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第72回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1カルマ552
2それがきっと僕らの願いsin777
3僕は腫瘍523
4美しいミサイルいとう1081
5ブロックタウンのまやかし奴隷紫生1677
6玉ねぎ畑でつかまえて大覚アキラ315
77:36kikki247
8戒魚/神斬り虫ヨケマキル701
9お話を 聞かせてるるるぶ☆どっぐちゃん540
10 イルカ 空人 733
11 カミサマ トノモトショウ 581




 


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エントリ1  カルマ    双



小さな空き地から小鳥がいっせいに飛び立った
空を目指して雲を超えるように
子供等が空に目掛けて撃ち放った空気銃
一匹の小鳥に命中

小鳥はふらふらとよろめきながら
やがて力を失い地に落ちる
命中した先 それは羽ばたくための翼であった

その翼には力は残っておらず
骨が砕け二度と飛べぬだろう
今一度空に飛ぼうと力込める
砂埃だけあたりに舞うだけ

小鳥はゆらりゆらりとよろめきながら
やがて命の灯火が大きく揺れる

「こんなところに小鳥が一匹」

小さく呟いたその者の表情は
醜く笑い 嘲笑って小鳥を蹴り飛ばす
遥か彼方へと

小さく震えながら小鳥は謳う

二度とこんなことにならぬように
一人たりとも人間が存在せぬように
全てよ消え失せよ

そして小鳥の命は消えかかる
その時に少しばかり思う

何故私はこの姿に生まれてきたのだろう
もし醜い人間として生まれたなら
どれだけ自由なのだろう
空を飛べなくともどれだけ怨まれようとも
彼等には自由に生きていけるだけの力がある

ぶるりぶるりと小刻みに震えながら
小さな鳥の命は消えてく

もしまたこの地上に生まれてくるのなら
人間として生まれたい
例え何処か不自由であっても・・・
望まれる存在でなくとも・・・

「こんなところに小鳥が」

力尽きた小鳥のすぐ傍に座り込み
少し眺めて立ち去る老人

今一度願おう
憎むべき人間
しかしそれでも私は人間に生まれたい





エントリ2  それがきっと僕らの願い    sin


彼の背にあるのは未来
                       彼女の背にあるのは現実
彼の前にあるのは希望                
                       彼女の前にあるのは事実
彼の頭上にあるのは喜び
                       彼女の頭上にあるのは空
彼は捨てる
                            彼女は捨てる
私を 
                                僕を
だから彼が欲しい                         
                         だから彼女が欲しい
彼は見ない
                            彼女は見ない
私を彼の瞳に焼き付けたい

                     僕を彼女の瞳に焼き付けたい
そう願うのに
                            そう思うのに
                  
なのに彼は行ってしまう
                      だけど彼女は行ってしまう
私は彼を捕まえたい
                       僕は彼女を手に入れたい
だから彼の自由は必要ない
                    だから彼女の力はもう要らない
彼の背にある翼をむしり
                        彼女の両手を杭で打ち
そして鎖でつなごう
                         足を縛ってしまおう
私は壊れている
                        僕はきっと壊れている
だけど 
                                でも
            それがきっと僕らの願い       
           


