第90回体感バトル1000字小説部門

エントリ作品作者文字数
01ナキ1000
02恋人へっぽこ426
03りぴーとあふたーみー土目1000
04リストカッター久遠1000
05悲劇の先住民コロボックル邦州 健1257
06割れ鍋Bonz1000
 
 
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エントリ01       ナキ


冬だ。
俺の住んでる所は日本海側の気候だから雪だって降ってる。今日の最低気温は4℃らしい。どんだけ寒いんだよ。
今日はもう此処から一歩も出たくない。

誰がエアコンなんて画期的なものを考え出したんだ?
俺はその人に感謝しよう。うん。有難う。
誰が炬燵なんて素晴らしいものを作り出してくれたんだ?
そりゃもう、土下座するくらいの勢いで俺はその人に感謝するよ。
まぁ、何が言いたいかって冬に暖房器具は手放せないって事だ。
だから俺は今日、炬燵から出来るだけ離れたくない。



そう思ってたんだ。先刻までは。

「寒い。」

目の前に寒い寒いと煩い女が居た。

何で俺は此処に居るんだ?何で彼女でもない女の為に寒いのを我慢してこんなところに居るんだよ?ああ、早くあのかい部屋に戻りてぇ。

「で、何?どうしたんだよ?」
「え?どうもしないけど。」
「え?何?何もねぇの?」
「無いよ?」
「は!?」

は!?という声と共に白い息がふわっと俺の視界を曇らせた。目の前に居る女、奈乃香が霞んだ。でも白い息はすぐに消え失せて次の瞬間には無駄に可愛らしい奈乃香の顔がはっきり見えた。

だからなんだって言う訳でもないけど。無駄で拙い情景描写だ。

つまり俺は慣れない情景描写を無駄にしてしまう程に奈乃香の言葉が信じられなかった。

何だよ!?何も無いって?
じゃあ呼び出すなよ!
他の季節ならまだ許せるんだ。
でもよりによって冬は無いだろ?
何でこんな寒い季節なんだよ。
何で俺の嫌いな季節なんだよ。

苛々する俺を奈乃香はじっと見ていた。

「何だよ。」

奈乃香がびくっと体を震わせた。

「寒い。」
「俺もさみぃよ。」
「寒い。」
「冬だし仕方ねぇだろ。」
「寒い!」
「うっせぇなぁ!」
「……寒い。」
「お前が呼び出したんだろ?」
「寒いよ……。」

とうとう俺は奈乃香の言葉を無視した。俺だって寒いのに。しかもお前に無駄に呼び出されて苛々してんのに。何なんだよ。




奈乃香は少し寂しそうな顔をした。




「……馬鹿。女の子が寒いって言ってたら「大丈夫?僕が暖めてあげるよ。」くらい言えないの……。」

寒さからなのか、奈乃香が震えていた。

「馬鹿はお前だろ。誰がんな事言うかよ。」


何故か苛立ちが、おさまっていた。



「寒い。」
「寒い寒いうるせぇよ。」
「……寒い……。」



「じゃあ、温まるような事でもしようぜ。」

俺を驚いたように見る奈乃香に俺は悪戯っぽく笑いかけた。

「ばか……。」

照れたように笑って奈乃香が言った。



冬も案外悪くねぇかな。







エントリ02  恋人     へっぽこ


「もう、別れよう」
やっと切り出すことが出来た。彼女も僕がそういうのをもう分かってた。
お互いに当然過ぎるほどに分かっていたんだ。二人はもう、以前の二人じゃないんだって。
「どうして?」
彼女が問いかけた。儀礼的に。「別れを切り出されたのなら、理由を聞くのがスジだから」彼女が問いかける理由なんてそれ以外の何物でもないように思えた。
僕は答えようとして口を開いた。
僕も儀礼的な返事をするために口を開いたはずだった。
でも、言葉は出なかった。何と言えばいいのか分からなかった。
出ない言葉の代わりに、不思議なものが出た。僕の目から涙がこぼれた。
「どうして・・・?」
彼女が先ほどと同じ言葉を言う。だけどその言葉はさっきとまるで違ってた。
当惑。困惑。
なぜ泣くんだろう?なぜ泣いているのだろう?
「何で、何であなたが泣くのよッ!」
叫ぶように言うと彼女の目からも不意に涙がこぼれた。
僕らは向かい合ったまま涙を流しあった。

そうなんだ。
いつだってなんだって、別れは悲しいもんなんだ。


※作者付記:400字少しの作品ですがどうでしょうか??






