第25回体感バトル小説部門結果

おめでとうございます!

今月のチャンピオン作品は、
日出野テルミさん『遊蛾譚』、カノイさん『火種』の
2作品に決まりました。おめでとうございます。

エントリ作品作者得票
20遊蛾譚日出野テルミ3
24火種カノイ3
6空腹橋駱 大二郎2
7ババァ菌渡辺まゆみ2
12紐屋(ひもや)ヘビトンボ2
1神様がいるのなら嘉手納・璃魅1
2ピスカト−レ佐保姫 燈明1
3雷光とスタンドライト雪恋う1
4ビューティフルサマー長沢夕1
9死神のお仕事サキ1
10ならないふうりんカセツキ1
11ストーカー中毒症遠野浩行1
14あまやどり日生藍香1
16好きだと言われまいあがる男ここにあり。ナツコ1
19傘、どこにいるぶっきら坊1
23昇降機奇譚沙風吟1
99なしなし1


感想票をお送りいただいた皆様、ありがとうございました。
「私の投票がない!」「内容が違うような」……
掲載もれ、ミス等ございましたらご連絡いただけますようお願いいたします。



推薦作品と感想

■遊蛾譚  日出野テルミさん
 
感想:久々に身がよじれて、千切れそうなほど悩みました。正直に申しますと、以下にあげる作品には全部票を上げたいほどです。
ババァ菌(渡辺まゆみ)……もしこれ以上に面白い作品がなかったら、真っ先にこの作品に投票しようと考えていた作品です。600文字、笑話というジャンル(個人的にこの手の笑話はいい意味で卑怯だと考えているので)でなければ、おそらく票を入れていたのはこっちでしょう。
紐屋(ヘビトンボ)……首吊り用の紐を売っているというアイディアは面白いと思いました。意外にその手の売店がありそうで現実的だし、一笑できるほど軽い話ではないのが、よかったと思います。もしこれが1000文字ならばこちらに決まっていたでしょう。
完全犯罪(諏訪)……初投稿とは思えないほど堂々とした作品です。書く事に手馴れた人でしょう。文章も読みやすく、1000文字できっちりまとめてきているのは高評価に値します。ただこの手の作品では、多用されているオチであるため、辛口ではありますが次点としたいと思います。次回作を期待します。

さてさて、以上の作品が次点なのですが、はっきり言って大差はありません。ただ規定に従えているという外面的な理由が作用して、今回は日出野テルミさんの「遊蛾譚」に一票とします。

主人公の「雅人と一緒にいたい」という心理描写が素晴らしいと感じました。主人公と蛾にまつわる逸話を効果的に使い、蛾が嫌いな主人公と彼(蛾:魂)を愛している主人公という気持ちの矛盾をうまく描き切れています。さらにその矛盾を断ち切るように蛾を潰したシーンは、主人公の「死んでも一緒にいてほしい」と強く願う気持ちを、短いながらうまくまとめていたと思います。
とても1000文字とは思えないほど、内容が濃い作品でした。この調子で次回作も期待します。

※蛇足  魔法の椅子(古森泰則)と右利きの憂鬱(神崎美晴)の作品の関係には驚きました。一方が左利きに対して右利き。内容は違いますが、お互い知り合い同士なんでしょうか? こんなこともあるんだなあ、と思いました。

票者:このバトルへの参加作者

感想:今回はなんというか、ツッコミどころの多い作品が目につきました。
比較的良かった作品は以下。敬称略です。
4 ビューティフルサマー(長沢夕)→こういうジャンルがあるのだろうなと思った。
5 夏祭り(渋谷理沙子)→こういった文体やスタイルは最近の風潮なのだろうか。いい話ではある。
11 ストーカー中毒症 (遠野浩行)→タイトルから中盤までいい感じでどうやってオチるのだろうと思っていたら、終わっても意味がわからない。タイトルとも繋がらない。あれれという感想。序盤と後半で視点が変わっているように見えるのも気になった。
15 右利きの憂鬱 (神崎美晴)→視点は面白いんだけど、手をつなぐのに利き手は関係ないなと一度思うと話全体が揺らいでしまう。
16 好きだと言われまいあがる男ここにあり。(ナツコ)→一発ネタは一度でも同種のものを見たことがあると効果が半減するのがネック。でもテンポはいい。
19 傘、どこにいる (ぶっきら坊)→悪くない。でもコンビニはたいてい傘を置いていると思う。
21 自転車と私 (黒翼)→小説というよりはエッセイの類だと思うのだが、言っていることはよくわかる。
今回は全く迷うことなく、
20 遊蛾譚 (日出野テルミ)に投票します。
イイですね。最初から最後まで筋が通っている印象。音のないラストも綺麗です。
票者:このバトルへの参加作者