編注:担当判断によって等倍フォントで掲載しております。





エントリ3  僕は腫瘍    葱


もし僕が腫瘍になったら

宿主の体全身、侵し尽くしてやる

もし僕が腫瘍になったら

宿主のふぬけに代わって、おかしく生きてやる

どうしようもない中途ハンパな仕事など辞めて

見ても何も変わらないビデオや本など捨てて

もし僕が腫瘍になったら

宿主の記憶全般、消し尽くしてやる

もし僕が腫瘍になったら

宿主のこだわりなど、全て破壊する

言いようのない感情を消し、全て合理的に

生き物として必要なものだけ考えることにして

肩の肉を、黒い翼にして、飛んで行く、何処へでも

何でもできるよ、不死だから、だって僕は悪性新生物

もし僕が腫瘍になったら

なんてたわごとは単なる逃げ道

それはただ自分がふがいないことを

余計に強調するだけの 無様な着地点

ゲームしたり、マンガみたりで受け取ることばかり

助けてもらってばかりで自分では何も与えようとしない

所詮僕は、家族の腫瘍に過ぎないとしても

病気と付き合うということもあるように

受け容れる、人がいる、僕にはわからない

飛んで逃げたい

肩の肉を、黒い翼にして、飛んでゆく、何処へでも

何にもできない、それでいい、そんなの認めない、わからない

肩の肉を、普通に鍛えて、飛ばないで、歩くしかできない

夢の中を、海の底を、想像する

良性じゃなくていい、僕はただの新生物になりたい





エントリ4  美しいミサイル
    いとう


輪の裏で
小人の群れを掴み
握り潰す
手の端から
零れる体液を頬に塗ると
始まりと終わりの境界を見ることのない
私たちが
夕日を捕らえ
夜に
引きずり込んでいく
えりくすま、えりくすま、
妊婦は
怯え
その下腹部を潰し
美しいミサイルが
私たちを突き抜けていく

視界の端を
何かとても嫌なものが通り過ぎる
小人はそれを認めず
お互いの手と、手を、
潰れるまで握り合う
えりくすま、えりくすま、
貫かれた私たちの欠片が小人となって
とてもきれい、と囁き合い
夜空で砕かれるすべての私たちを見上げながら
輪の裏で
弔いのための祈りを紡ぐ
えりくすま、
どうかこれ以上
強くなりませんように
弱いまま
生きていられますように
えりくすま、えりくすま、
美しいミサイルの
破片もまた美しい

    ※

ニュースでは
どこかの、国と呼ばれるものの空
美しいミサイルが
美しく到達し
また別の私たちを貶める
るーまてっく、るーまてっく、
月はなく
空は暗く
夜は黒く
私たちが打ち上げる美しいミサイルは
ブラウン管の向こうにあり
標的は
耳鳴りのする方向に

始まりと終わりの境界の見えない
輪の裏で小人が焼かれ
火葬場は
骨を孕み
るーまてっく、るーまてっく、
たなびく煙が
美しいミサイルを
美しく覆い隠す

目線を落とすと
小人が群れ
踏み潰しながら
祈る
あれは
いつか私たちが打ち上げた
美しいミサイル
睦みあう瞳と、瞳、のように
手の潰れた
小人を焼き尽くす
るーまてっく、るーまてっく、
私たちが打ち上げる美しいミサイルが
ブラウン管の向こうに到達し
また別の私たちの
小人が生まれる

    ※

潰す者は幸いなり
潰す者は幸いなり
輪の裏で
貫かれた私たちの欠片が
下腹部に到達して

涙なく泣く日々が続いていました。その姿は
笑っているように見えたのかもしれませんが、
私以外の物は皆、私を見ることはないため、
その姿を見るのは私自身だけだったのだと思
います。空から何か、灰のようなものが降り
始めると、その度に私は全身を何か無数の針
のようなものに貫かれる感覚に襲われます。
そしてその直後、その無数の穴という穴から
まるで心太のように私は押し出され、地面に
落ちる前に発火し、消えていくのです。無数
の激しい痛みによって私は輪郭のみ残され、
発火し、消えていった私以外の私も、そのよ
うに、潰されていくのです。

めれっせん、めれっせん、
美しいミサイルが
私たちの輪郭を作り
妊婦は怯え
その下腹部を潰す
輪の裏では
誰もが落下しているので
落下していることに
誰も気づかない
潰す者は幸いなり
潰す者は幸いなり

めれっせん、めれっせん、
あれは
いつか私たちが打ち上げた
あの美しいミサイル
ただ、在りますように
ただ、生きていますように
弱いまま
生きていられますように






エントリ5  ブロックタウンのまやかし奴隷    紫生


芸術は多面体の生きもの………なんていうけれど

にせものの町では
とっておきの剽窃だけがオリジナリティと呼ばれる

オリジナリティという模造品
という
世界でひとつの見あきた新鮮

生臭い恋愛小説・子供騙しの応援歌・絵のような風景を描いた絵
人工ゲラニオール・模造真珠の光沢………

あれもこれもどれもそれも、よくできたまがいもの

壊れた時間・風狂の見る夢・盲目の刺青師・ピノキオの大脳新皮質
福寿草の根・かみあわない返答・能面の裏側………

全部まとめてミクロの海へおかえりなさい

*****************************

「まあ、よく似た親子ですこと!」

はい、うちの親子はよく煮ています
ふんわり玉子がお好みでしたら、どうぞよそへお願いします

えっ、なんですか?
ええ、まあ、似せものは好きなほうです
本物に間違われる贋作なんて
なんだか聞いただけでワクワクするじゃありませんか
それこそ
本物を凌ぐ贋作があるというのなら
そいつはいっそ本物になるべきゲェ術ってやつに違いないですよ
まあ実際、似せものは偽物にすぎませんけど…

