむ、ならばどうする」
「保存食と致しましょう。北の地域では、大きな獣をそのまま保存食に調理する技術があると聞き及びます」
「なるほど、採用!」

「邪竜のはらわたを出して、その中に獲ったは良いけど使い道がなくて、防腐の祝福だけで放置されていた大怪鳥のロック鳥を詰めましたぞ! 後はこれを土に埋めて熟させるだけです」
「うむ、後の作業も巨人族に任せよう」
「頼んだぞ、巨人族!」
「任せたわ、巨人族!」
「きばりや! 巨人族」

「……なあ、ギガ野?」
「なんだい、サイ木」
「これ、新鮮なうちに食べちゃ駄目かな?」
「駄目だろ」
大怪○のあとしまつ    ごんぱち

邂逅
今月のゲスト:柳田国男

 土淵村の助役、北川清という人の家はあざいしにあり。代々の山臥やまぶしにて祖父は正福院といい、学者にて著作多く、村のために尽したる人なり。清の弟に福二という人は海岸の田の浜へ婿に行きたるが、先年の大海嘯おおつなみいて妻と子とを失い、生き残りたる二人の子とともに元の屋敷の地に小屋を掛けて一年ばかりありき。

 夏の初めの月夜に便所に起き出でしが、遠く離れたるところにありて、行く道も浪の打つ渚なり。霧のきたる夜なりしが、その霧の中より男女二人の者の近よるを見れば、女はまさしく亡くなりしわが妻なり。思わずその跡をつけて、遥々はるばると船越村の方へ行く崎のほこらあるところまで追い行き、名を呼びたるに、振り返りてにこと笑いたり。男はと見れば、これも同じ里の者にて海嘯つなみの難に死せし者なり。自分が婿に入りし以前に互いに深く心を通わせたりと聞きし男なり。

 今はこの人と夫婦になりてありというに、子供は可愛くはないのかと言えば、女は少しく顔の色を変えて泣きたり。死したる人と物言うとは思われずして、悲しく情けなくなりたれば足元を見てありし間に、男女は再び足早にそこを立ち退きて、うらへ行く道の山陰やまかげめぐり、見えずなりたり。追いかけて見たりしが、ふと死したる者なりしと心づき、夜明けまで道中みちなかに立ちて考え、朝になりて帰りたり。

 その後久しくわずらいたりといえり。