感想:「昇降機奇譚」沙風吟さんとで迷った。
話のタイプとしては「昇降機奇譚」のほうが好きだ。日常的な空間で起きる、ちょっとしたファンタジー。書き出しが弱いということと、流れを一通り書いた分、重心がばらけてしまったような感じが減点のポイント。後半は面白かった。
「遊蛾譚」日出野テルミさんに関しては、ロマンチシズムの感じられる表現が好きになれないけれど、エピソードの面白さ、展開の意外性、心情の細やかさなど評価できる点が多かった。題名も良かったと思う。(日向さち)
票者:その他のQBOOKS作者


■火種  カノイさん
 
感想:ノリ、テンポが良かった。
票者:このバトルへの参加作者


感想:2人の掛け合いに、すごく惹かれました。
テンポが良く、最後の彼女の台詞も素敵です。
票者:このバトルへの参加作者


感想:微笑ましい二人の会話に一票。
会話以外にも話の流れの出る表現があったら、もっと良かったと思います。
票者:このバトルへの参加作者


■空腹橋  駱 大二郎さん
 
感想: Mチェック。

4  ビューティフルサマー    長沢夕
 何を書けばいいか心得ている感じ。最後の「美しい」がナツキでもキョーコのものでもないとしたら、ちょっと宙に浮いてしまったか。作者の感傷では、物足りない。
5  夏祭り    渋谷理沙子
 書こうとしていることは魅力的。もっと自信をもって書けるといい。
 ちなみに、とび屋ではなくとび職では無いか。とびの人が聞いたら、はしごから落ちる。
6  空腹橋    駱 大二郎
 癖のある文体だが、読ませる。漱石の「夢十夜」を彷彿とさせて、意識的にか無意識にか雰囲気のツボを押さえていて、なかなか。
7  ババァ菌    渡辺まゆみ
 普通にババアかいてりゃ面白いのに、ババア菌というものが作品中で一切機能していない。視点が面白いのだから、もっとシンプルでいい。
12  紐屋(ひもや)    ヘビトンボ
 面白く読んだ。構成、オチともに申し分ないが、なにぶんにも漫画的なのが気に掛かる。安易さを否とする気持ちがあれば、もっとよくなる。
13  魔法の椅子    古森 泰則
 やられた。それだけだが、それ以上だ。
 ただ残念なのは、老人も雄太も、それぞれ「記号」でしかないということだ。
16  好きだと言われまいあがる男ここにあり。    ナツコ
 オチがベタ? そういってはいけない。
 オチまで盛り上げる文章の流れはたいしたものだ。カバーできている。
17  手紙    忠 美希生
 最近の芥川賞「介護入門」とスタンスを比較してみよう。
23  昇降機奇譚    沙風吟
 うまくまとめたなぁ、という印象。でも、もう一味ほしい。なんかな、簡潔じゃないんだな。

+++
 テンションの維持って言うかな、初めっから終わりまで空気を保ち続けたのが6、16、23。あとは好みとして6に一票。次点は他二名。(M)
票者:その他のQBOOKS作者


感想:始終くしゃっとした空腹な世界に惹かれました。
票者:このバトルへの参加作者


■ババァ菌  渡辺まゆみさん
 
感想:とても読みやすく面白かったです。
リアリティー溢れてます(笑)
票者:このバトルへの参加作者


感想:ただ面白かった。funではなくて、interesting。
票者:その他の作者

■紐屋(ひもや)  ヘビトンボさん
 
感想:最後に救われる話は好きです。印象に残る作品でした。
票者:- - どちらですか? - -


感想:文章が読み易く、ストーリーも面白かったです。
また、映像で観てみたいと思いました。映像が浮かんでくるような小説は素敵です。
是非長いものも読んでみたく思います。
票者:純粋読者


■神様がいるのなら  嘉手納・璃魅さん
 
感想:今回投稿された作品を読んでいったところ、一番心に残ったものがこれでした。

票者:このバトルへの参加作者


■ピスカト−レ  佐保姫 燈明さん
 
感想:何度読み返してもよく分からないままなのですが、読む度に着々としっくりくると言うか、はまっていってしまいました。
最近投稿数に比べて、投票数が少なくなって来てる気がします。
正直全作品を読むのは大変だし、それを比べてどれかを選ぶのはもっと大変ですけど、自分の作品にかける愛情の何分の一かでも、「それを読んでくれている人の作品を読むこと」にもかけて欲しいです。
票者:このバトルへの参加作者


