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第87回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1αωやまなか たつや23
2ガーデン石川順一161
3真っさらなカンバスに描いた不可思議な少年130
4コエトモ待子あかね219
5再生トノモトショウ571
6本を買う歌を街で作る。霧一タカシ559
7われに五月を大覚アキラ256
8ゆら、ゆらり桜はるらん237
9サーカス.txtイグチユウイチ235
10LIVE葉月みか203
11にゃんこ日和紫生786
12偽物ロケットTsu-Yo298
13小サク 狂レル 暗示ヨケマキル254
14やさしい嘘空人466




 


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エントリ1  αω    やまなか たつや





































エントリ2  ガーデン    石川順一


クロッカスは外で短命を誇り
シクラメンは室内で長命を誇る
チューリップの一本だけの矜持は
地虫穴をいずの感有りて
柿の黄緑の新芽を凌駕せんとす

ユスラは規模を小さくして白く咲き
雪柳が抜かれ
スモモは根を無くし
幸福の木は滅んで行くのか

愛は天に有り
地に有り
しかして中空を漂う

舞え人に化した君
セリヌンティウスの末裔は
アイダホに居るのだろうか






エントリ3  真っさらなカンバスに描いた    不可思議な少年


真っさらなカンバスに描いた
色とりどりのわが人生のとき
欲しい物は全て描ききったが
なぜそれが欲しくなったのか
そこまでは分からない仕組だ

大いなる宇宙の神秘を秘めた
心を遍く照らす君のその笑顔
僕は幾億兆の遺伝子の箱舟を
つなぎ渡っていま辿り着いた
アイというのだろう君の名は

作者付記:即興詩





エントリ4  コエトモ
    待子あかね


右手にある携帯電話 黒
左手にもある携帯電話 白
どちらか片方は その曲がり角に捨てられていたみたい
両方鳴ったから 同時に
両耳に当てて 話してみようと思います
両方のことばに返事をし
両方の嘆きにやさしさを返します
右から怒られ
左からわらわれ、泣かれ
右からどやされ
左からほめられ、楽しまれ
だんだん声がかすれてきました
耳が左右を判別できなくなりました
もう おしまい
両方ともの 電源ボタンを切りますよ
もう おしまい
白の携帯電話は元の曲がり角に捨てました





エントリ5  再生    トノモトショウ


「生きていると感じた瞬間、僕らは死を恐怖する」

殿元聖 27歳
(現在・昭和83年)

僕と
俺は
ある一つの人格において
メタ・アイデンティティ化された
超然なる存在
神的なパラドックス
である
ところで
君は
誰であるか

「これって詩ですかねえ?」
「聞いてんじゃねえよ」
「これって生きてるってことですかねえ?」
「聞いてんじゃねえよ、クソ」

デレク・ハートフィールドなんて実在しない
僕はエンパイヤ・ステイト・ビルディングの屋上で
それを知った
だが
俺は詩なんて書いたことがない
あれは

羅列だ

想像の森にて
四人の電脳(彼等はネットワークを支配している)に出会った
「君は彫刻家だろう?」
いいえ違います、と答えようと思ったが
そんなことを主張して殺されるのは勘弁だし
あながち間違っているとも言えない気がして
「ある意味では」と、呟いた
「では、森の中心に君自身の昭和を作ってくれ、時代がようやく終わりそうだ」
僕は何も表現するものを持たなかったが
大きなチャンスでもあった

「俺が死んだら何が残る?」
「さあね、僕はまだ生きているだろうけど」
「じゃあ、俺のことを詩にしてくれよ」
「無理だ、僕は彫刻家なんだから」

僕が創造した性器のオブジェ
天を突き刺すように屹立し
世界に種子を撒き散らす
電脳たちは呆然としていたが
昭和は20年も前に終わっていたらしい
そのあいだに無数の人間が
産まれ死に
産まれ死に
死に
死んだ





