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第231回詩人バトル

エントリ作品作者文字数
1ピンク色のこども靴サヌキマオ318
2烏賊りよ141
3手を握る日向さち819




 


 ■バトル結果発表
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詩人バトル読書会
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エントリ1  ピンク色のこども靴    サヌキマオ


 茫洋という字には
 羊が棲んでいる

 茫洋とした不安を抱えて
 街へでかけていく
 デパートに靴を買いに行ったが
 高級宝飾品のフロアはグッチもアルマーニも
 どこも照明を落として、入り口にロープを張って
 休業でございますと口をつぐんでいる
 店の奥にはそれでも従業員がいて
 服の入った箱をあっちへやったり
 茫洋の詰まった箱をこっちへやったりしている

 宝石店ではディスプレイもそのままに
 指輪やネックレスだけがすっかり抜き取られている
 店の前に立つスーツの人は
 こちら、あいにく休業させていただいております、とでもいう係だろうか

 茫洋とした不安
 さんずいとさんずいの間に
 亡くしたものがあると書いてある

 靴はデパートではなくABCマートで買いました





エントリ2  烏賊    りよ


烏賊はなんとなく、人間に似てると思う

蛸と並べられて、10本足だ! なんて刷り込まれて
烏賊だって烏賊なりの主張をすればいいのに
しないままずっと蛸の真似をしているのではないかと思う
烏賊自身であるより、蛸のふりをする方が楽か
蛸に紛れて自分を隠すのは楽か


とりあえずもっと、8本足を主張なさい






エントリ3  手を握る    日向さち


ベッドから降りたと思ったら
水か麦茶、って言うから
麦茶、って答えて、手で髪を直した
グラスを受け取って、口をつけ
横を見たら、勢いよく飲み干していて
それ足りないよね、って笑って、今度は私が立ち上がる
この日常に、馴染んでいる実感が持てるようになった

クラスメイトになって数ヶ月が経ったころ
いつものように二人で食事に行った帰り、彼が
前から言おうとは思ってたんだけど、って
僕と付き合ってください、と手を差し出してくれた
その言葉を飲みこめなくて、えっ、としか発せなかった私は
本気で言ってるんだよ、付き合ってください、って微笑みかけてもらって
ようやく理解して、彼の手を握った

彼の部屋に度々泊まるようになっていったけれど
朝、目が覚めて、彼の寝顔を見たら
ここに私がいるのは分不相応なんじゃないかと思えてきて
彼に背を向けて
流れる涙をほったらかしで床に座り込んだこともあった
小学校の通知表に、もっと欲を持ちましょう、と書かれた記憶もあって
自分を他人より低く捉える癖が付いていて
一人の男性の一番の存在ということを意識しすぎていた

髪を切る時、彼に相談したことがあって
そしたら、クラスの女の子たちが褒めてくれて
その様子を遠巻きに見ていた彼に、友達が声を掛けたら
自信つけてくれたらいいな、って言っていたと後から聞いた
そんなことや、きっと、私が気付かなかったことも
色々と彼が後押ししてくれて
理想を言われて口うるさく感じたこともあったものの
今は全てをお陰様だと思っている

卒業後しばらくしてから、彼の勤め先が倒産して
そこから彼の職が安定しない時期が続き
親に、結婚する気ないの、なんて聞かれもして
他の人を探すという選択肢も浮かんだけれど
行動に移すところまでは考えられなかった

先日、レストランで
差し出してくれた指輪を左手の薬指にはめてもらって
いろんなことがあったなと思ったら泣けてきて
待たせてごめん、という彼の声を聞いたら
余計に泣けてしまって
何も言えないまま、握られた手を握り返した