第2回高校生1000字小説バトル
Entry2
「お前も来いよ。オレ達で新しい世界を生きようじゃないか」 信じられなかった。三日前に自殺した哲也が目の前にいたのだ。目 の前にいるのだが、どこか存在がぼやけて見えた。 「オレはおまえからみれば死んだ。だが今もこうして存在している。 死ぬことは消える事じゃないんだ。」 目の前にいるのは確かに哲也だった。なのに、僕は恐怖していた。 心のどこかで僕は哲也を否定していたんだ。 「オレが怖いのか?慧一。それはおまえにとってオレが人間とは違 う存在だからだ。獣が人間に恐怖するのに似ている。」 哲也は1人、何かに酔う様に語りだした。 「死ぬことは消える事じゃない。新しい世界への第一歩だったんだ。 昔、魚が陸に上がり、新しい世界を手に入れた。そして、人間も新 しい世界を手に入れられるのだ。魚にとって魚が陸に上がることは 死を意味する。陸に上がった魚を見て他の魚はなんて思ったとおも う? 勇気のある魚だと思っただろうか? 違うな、バカにしたん だ。『わざわ死にに行った』ってね。お前は自殺した俺をどう思っ た? 」 「て、哲也は死んだんだ。いるわけがない!!」 僕はどなった。頭のどこかがおかしくなっている。ここはどこだ? 今自分がどこにいるのかが分からなくなっていた。 「僕は存在しているんだ。慧一の知らない世界で・・・」 哲也は僕をさとす様な、優しい口調で話し始めた。 「分かりやすく言えば、幽霊になったんだ。幽霊は新しい生き物だ ったんだ。魚は進化し、陸を手に入れた。鳥は空を、ほ乳類は大地 を………、君たち人間には、もう新しい世界や進化の余地は無いと 思っていないだろうか? 人間は完璧な生き物だと錯覚していない だろうか? まだあったんだ。君たちが進むべき道が、体を捨て、 心だけになることだ。精神生命体とでも言おうか」 哲也は1人で興奮していた。どこか、哲也から悪意が感じられた。 「じゃあ何か?哲也はオレに死ねっていうのか。お断りだ、僕はま だ死にたくない、僕はまだ生きたいんだ。」 体の中から異物が感じられる。この場所から逃げたかった。なのに、 今だここがどこか理解できないでいた。意識は気持ち悪いくらいは っきりしているのに、だ。だが哲也以外がぼやけてみえるのだ。 「最初から答えは決まっていたんだ、旅立つことに………」 「哲………、何を………」 …………………………新しい世界へ…………………
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