エントリ6  本を買う歌を街で作る。    霧一タカシ


本を読んでいく時間を使って勉強していく。
本を書いたとき勉強になる話がある。
いろいろな人を傷つけたことだ。
本屋はその街の地図を捨てる。
本屋は新しい仕事を探している。
映画を作る音楽を書いていきたい。
本屋をいろいろな音楽を作ってそのスタジオから出て行く。
夜になると作られた街を歩きたくなる。
音楽は本を買うと時間があると映画が作れる。
僕は昼間はスポーツをやって体を動かすことにしてます。
いろいろな人と会えて勉強になります。
僕は少し時間があると歌を歌うことにしてます。
いろいろなことができる時間だからです。
僕は涼しい公園で体を動かすと自然が好きになります。
その映画作りは順調に進んでいます。
その街のいろいろな店に行くと買い物ができます。
映画を作るとどんな仕事ができるか勉強できます。
音楽のある街は過ごしやすい季節になります。
僕はきれいな店で本を読みたい。
僕はいろいろな街で店を探したい。
映画館でジュースを飲みながら流れている歌を聴く。
いろいろな夜の仕事をいろいろな人と話してする。
僕は街を作るためその求人情報誌を読んで仕事を探す。
いろいろな小説を書きたいと思っている。
原稿用紙を買いたい。
その街の映画が好きな人たちは道路で遊んでいる。
音楽は小説を作れる。
いろいろな映画は夜になるといろいろな見方ができる。
僕は何度も映画館に通う。







エントリ7  われに五月を    大覚アキラ


風が光っている
それを
瞼の裏で感じて


われに五月を


犯罪的なほどに
短いスカートをはいた
女子高生の耳元で
一編の詩を
ささやいてみたい

気が合えば
ふたりで手を繋いで
モノレールに乗って
いっしょに海を
見に行ったりしてみたい

そしてふたり
世界中から
仲間はずれにされて
暇つぶしに一週間ほど
泣き続けてみたい

泣き腫らした顔を見て
互いに笑いあったら
砂浜に寝転がって
風が光っているのを
瞼の裏で感じてみたい


われに五月を


許されることもなく
認められることもなく
裁かれることもなく
救われることもなく
光る風の中で磨り減っていく

そんな
命の捨て方が似合う

五月





エントリ8  ゆら、ゆらり    桜はるらん


タバコの煙
ためいきひとつ
ゆら、ゆらり
シャツを脱ぎ捨て、ゆら、ゆらり

キスの途中で携帯に出るあなた
あのコとベランダでおしゃべり
お月様の青い光がゆら、ゆらり
あなたの背中とてもきれい

(あのコの声なんか忘れて)

ふたりブランコこいで
天国まで、ゆら、ゆらり
あなたいつも私を
連れてゆこうとするけれど

天国へゆけるのは
いつもあなたひとりだけ
私はいつも扉の前で
落とされるんだ、落とされるんだ

気がつけば夜の公園ひとりきり
見上げる星屑の青い光は
私の涙をつたって遠く近く
コンビニの灯りが
 ゆら、ゆらり








エントリ9  サーカス.txt    イグチユウイチ


観客様は みな鰯

 観客様は  みな鰯



 幾時代か

   幾時代か

      幾時代かがありまして

    観客様は みな鰯


   屋外は真ッ闇


    闇の

 闇




          ブランコだ



   それの近くの白い灯が

    見えるともない ブランコだ


  ゆあーん    ゆよーん ゆやゆよん



 ゆあーん   ゆよーん



 ゆやゆよん




    落下傘奴のノスタルヂアと

  頭倒さに手を垂れて


    観客様はみな鰯

   みな鰯

     みな鰯

  みな鰯

   鰯

 みな鰯

みな




な鰯



   みな鰯






エントリ10  LIVE    葉月みか


温かいと温いは別物
アイスと自己愛は別腹
調子に乗って食あたり

今日は口パク
明日は見え透いてる


昨日は未納


平穏は困難
平凡が貴重
そんなの思い知らされてます

アンコールは織り込み済み
人生は飼い慣らされてる


向こうは無効


ぶち壊しでもいい
破綻してても構わない
だから
予定調和じゃないアンコールを聞かせてよ


苦悩は無能


応えて 明日
答えて 最後の向こう

応答せよ アタシ
応答せよ キミ


壊劫がエコー


暗号なんて送んない

そこで黙ってんじゃねぇ





エントリ11  にゃんこ日和    紫生


なんてすてきな
にゃんこ日和なんだろう
ぽかぽか うらうら
太陽の白魔術にうっとり

まあるくなって うとうとしたら
たぶんファンシーにファンキーな天国
天国っていうのは
わりかし近くにあるものよな

音がとおくとおくになってゆく
からだの中から透明なひとがぬけてゆく

こんなすてなにゃんこ日和には
おべんと持って ぶらりひとり旅
おかずは にゃんこのかたちのニャンコロッケ
かつぶしむすびも忘れずに

では 行ってまいります
どうかさがさないでください

ねこ足でエスケープ
そおっと そおっとね
忍者もおどろく にゃん者ですもの
しのび足は おてのもの

実はね ワンピなんか着てますけど
これは世を忍ぶかりの姿なの
うん 狩の姿なの
さあ おいでおいで の、ねこ招き

わたくしけして あやしい者ではございません
にゃん様とモーレツじゃれあいたいだけの うかれきった猫娘よ
なでなでしたり ぷよぷよしたり
あんなことや こんなこと
よいではないか よいではないかの悪代官
ふっふっふっ おぬしもなかなか悪よのお

