ここは暗闇だ 無の世界 私は私でなく 私はあなたでなく 私は誰かでなく 私は誰でもない 何の思考もなく 呼吸をするだけ 楽しくもなく 苦しくもなく 寂しくもなく 只存在するだけ 鼓動の中で眠る 赤子のように 静かに 静かに 待つ 邪魔をしないで 構わないで 言葉にならない したくない だから その手を離して だって 温か過ぎる やがて 光が広がる 私は私で あなたはあなたで 誰かが誰かである 生の世界 言葉に塗れ 感情に支配された 楽しくて 苦しくて 寂しくて だけど 愛しい世界 朝が来た
モニターの中で規則的に収縮と拡張を繰り返している僕の心臓 心室中郭に穴が開いている 僧房弁の動きが悪い いろいろ言われるが 子どもの僕にはどこが悪いのかさっぱりわからない 画面に虹のような輝きが現れた 心臓の動きに合わせてきらきら動いている虹 「虹みたい、きれい!」と思わず言うと 「そこが悪いところなんですよ」と医師 きれいなものが良いとは限りません そんなことをぼんやりと考えた 生きて生きて生きて 子どもの頃はこれでは死んでしまうと あきらめてしまうことがあったけれど 今の僕は生きることが好きだ 死んでしまうかもと思いつつ でも生きることをあきらめない大人になった 虹も同じかもね きっと消えてしまうなんて思ってない きっと悪いなんて思ってない そうなんだよ きっと