イカモノのチープな魅力も捨て難いものがありますよね
うそを楽しむ、ひとの脳の奥深さ、柔軟さ、貪欲さ、そして何より傲慢さ…
等々のない交ぜが“如何物”
の一言に見事に集約されちゃってる感じでクラクラきますね

えっ、おやじがイカに似てる?
そうじゃなくて…
ああ、オレがおやじにそっくり
…って、それさっき聞きましたよ
よく言われます。でもオレおやじじゃないです。別ものです
世の中みんなそんなもんです
めぐってるんですよ。順繰りに
みんな過去の一部だし、同時に未来の一部だし…

今のご時世、手垢のついてないものなんてあるんですかね
まあ、DNAの突然変異と同じくらい?
あるかないかないかあるかなんて、もうどうでもいいですよ

ようするに
文楽は多面体の化けもの
…ってことです。
何それ、って知りませんか?
知らないですよねぇ
そりゃそうです。たった今こしらえたばかりですから

「コラッ、この子はまた人様のものを失敬して
お父さん、一度カトゥーンと言ってやって下さいよ!
………えっ! ガチョーンって
そんなビンテージギャグがあの子に通用するとでも思ってるんですか!」

うちのおかんときたらいつもああですよ
文楽人形みたいにコロッと顔色変えますからね
たいしたもんですよ。人間なのに
人間であるのに。人間でしかないのに
何に息巻いてるんだか、なんで息してんだか、何をめざして生きてるんだか
まあ、人間みんなそんなもんです
多少の進化はあるにせよ、進歩なんてちっともしてやしませんから
それでもある時、コロッと別ものに変わりますからね
あなどれないですよ、全く
氷が水になるように、水が蒸発するように
素知らぬ顔で移相しますから

話、それましたね
ようするに
文学は多面体の生きもの
…ってことです
えっ、さっきと言ってることが違う?
そりゃそうです。はじめて言いましたから

手垢じみたことをくり返すようでお恥ずかしいんですが…
受けての心の有り様が創り手の心の有り様と化学変化を起こして
色を変え、質を変え、世界を変える…
いうなれば、凡庸の唯一無二。コモンセンスの仮装リレー
レゴだってエゴだって
いくらでも新しく生まれ変われるのと違いますか?

えっ、ちょっと違う?
… そうですか!

実はうち、ホントは飯屋じゃないです
エセなんです
この親子丼はオレの昼飯です
良かったら、喰います?
…ああ、あなたもエセ客ですか
それはやられました
もう、笑うしかないです

*******************************

きな臭い永田町界隈・猫じゃらしのフサフサ・かきわりめいた風景
競馬香・なめらかなベルベット………

あれもこれもどれもそれも、フランケンの闇鍋

覇気のないハリケーン・母水母・シャーマンの影・とりちらかった真心
カサブランカの花粉・エレガントなストリップ・堕落した駱駝・玻璃の針
アナグマのアナグラム・ドラえもんの肛門・サイコパスのオクトパス………

