第5回1000字小説バトル【Rosso】


参加作品
01(作者の希望により掲載を終了いたしました)  
02児童ポルノ政談ごんぱち1000

■バトル結果発表
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02  児童ポルノ政談
ごんぱち

 豆腐屋さんの朝というのは、これはもう早いものでございます。豆腐は風味がすぐに落ちますから、作り置きがききません。
「ふぁああ、あー、眠い。まだ新聞は来てないかな……ん? なんだい、こりゃ、チラシ――うわっ、これは、十七歳と思しき男つまりは児童の写真じゃないか!」
「むっ、お主、手に持っているそれは何だ!」
「ひっ、お巡りさん! い、いや、その……」
「むむっ! この大人一歩手前の細い腕のライン、遠慮無く日焼けした肌、性欲渦巻くニキビ面、ああっ、この児童ポルノ度合いときたら! けしからん、逮捕するのだ! 死刑なのだ!」

 逮捕された六さん、大岡裁判官の勤める地方裁判所に引き出されました。
「この度、豆腐屋六五郎の裁きを行う、面を上げい――ん、どうした、面を上げい」
「へぇ、まあ、その、裁判官様の命令ならやりますがね、油揚げってのはやっぱり裏表両面揚げねえ事には旨くねえんで」
「……顔を上げろと言ったのだ」
「へ? あ、こ、こりゃすみません。はい、上げました、こんな顔です」
「ふむ。六五郎。お主、十月二十一日の朝、児童ポルノを所持しているところを、巡邏中の警察官に発見、逮捕された、これに相違ないな?」
「は……はい、でも、郵便受けにいつの間にか入れられてただけなんで……」
「ならばその場で捨てれば良かったのではないか?」
「その間もなく逮捕されちまいましたんで……捨てるつもりだったんです、本当にすぐ、すぐに……ううっ」
「――検察よ、証拠の品を持ってまいれ」
「ははっ!」
「――む? これは犬ではないか?」
「は? 何を仰います」
「検察に尋ねるが、被写体に角があるか」
「え? いえ、ありませんが」
「では一般的な犬に角があるか」
「そりゃある訳がございません」
「被写体も角なし、犬も角なし、ならばこれは犬であろう。犬ならば、人間が児童と呼べる年齢であっても大人であるから、児童にも該当せぬ」
「ですが、裁判官」
「犬じゃ」
「その」
「犬じゃ」
「あ」
「わんっ!」
「わ……分かりました」
「六五郎、どうじゃ」
「え……ええっ、いいんですか、これはどう見てもにんげ――」
「わん、わんっ!」
「は、はひっ、犬であります!」
「うむ。大人の犬の写真を所持していただけであるから、そもそも罪は成立しておらん、よって告訴を棄却する!」
「へへーー! ありがとうございます」
「六五郎、きらずにやるぞ」
「ありがとうございます、これからもマメに働きます」