エントリ03  りぴーとあふたーみー     土目


下校時刻
誰もがそうするように俺は下駄箱を漁り、
くたびれたシューズを抜き取り、
欠伸をしながら家路に着くはずだったのだが。

「…」

その第一工程で俺の動きを止めたのは一枚の手紙だった。
簡素な便箋に流れるような字であつらえられていたのは二行の短文。

 話があります。
 5時までに校舎裏に来て下さい。

校舎裏に呼び出されたのなんて初めてだ。
絶対にリンチかドッキリだと思った。
目の前に異性がいることを確認するとリンチの可能性が減少した。
そしてその女性は俺が密かに恋心を抱いているヒトでありドッキリの可能性が跳ね上がった。
よってコレはドッキリだ、そう言い聞かせながら彼女の言葉を待った。

「好きです! ずっと前から好きでした!」

おかしい予想していたのと大分違う台詞が出てきた。
ここは絶対に『 だーいせーいこーう! 』のはずだ!
スタッフ出て来い! お前らはもう少し番組の組み立てってものをだな、
あ、二段落ち? そういう落ち?

「あ、あの聞いてる?」

「はっ! ご、ゴメン。も、もっかい言ってくれる?」

「はい、好きです。貴方の事が」

えーとつまり何か?
彼女は俺のことが好き。
落ち着け、落ち着くんだ。
まだドッキリの可能性が消えたわけではない。
全身の五感を駆使しシックスセンスまで若干開きつつ辺りを索敵する。
…オールグリーン
俺と彼女を除いて人の気配はおろか四足獣に値する生き物すらいない。
ということは何か!? ほんとにコレは告白って事!?

「おーい」

「だ、大丈夫、俺は慌てていない。もう一回聞くよ? …何て?」

「好きです。」

そんな笑顔で…いや笑顔なのはむしろ良いんだが。
あぁ…真面目な笑顔が可愛い。
いや、美しい。
ダメだな、もう俺はダメだな。
なんというか、目が離せない。
ガッチリと合わさった目線が、俺の映る彼女の瞳が、少し上向きの彼女の顔が、
俺の脳細胞の全てを焼きつくさんとしている。
これは、惚気では無いよな? うん、現状では付き合ってるとかそういうわけじゃないから多分違

うはずだ。
でも、断るつもりはないし、断る理由もないし、だからやっぱりコレは惚気?
いや、惚気て回る様な軟弱な男じゃないゼヨあっしわ!
あぁ…でも彼女になら、あ、彼女って響きも中々のもんだ…