全部蒐めて…・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・














エントリ6  玉ねぎ畑でつかまえて    大覚アキラ


昨日の夜はカレーを作って
玉ねぎをとてもたくさんみじん切りにしたから
左手が玉ねぎくさいんだ

この玉ねぎくさい左手で
きみの頬にやさしく触れてみたい

この玉ねぎくさい左手で
きみの腰をぎゅっと抱き寄せてみたい

この玉ねぎくさい指を
きみの唇にゆっくりと這わせてみたい

この玉ねぎくさい指を
きみの中にそっと挿れてみたい

生活感がないよね
なんていわれるけど
実のところ
ぼくの左手には
平凡な日常がすっかり染みこんでしまって
どんなに洗っても
玉ねぎのにおいが落ちないから

いっそふたりで
玉ねぎ畑に逃亡しようか
真っ白い毛糸玉のような玉ねぎの花が咲く
いちめんの玉ねぎ畑に隠れて
こっそりキスしよう

そしたら
そのあとでとびきりおいしいカレーを
きみだけのために作ってあげるから





エントリ7  7:36    kikki


この寒空の下では
頁を手繰る指も冷たかろう
頭の中で誰かが囁いた

ビジネス文書術 という本の
最終章

まもなく通勤特急が通過します
黄色い線の内側へお下がりください

危険を告げる音午前7時36分
北風

127頁目に挟んであった栞が
はらはら
と線路に滑り込む

それは 目印とのお別れ

特急列車がホームを揺らし
青いラインの帯をたなびかせて視界をからかい
栞はいなくなった
電車はカーブを曲がりゆるゆると地下へ
北風

7時39分
僕の終わりと僕の始まり
7時40分
きびすを返し

改札をくぐると人身事故のアナウンスが
けたたましく晴天に鳴いた







エントリ8  戒魚/神斬り虫    ヨケマキル


微音通りには骨董品屋が乱立
近隣の指定区域の住人は一週間にひとつ
どこかの店でナニカを買わなければならない規則で
知らずに引越して来たボクも仕方なく先週
青い看板が印象的なガードの横の「肺色堂」で
「死んだふり人形」を二千円で買った

しかしこの人形
一昨日からまったく死んだふりをしない
困ったボクは修理をしに再び肺色堂に行ったのだが
ガードの横はすでに新しい店
熱帯魚専門店「青爪屋」になっていた

店の前で途方にくれていると
青爪屋の店主が出て来て
「肺色堂つぶれました
不良品ばかり売って苦情ばかりでした
でもあなたが抱いている人形の治し方私知っている
私の店で<ブラインドフィッシュ>を買いなさい」

運良く水槽を持っていたのでそのブラインドフィッシュを買った

水槽に入れると青く発光していた


次の朝
浅い眠りからめざめると
人形は首吊っていた






釘江産婦人科はこの辺では珍しい女医さんなので
たいそう儲かるらしい

その産婦人科の隣
立ち入り禁止の神社
先日写真を撮りに来た場所
なんだか気になってもう一度来てみた
ロープをくぐって入ると
キィ−キィ−キィ−と音がした
音の方へ行ってみると

神斬り虫がいるではないか

ひいらぎの葉を食べて生きる伝説の虫である
神斬り虫を飼うと大金持ちになると本で読んだのだ
そうか 釘江さんも飼っているんだな
女医さんというだけであんなに儲かるはずがない
早速つかまえて 虫カゴが無いので落ちていた空き缶に入れた
ひいらぎの葉っぱも忘れずに
家に帰って空き缶を逆さにすると
足を折り曲げて明らかに死んでいる神斬り虫が

床にぽとりと落ちた


死なせてしまうと大きな災難が起こると確か書いてあった


寝転がり
天井を見つめ
明日釘江産婦人科に侵入する計画を錬った





エントリ9  お話を 聞かせて    るるるぶ☆どっぐちゃん


スラヴ人の建てたのがプラシボ王国で
病は気からがノヴゴロド効果?
歴史の講義を受けてきたばかりなのにもうすでにさっぱり忘れている
夜十時三十五分新宿発の丸の内線にはたくさんの人々、たくさんの民族が乗り込んできて
軽薄なロックを演奏する
スピーカーの上に座ってノートを開く
「ねえあなたさっきあたしのお尻触ったでしょう。本当に、スケベなんだから」
ジプシー女がそう言って寄り添ってくる
「本当に、もう本当に」
ジプシー女は暑いのか服をするすると脱ぎ始めて
檻の中には金色のライオンが居る
聖堂の中にも檻があった
花園の中にも檻があったな
鏡に映したかのような自分そっくりの誰かが居た
人の体や考えをどうつぎはぎしても
聖堂に行けば同じような継ぎ目の自分が居る
黒いベルトに縛られていて
そのベルトの光沢がなんとも言えず羨ましくて
檻の鍵を外して中に入り
うずくまって一晩過ごしたこともあった

