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第17回詩人バトル Entry51

プロフェッショナル

ある昼下がり
のんびり進む各駅停車
窓の向こうの空は まっすぐに青い
ガラスごしのあたたかい光と
かたたん、かたたん という音は
車内の空気をゆるめ
人々の眠気をさそう
向かいのおばあさんが あくびをひとつ

だけどあたしは、あたしの体の中は
黒くて どろどろしたものが
ぐるぐる、ぐるぐると渦巻いていて
ひどく 気分が悪かった

ああ 奴がやってきた
のどのところに鉛
目の奥がゆるもうとする
これ以上 気を許したら、負けだ
まばたきをすばやく数回
鉛を飲み下し
深呼吸
目を閉じて ゆっくり開けたら
…もう、大丈夫

あたしはプロフェッショナル
涙を止める、プロフェッショナル
小さいころ ママが言ったの
「泣き虫はキライよ」って
だからあたしは泣かなくなった
そしていつの間にか
涙を止める術を身につけた

さわやかな風
健康的に青い空
降り注ぐあかるい光は
容赦なくあたしを切る
だけどあたしは負けない
絶対に、負けない
だって私は、
私は、プロフェッショナルなんだから

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