「ねぇ…」

「! あぁっと、その、えっとだな、もっかいだけ言ってくれる?」

「…そろそろ、そっちから言って欲しいな」

それは言う必要があるのだろうか、
などと思いながら俺は彼女の台詞を繰り返した。







エントリ04  リストカッター     久遠



 手首を切った。

 仕事でダンボールを切っているときに、ボーっと作業していた私の左手首がざっくりと切れてしまった。
 その刹那、今まで皮膚に覆われてた私の血管からは、突破口を見つけた血がどぱっと溢れた。
「ちょっと大丈夫!?」
 隣で一緒に作業していた先輩がそんな大きな声を上げたものだから、辺りにいた人たちは一斉に私に駆け寄ってきた。
 軽いパニックに陥った仕事場の人たちは、私の手首から流れる血を見て青ざめるばかりで、私は逆に落ち着いて、無意味に右手で左手首を押さえていた。
 すると、不意に左手首をぎゅっと掴まれた。あ、と思うと、白いタオルが押し当てられていて、そのまま手首を引っ張られた。
 仕事場を出て別の部屋に移された私は、何となく気まずくて俯いていた。
「消毒するからそのままちょっと待っててね」
 彼は私の一応先輩で、それでもあまり話したことはない。話しかけにくい雰囲気を持っている人で、何となく苦手だった。
「まだ血、出てる?」
「あ、はい。少しだけ」
「どれ?」
 消毒液を片手に戻ってきた彼は、手首に押し当てていたタオルを外し、私の手首の傷を見た。とくとくと、未だに傷口から血が出ている。
「綺麗だね」
 突然、彼の低い声がそんな事を言ったので、私はぎょっとして彼を見上げた。
「普通の人って血を怖がるけど、これがないと人って生きていけないからね」
 しみるよ、と言って、彼は私の手首の傷に消毒をし始めた。
「そうですよね…」
「うん。だから、綺麗だと思うよ」
「はあ…」
 私は生返事をしながら、手首に巻かれていく包帯を静かに見つめた。
「リストカットする人って、自分の血を見て生きているって実感するんだって」
「はあ」
「君はとても綺麗な血を流すから、とても綺麗な人だと俺は思うよ」
「…何が言いたいんですか?」
 私は眉間に皺を寄せて彼を見上げた。
「あんまり自分を傷つけないほうが良いと思うよ」
「は?」
「左利きなのに、右手でカッターを使ったのは、最初から左手首を切るつもりだったんでしょ?」
「……」
「もう、右手は切るところがないのかな…」
 すっと冷たい彼の手が私の右手のスーツの裾を捲った。彼の言うとおり、私の右の手首には、無数の傷がある。
「大丈夫だよ、君にはちゃんと綺麗な血が流れているから」
 初めて、彼が笑うのを見た。
 先に行くね、と言う彼の背中を見送って、私は彼に巻いてもらった白い包帯を、飽きることなく見つめていた。







エントリ05  悲劇の先住民コロボックル     邦州 健


今、北海道の先住民と言えば「アイヌ」であると多くの人々が
信じ込んでいます。

しかし、アイヌ文化成立以前に、日本の縄文文化の影響を受けた民族が

存在し、アイヌの手によって民族浄化されてしまったと言う悲劇を

知っている人は多くはありません。

その悲劇の民族はエンチゥと呼ばれ、アイヌの神話ではコロボックルとよばれています。

アイヌの神話によりますと、最初はアイヌとコロボックルは
仲良く暮らしていた事に

なっていますが、ある日、アイヌがコロボックルにいたずらした為に

コロポックル達は姿を消してしまった事になっております。

この「いたずら」とは何を示しているのか、大変興味深い話であります。

アイヌの神話は当然のことながら「アイヌ中心史観」で描かれておりますゆえ、

強姦、虐殺、民族浄化といった言葉は使われず、「いたずら」と言った

軽い表現によって誤魔化されておりますが、その実態とは何だったのか?

