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不思議な看護婦さん

作品情報

題名不思議な看護婦さん
文字数1167
タグ
投稿日2021/01/27
感想
作者Bigcat
訳者
翻案
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不思議な看護婦さん
Bigcat

 私は都内で人材派遣会社を経営している三十代の男性ですが、最近、鼻の調子が悪く、
頻繁に鼻詰まりを起こしたり、出血したりするので、近所の耳鼻科医院で診察してもらいました。
 診断は鼻中隔湾曲症ということで、服薬・投薬での対症療法も可能ですが、すぐにぶり返すので、手術が好ましいと言われました。
 手術と聞いてびびりましたが、結局医者に説得されて公立病院への紹介状を書いてもらいました。
 手術は二日後で、当日、私は朝から薬を飲まされ、朦朧とした状態で手術室に向かいました。
しかし、手術台にあがり、無影灯が目に入ると、さすがに怖かったです。私は、ピンク色の手術着を着た女医さんにおそるおそる、、
 「あの、いまから手術を取り消すなんて、できませんよね」とたずねました。
 女医さんは、
 「ダメよ」と、冷たく言い放ち、つづいて看護婦さんたちの含み笑いが手術室に響いたのでした。
やがて私は、鼻の部分だけ穴の開いた布をかぶせられ、鼻に局部麻酔と思われる注射を打たれました。
私は思わず、体を固くしましたが、そのとたん、握りしめている左手に、ほのかなぬくもりを感じたのです。

「?」
 それは、間違いなく若い女性の手の感触でした。それも両手で、私の左手を包むように握っているのでした。
「どの看護婦さんだろう」
 私は、久しぶりの女性の手の感触に、その人の顔を見たい衝動にかられました。しかし、顔には布がかぶせられているため、だれなのか全くわかりません。

 手術は間もなく始まりました。鼻の上では、
「そこそこ、たたいてちょうだい」
 などという言葉が行き交い、ノミのようなもので 
「コツッ、コツッ」とたたく震動が伝わってきました。
 私はかすかに呻きながらも、手の握られ方を変えてみることにしました。
左手を徐々に開いていきますと、その動きにそって看護婦さんの
握り方も変わってきました。そして最後には、指と指がからまる状態に
までなったのです。
 私は、ノミの震動が襲ってくるたびに、ギュツと指に力を入れました。
そうすると、相手の看護婦さんも、さらに強くキュツキュツと握り返してきました。
結局、手術が終わるまでの四十分間、私は、
「ほかの看護婦さんは、どう思うだろうか。変に思わないだろうか」
と心配しながらも、かたく手を握りあっていました。その看護婦さんは手術とは無関係に、私の手を握り続けていたことになります。

 それから数時間後、ベッドでじっとしている私のところへ、掃除のおばさんがやってきました。そしてソッと耳打ちしました。
「あんた、看護婦さんたちの間で噂になってるよ。あんた、もてるね。」
 私は、それから二日後、
「手を握ってくれた看護婦さんは私があんまりびびっているので、
見かねて手を握ってくれたんだろう。誰だったのだろう」
と、後ろ髪をひかれつつ、無事、退院したのです。
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