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詩人バトル
チャンプ作品
『ゆうぐれゆらら』kikki
夕やみ歩く猫
のし
のし
人ごみと並んで歩いては
立ち止まり
都会が鼻歌まじりに風を歌うのを じっ と聞いている
夏はまだ長い
今日もずいぶんと蒸していて
建物からこぼれる冷気とごちゃまぜになっていて
あの時のように
ああ
またこの季節が来たのかと気づくもう何もかも遅いのだけれど


ゆうぐれゆらら
明かりがあめ玉のように 
ちらばって 
広がって
また
ドーナツ店の店長の気が狂い
居酒屋の客引きおばさんが交差点を占拠する時間がやってくる


彼は
微熱コンクリートに寝そべっては薄目をひらき
「海が見たいかい?」
魔法猫の真似をしては そっぽ向いて
あくびをしては伸びをして
舌を出してはのんきな顔をして
でも時々ちいさく鳴く
だれにも聞こえないように ちいさく
ちいさく
ボクが色白の友達をなくしたことはこの界隈の住人はみんな知っているけれど
彼が灰色の友達をなくしたことはだれも知らない
たとえ知っていてもだれも興味はないし
悲しむ人もいないけれど
見知らぬ人が行き交うこの町が彼のふるさとで
やがて死ぬのもこの町で
君はボクに気づいたのだから
だから
そばにいてくれたらと思う
夜の間だけでも





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