神社を作り、日本の縄文文化を引き継いでいた民族が、何者の手によって

歴史から抹殺されたのか?賢明な読者の皆様ならお気づきのことでありましょう。

そう、アイヌです。アイヌこそが日本政府に謝罪や反省や賠償を求めながら、

自らは、先住民を民族浄化した真犯人なのであります。

そもそもアイヌとは人と言う意味であり、アイヌ以外の事は、

人とも思っていなかった証拠であり、人以外の物を浄化するのには

何の躊躇もなかったことでありましょう。

昔、日本では平家に非ずんば人に非ず。と言った時代があったそうですが、

そんな平家をも裸足で逃げ出す様な民俗優越意識がアイヌには存在し、

今現在もシャモ(日本人)憎しによって、彼らから見れば人間以外の存在である日本人を北海道から駆逐しようと画策しておるのです。

もちろん、今現在のアイヌ系の人々の中には数多く、良き日本人として頑張っておる

かたも多くいるのですが、ウタリ協会に集うアイヌ系の人々は、

強固に、自らの利権を生み出す事が仕事となり暗躍している人々が多く

存在しているのです。

しかも、その内部には、アイヌとは関係ないはずの、反日日本人や在日朝鮮人が

存続し、反日活動の道具としてアイヌを利用し、利用されたアイヌと一緒になり猛り狂っているのであります。

帝国主義の時代、文字も持たず、奴隷制度を保っていたアイヌが

近代化し、日本の領土に組み込まれる事は、ロシアの脅威が北から差し迫った

その時代においての北海道においては急務でした。

もうちろん、時代の限界の中ではありましたが日本政府はアイヌに対し出来る限りのことは行い、アイヌの近代化を推し進めたのであります。

ロシアはアイヌを奴隷として売り飛ばし、たばこ等と交換しておりました。

アイヌが日本とロシア、どちらかに所属するしか生き残れなかった

帝国主義の時代、どちらに所属した方が幸せだったのか・・・。

それは歴史が裁く事でありましょう。

日本人は今や同胞となったアイヌの文化には一定の評価をしながらも、

下手な贖罪意識や、変な優越感や差別心を抱くことなく、共に良き日本人として

歩んで行って頂きたいものです。


※作者付記:参考文献 ゴーマニズム宣言NEO2






エントリ06  割れ鍋     Bonz


「え? 旨美、あの池部君と付き合ってんの?」
「えへへ、そうよ」
「だって、超イケメンじゃん? 年末の町内商店街のミスターコンテストでは毎回グランプリ取って、この五年間米を買った事がないっていう」
「そう!」
「そのイケメンっぷりに、あんたが一目会ったその日から片恋の花が咲いて、それ以来ずっと憧れてたっていう」
「そう!」
「でもさ」
「なに」
「あんた、全然身なりに気を使わないじゃない? っていうか、容姿的にチャレンジされているというカテゴリーに入る人間じゃない? その中でも、かなり最低ランクに入るぐらいチャレンジされてるじゃない? こどもチャレンジどころか、大人チャレンジ、いや、熟年チャレンジぐらいじゃない? 美しくないとか言うよりも、不快感をもたらしてしまう感じじゃない?」
「殺すぞ、エヘッ!」
「いや、まあ、でも、そういう事じゃない? あの池部君が、何だってよりにもよってあんたなんかを?」
「まー、あたしも自分の不細工加減は知ってるよ。家の鏡は全部叩き割ってるし、ガラスはみんな磨りガラスだし、鏡面加工のナベはヤスリで荒らしてるし、アルバムやビデオの類は親が十二年前の春の深夜に狂ったように笑いながら風呂場で焼却処分してたし」
「でしょ? そのあんたにどうして?」
「実際、聞いてみたんだけどね、池部君は、あたしの内面に惹かれたんだって。明るいとことか、ご飯おいしそうに食べるとことか、雨に濡れた子犬を拾ってるところとか、おじいさんに座席を譲ってるとことか、車に轢かれそうになった子供を助けて入院するとことか、そういうの」
「へぇ……まあ、なんだ、幸せになんなよ?」
「ははっ、もう充分幸せだよ!」

「――別れた?」
「うん」
「やっぱり――あ、いや、そうじゃないけど、うん、まあ、そりゃ、うん、しかたないよ、池部君もの凄いもてるしさ」
「え? あたしがフッたんだよ」
「……はぁ!? なんで!」
「この前、不良に絡まれた時、池部君が助けてくれたって話、したじゃない?」
「したわよ」
「あの時、池部君殴られて鼻が曲がっちゃってね。イケメン度が当社比二パーセントぐらい下がっちゃったのよ」
「なんじゃ、その理由! あんたの判断基準、顔だけなんか!」
「……最初から、そう言ってたじゃない。池部君はあたしの内面に、あたしは池部君の外面に惹かれたのよ」
「なんか理屈が通ってる気がするけど、納得いかないから、もの凄い納得いかないから!」