■雷光とスタンドライト  雪恋うさん
 
感想:雷の鳴る暗い空と薄暗い部屋で本を読む主人公という場面がなぜか懐かしく感じられた。

暗く重い雰囲気の中で、よく言えばほのぼのとした、悪く言えばたわいもない家族観を語るというアンバランスさによって続きが読みたいと思わせた作品。
票者:その他の作者


■ビューティフルサマー  長沢夕さん
 
感想:しずかで、清楚な感じがしておもしろかった。
票者:このバトルへの参加作者


■死神のお仕事  サキさん
 
感想:こういう話は大好きですね。
最後、あの女性は恐い……。
面白いオチだったと思います。
票者:このバトルへの参加作者


■ならないふうりん  カセツキさん
 
感想:1番切なくて綺麗だと思いました。
お盆らしい、夏の終わりらしい設定で、切なくて悲しくて1番心に響いた作品です。

下に迷った作品を載せておきます。
1、神様がいるのなら 嘉手納璃魅さん
最後の静かなやりとりが気に入りました。でも嘉手納さんの話は前回のほうが好きです。
8、カラー −color− 赤虎流歌さん
これも綺麗な話だと思いました。「君」みたいな人に私も会いたいです。
16、好きだといわれまいあがる男ここにあり ナツコさん
大爆笑しました。思いっきり笑いました。


ところで、何で私は毎回迷いまくりなのでしょう・・・???


日生藍香
票者:このバトルへの参加作者


■ストーカー中毒症  遠野浩行さん
 
感想:もっと読んでいたくなりました。ゾクゾクするのだけど、
綺麗なお話でした。
票者:このバトルへの参加作者


■あまやどり  日生藍香さん
 
感想: 全体的に爽やかな印象を受けました。
誰にでも起こり得る状況でありながら、主人公と相手の男性との何か特別な繋がりを感じました。とても切なげで素敵です。
票者:このバトルへの参加作者


■好きだと言われまいあがる男ここにあり。  ナツコさん
 
感想:13魔法の椅子・16 好きだと言われまいあがる男ここにあり。・19傘、どこにいる この3つで悩みました。

「魔法の椅子」は内容が丁寧に描かれていて、とてもいい話だと思いましたが、文章の言い切りの形に揺れがあるのが、少し気になりました。

「傘、どこにいる」はテンポのいい作品でした。文字数も丁度千文字という点も好感を持てました。しかし、話の終わり方がその前までの文章に比べて雰囲気が違っていたのが少し残念でした。個人的で申し訳ないのですが、最後まで明快でいてくれると嬉しかったです。

「好きだと言われまいあがる男ここにあり。」は素直におもしろい作品でした。文章にも力があって、一度読んだだけで印象がはっきり残りました。なにより、千字小説というテーマにぴったりと当てはまっていたことを、評価したいと思います。余分に描かれた点もなく、書き足りなかった部分もなかったように思います。

今回は推薦するにあたって最終的に「千字で書く」ということを考慮させていただきまして、ナツコさんの「好きだと言われまいあがる男ここにあり。」を推薦させていただきます。

票者:純粋読者


■傘、どこにいる  ぶっきら坊さん
 
感想: 『魔法の椅子』古森泰則さん、『王様と賢者』takatori atuoさん、『昇降機奇譚』の沙風吟さん、そしてぶっきら坊さんの『傘、どこにいる』で迷いました。

 エントリ17の『手紙』や『遊蛾譚』もわかりやすく、文章が上手くて感心しましたが、読後に何も残りませんでした。
 『王者と賢者』は3000字にピッタリの物語で、途中、文がたびたびわかりにくくなるのが残念ですが、分量に見合っただけの楽しみを持っていたので1000字バトルですが、候補としてはかなり上位でした。『魔法の椅子』『昇降機奇譚』も読み応えがしっかりとあってよくまとまっていました。
 しかし上手さでは多少劣るものの、『傘、どこにいる』の勢いは強いオリジナリティーを感じさせてくれました。PCの画面を観ながらガハガハ笑ったのは久しぶりです。どこかで見た気がするものではなく、その人だからこそ書ける強い個性に価値があると信じて……。
票者:このバトルへの参加作者


■昇降機奇譚  沙風吟さん
 
感想:今回もまた面白いアイデアですね。
一回目に読んだときは少し物足りない感じがしましたが、ユニークさに投票します。「由々しき事態だった。」という言葉と、後に続く説明との間に少し違和感がありました。夜中に仕事をしている会社うんぬんよりも、「何が由々しき事態だったのか(仕事の締め切りが迫っているという、ことでしょうか?)」を書いたほうが良かったのでは。

ともあれ、今後も期待しています。ひそかにファンです。
票者:このバトルへの参加作者


■なし  
 
感想:今回のバトルでは、自分好みの小説を見つけることができませんでした。
当たり前ですが、決して私好みの小説を書け!ということではありませんので、私のことなど気にせずにお書きください。(笑)
次の10月期にてすてきな作品と出会えるのを楽しみにしております。


票者:このバトルへの参加作者