あら かまきり坊やに ねこパンチ
ショック! そのあとハムハムしちゃうのね
おやおや 塀からずり落ちて 
みけんにしわ寄せ ヤンキーモードのニャンキーくん
そんなキミも 好き好き大好き
さあ 一緒に踊ろうよ歌おうよ一杯やろうよ

星屑レイヴだ 踊り狂い回ろうよ
キミのダンスは夜よりもしなやか
ゾイサイトみたいな瞳 輝いて
それはもう麻薬よりも猛毒
自由自在のシッポはビロードのムチ
パタパタされたら なんでも言うこときいちゃうよ

パタパタパタパタ イタッ!
ん? ここはどこ わたしはだれ
いえ いねむりなんてとんでもない
はい ただいまコピーいたします

ああ 天国っていうのは近くにあって遠いもの
あんがいあっさり失せるもの

ねこかぶって まじめ顔
ねこ思いだして にやけ顔

それにしたって
なんてすてきなにゃんこ日和なことだろう
うきうきしちゃって
うとうとしちゃうよ





エントリ12  偽物ロケット    Tsu-Yo


学研ムーの編集局に仕掛けた地雷が
いい塩梅で爆発したよ
分かるとは
不感症になることと似ている
15の頃は
マンフレッド・マンで反射的にイケた
今の俺の反射神経じゃ 
月面すらも行けやしない
ジョン・アーヴィングさん
あんたが悪戯に動物園の熊を逃がしているとき
俺は学研ムーの編集局を爆撃していた

もう一度 マンフレッド・マン

月面の重力に鍵盤が流されていく
これは偽物 あれは偽物 それは偽物
なんだよ全部偽物ばかりじゃねえかよ

もう一度 学研ムー爆破

カビ臭いこの部屋から熊を放つ
借り物の感性は返上する
騙してくれ
偽物そっくりの本物で

いま一度 マンフレッド・マン

落下するように跳ね上がる
偽物ロケット
直感よりも速く 閃きよりも速く





エントリ13  小サク 狂レル 暗示    ヨケマキル


ヴァギナと地下鉄がメヌエットを介して結合しているカノジョは
形骸化したハリストスであり
ドラスチックに笑い
奇異と並行してブレスする魚でもある

兄のペニスがカノジョを折檻し
内罰と慟哭の下水道で
ぎゃあぎゃあとそれは産まれた

<手首の裂け目から宇宙がにじみ出ている>

暗示の眠りは
光と受胎し
みしりみしりと狭窄しながら
ファッショの名のもとに
闇と堕胎する

カノジョのちっちゃなちっちゃな個の狂気が
それと同じくらい
 ちいさなちいさな魂の救世主の手により



( いつ) 白昼、
(どこで) 場末のラブホテルで

(どうなる) 破裂する。








エントリ14  やさしい嘘    空人


マヌケな僕は あのとき確かにそう思ったんだ
キミの悲しみのすべてを 僕が引き受けようって
きっとそんなこと 覚悟でも何でもないって
あのときのキミは ぜんぶわかっていて
何も言わずに 微笑んでくれたんだ

いまだから思うよ
遠い北の空を見上げて
僕がここにいることが けっきょく事実であって
キミがそこにいることが キミの意思だってこと
いくら心を通わせても 交わらないこともあるんだね

油と水がきれいにわかれるのを見て
驚いたことをいまでも覚えている
2人は“資質”のモンダイであってね
そう大人びて答えることなんて
いまとなってはカンタンなことだけど
でも
その境界線にあるものは いったい何だと思う?
あのとき訪れた沈黙が
いまでも怖い

マヌケな僕は いまでも確かにそう思っている
どこかさびしげに伏せる キミの睫を
世界と隔離しようとする その耳の稜線を
情熱と冷静を会わせる その薄い唇を
あわく まるで夢だったかのように
そう思い込んでしまえばいいんだ って

さようなら やさしい 嘘
過去はすなわち 無
また僕も キミの記憶の一部になって
行き場のない5月の宇宙を さまようよ