誰か素敵なお話をしてよ

丸の内線が止まって
アメリカに着く
みんなぞろぞろと出てきて
色々な民族の
のろのろと色とりどりの旗や食べ物やポスターやリボンなどを供えて
だらだらと歌を歌う
アメリカ アメリカ もう誰もいないアメリカ
たくさんの花がどこまでも続くだけ

きちんと眠るから
誰か素敵なお話をして

マリリンと一緒に花をつみ
話を交わしながら
新宿へ帰る





エントリ10  イルカ    空人


突然の春風
思わず目をつむったら
仰向けにひっくり返った
あわてて目を開けると
そこは
うすぐらい 海の中だった

あおむけになったまま
ゆらゆらと沈んでいく
鼻の奥まで潮水で満たされる
しかし
不快ではなかった
むしろ
すべて投げ出してしまったことに
安堵を覚えた
これで楽になれる
ギリギリと締め付けていた糸から
解き放たれる

沈んでいく 沈んでいく
胎児へ還ったように
深く 深く
うすぐらい 海の底をめざして

どれくらい経ったのだろう
遠くから 名前を呼ぶ声がする
ゆっくりと目を開けると
真上を
小さなイルカが泳いでいる
呼んだのは おまえなのか

人間の言葉ではない 抑揚だけの音
頭の中を 右から左へ
突き抜けていくような音
でも
イルカとは言葉を超えた場所で
通じ合っているような気がした
不思議だった
これを何と表せばいいのだろう

手を伸ばして
ほんのりと 微熱を帯びた体躯に触れる
たくさんの傷 きっと遠い海からここまで来たのだろう
イルカの顔を見て 微笑むと
彼女も微笑んだような気がして
うれしかった

沈んでいく 沈んでいく
胎児へ還ったように
深く 深く
うすぐらい 海の底をめざして

しなやかなカーヴを描く
背中から尾に走るライン
力いっぱい 海水を蹴るときに
盛り上がる 筋肉の張り
イルカは美しかった
内包する歴史が美しかった

このまま 留まってほしい
このままずっと そばにいてほしい
感情は あふれるように満ちてくる
沈みながら 満ちゆく充足感を
腰のあたりで感じている

ふと 頭をよぎる思い
いま ここから 海面まで浮上できるだろうか
もう一度 もう一度
力の限り 上に向かって泳げば
いつかは 太陽のまぶしさを 感じることができるだろうか
そんなことを考えながら

僕は

イルカといっしょに夢を見る
夢を見る
胎児へ還ったように
深く 深く
彼女の懐に 抱かれながら





エントリ11  カミサマ    トノモトショウ


ジ・エンド・オブ・サンボリスム!
手足をミミミと引き千切ってラヴ・パレード
ニッカポッカ履いた排他猫の闊歩闊歩だ
よくよくご覧あそばせ、セブンティーン達
一切合切が我が采配に平伏すぜ

 帝王切開で産まれた革新的嬰児の陰嚢は
 異常なまでに肥大しており、まるで
 そこに脳が収まっているかのようだった
 と、当時の執刀医は日記に書いていた
 母体は大量出血により手の施しようもなく
 不祥事を隠蔽したい病院側の決定で
 赤ん坊は全ての肋骨を摘出された後
 近くの溜池に無残にも捨てられた

理解不能のアーメン言わざる者から順番に
そら与えたまえ救済アドレセンスの四十九日
電子音で見分ける方法を知りたいだろう?
ならば、金だ金だ金だ金をくれ
セルロイドの闇から噴き出した魂の群レ

 数年後、突如メディアを騒がせた少年は
 肋骨の代わりに体内に無数のケーブル
 を張り巡らせ、さらに世界との接続
 幾つかの奇跡的所業によって人々を魅了
 かつ洗脳したとして治安維持軍の銃弾に
 倒れることとなったが、
 もちろん死に至らず苦悩したと
 される

更年期サディスティックな豚と踊る
どうせ範疇外ならば十人で充分です、デス
エレクトロニカ最高潮のヤードバード
いつからか没した太陽の叫びを聞いてくれ
そして汝、詩人罪により死刑となれ!

 それから彼は歴史から姿を消し
 都市伝説となったというが、あくまでも
 フィクションである

(ハレルヤ)