宇宙時代のオイディプス
植木さん
感想:「紅いハイヒール」
誰が誰に向かってこのハイヒールの話をしたのか、というのはもっと考えられていいんじゃないだろうか。
「で、そのいわくつきのハイヒールがこちらです」とか云って、古道具屋と観光客のお姉ちゃんの会話でもいいし、まぁ、事故に巻き込まれながらなんとか復帰した「私」が語っているのでもいい。
ただ、私が語ったとすると「誰に」語ったかが問題となる。聞く人によっては「ハイヒール自体は空を飛んでっちゃったのよ」「いいカウンセリングを紹介しようか」みたいになりかねない。
あと、なんかこう「夜のお店」の描写が型どおりべったりすぎて前半の状況を読むのに飽きる。要するに「描写の内、何を省略しても問題ないか」を掴むほどには、あんまりいろいろな小説なり漫画なりを読んでないんだろうなあ、という推測は立つ。
「宇宙時代のオイディプス」
丁寧な描写。が、いわゆる自然主義的な精密さではなくて、自分にとって大事なものを文章として遺しておきたいような、そういう愛情に満ちた、もしくはこれ以上自分のものを失いたくないような孤独を厭う切実さのあらわれた描写。それは親権をとった息子はもちろんのこと、自分の身の回りにあるアイテムや教養、趣味などにも及ぶ。
タイトル、「オイディプス」というとどうしてもエディプス・コンプレクスのことを想起せざるをえないのではあるが、そういった意味合いよりも、むしろ興味は前述の「自分の持ち物」にあるのではないかしらんと読んだ。
「夜汽車」
田舎娘萌え小説家と思ったらそうでもなかった。面白え。
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感想:「かくれんぼ」
3000文字という縛りの中で、出てくる名前が多すぎて
(しかも読み方が難しい)何度も何度も読み返さなけ
れば理解できませんでした。
タイトル「かくれんぼ」も、一度読んだだけでは「?」
だったのだけれど、何度か読んでみて、やっと「おお!」
って感じで(ようやく)納得できました。
サヌキマヲさんの小説は、たぶん好きな人には、たまらん!
って感じの小説なんだと思います。
でも今回の作品は読解力を試されているような気がして
物語にうまく入り込めませんでした。
「宇宙時代のオイディプス」
「オイディプス」という言葉を知らなかったので調べて
みたのですが、ギリシア神話の登場人物の名前なのですね。
「実の父親を殺し、実の母と親子婚を行った」らしく
エディプス・コンプレックスの語源にもなった、と。
それらを頭の隅に置いた上で読んでみると、離婚した両親
の間で揺れる(ここを宇宙飛行に例えたのは上手いと思う)
少年の心理、そして父親の葛藤について、良く描けている
と、改めて思いました。
というわけで、今回は「宇宙時代のオイディプス」に
投票させていただきます。
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