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詩人倶楽部

第4回詩人バトル
poem22

世界の終わり

作者 : ぶるぶる☆どっぐちゃん
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神様が気まぐれで世界の終わりを決めた時、みんな泣いたり怒ったりしたけれど
その日が近づくにつれみんな大人しくなり、笑顔が増え
神様が気まぐれで決めた世界の終わりは世界で一番平和で安らかな一日だった

恋人達はずっと一緒に。特に愛を語ることも無く、愛する人と共に死ねる幸福を噛みしめ
た
愛する人と共にいれない者は愛する人を遠くから見守り、その人の幸福を自分のものとし
た
今までロクに挨拶も交わした事の無い近所同士は「たまたま近くに住んだ」ことをうとま
しく思わずにそのたまたま出会えた幸運を素直に喜んだ
いがみ合っていた国同士武器を捨て、代わりに楽器を手に取りお互いの国の歌を歌った
フランスはドイツをヒトラーを許し、ナチス軍服やハーケンクロイツのデザインを今まで
秘かにクールに思っていた、なんてことを笑いながら話した
頑固なまんじゅう屋の親父は頑固なままだったけれど一日50個限定だったまんじゅうを
80個作った。そして手元に残った3個を奥さんと自分と10年前に家出して以来音信不
通になっている息子に捧げ、食べた

「ごめんなさい。わたしは明日の為に冷蔵庫の中をいっぱいにする必要があったのです
ごめんなさい。わたしは明日の為にあなたを裏切らなければならなかったのです
ごめんなさい。わたしは明日の為にあなたを食べなければならなかったのです
ごめんなさい。わたしは明日の為にあなたの両親を殺さなければならなかったのです
ごめんなさい。わたしは明日の為にエゴイストにならざるを得なかったのです

だけれども。こんなことは言い訳だけれども

わたしは明日なんて最初から欲していたワケじゃあ無かったのです

何も知らないまま放り出されて
何も持たないまま放り出されて
不安で
寂しくて
それを埋めようと何かを得て
今度はそれを失うのが恐くなって
気が付けばいつもすぐそこまで来ている明日に脅えていただけなのです

ごめんなさい。許してください
ごめんなさい」

人々は最後の日没見て最後の星空を眺めた
世界は美しく。どこまでも美しく
なんて醜く愚かな生。何も知らず何も許さず
でも愛していた。全て愛していた
そんな自分に気付き、少し泣いた

そして人々はベッドに入り
神様がまた気まぐれを起こしたりしないように
明日が来ないように
祈りながら眠った






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