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1000字小説バトル 2nd Stage
チャンプ作品
『ナポレオンVSスフィンクス』ごんぱち
 エジプト遠征に来たナポレオンの前に、スフィンクスが現れた。
「ここを通りたければ、我が問いに答えよ」
「余の辞書に不可能の文字はない、何でも答えてやろう」
「朝は八本足、昼は八本足、そして夜は八本足。これは何ぞ?」
「……アシハポーン?」
「ノン、アシニホーン切れた、アシジュポーン」

 G氏脳内会議開催。
「……なあ、直観の」
「なんだ? 論理の」
「アシハポーンとアシジュポーンてなんだ?」
「はぁ? フランス語でタコとイカの事だろう?」
「タコはpieuvre、イカはseicheだよ。フランス語知識がないから実際の読みは分からんけど、少なくともアシハポンとは読まないだろ」
「小学校ぐらいの時、何かで聞いたぞ。タコはアシハポーン、イカはアシジュポーンて」
「それはギャグだろう」
「ギャグ? どこが?」
「そりゃあ、何かフランス語じゃないのに、フランス語っぽい響きっていうとこが愉快なんじゃないか?」
「あのな、ちょっとそこ座れ、論理の」
「なんだよ」
「確かに今なら。it社会の中で生きて、知識をたっぷりと蓄えた今の俺なら、だよ? 『フランス語っぽい響き』ってのは分かるよ」
「はあ」
「だが、フランス語の知識が単語一つもない小学生に対して、それを言って何になる? お前、コミケに行った事のない人に『コスプレ広場で売ってるレンズ付きフィルムは、パッケージデザインが吉田戦車なんだぜ』とか、八十歳の婆様に『ケーシー高峯は、ブラックジャックのモデルなんだよ』とか、一般人に『マジンガーZの大きさは、ガンダムを参考にしたんだよ』とか言ったらどうなると思う?」
「……そりゃ、そのまま信じるだろうな」
「そう。もしも事実であれば、『へぇー、そうなんだ面白いね』で、めでたしめでたしだ。だが、事実でなければ『え? 何でそんな事言うの?』状態だ。タダのウソだろう」
「まあ、確かに」
「畢竟、ギャグは相手とのある程度の知的共通点があって成立する、コニュミケーションなんだよ」
「それを言うならコミュニケーションだ。それに口語で畢竟とか使うな」
「そうそれ、そういうヤツ。つまり、フランス語的なモノが全然育っていない相手に対して、こんなネタを使うヤツはだな! ギャグセンスも、コミュニケーションスキルも底辺である事を露呈しているのだ!」
「あー、アレだな、つまり。リアルにフランス語だと信じてたんだな。このネタを書く為に実際に調べてみるまで」
「……Oui」


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