第18回タイマンバトル、開票開始――








感想一覧(順不同)


※作者希望により削除

 上手いのはMAOさん。
 字数が合ってるのもMAOさん。
 読ませるのもMAOさん。
 でも、悪魔との邂逅というネタは有り触れすぎで、よく分からん世界であるジャグリングのインパクトに負ける。

 ただ、KAZUさんの話、読みにくい。
 それは、キャラクタの名前を片仮名表記にしたからかも知れないし、時間軸が右往左往しているからかも知れないし、ただ単に言葉の選び方が難しいだけかも知れないけど。

MAO

「俗っぽい川上弘美」または「あくの強い越冬こあらさん」を彷佛と
させる作品。
8000文字の長さを全く感じさせない面白さに脱帽です。
……ところどころに、どっかで読んだことのある文章が混ざっていた
のも御愛嬌(笑)
現在のQBOOKSの中では、一番の実力者でありましょう。間違い無い!

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「処理場のパンドラ」一回目読んだ時はかなりつらかった。様々な要素が脈絡なく、それこそ処理場のゴミのように投げ出された様はリアルかもしれないけど、読者は時間を割いてまで敢えて日々の確認なんかしたくないのだ。しかし、悪魔さんって主人公自身、ひょっとすると二役演じてるのかなあと思い始めると少し分かってきたようにも感じた。題名に書いてあるくらいだから、主人公はパンドラなんだろう。ちなみにパンドラは美女だ。それはどうでもいいが、彼女は自分に関わる人間はみんな不幸になるという強迫的観念にあるようだ。そんな意識を怪しげな悪魔という形で切り離したせいか、残った人格は妙に楽観的だ。それでも悪魔は時々戻ってくる。そんな見方でよいかどうか知らないけれど。それにしてもこの悪魔はいい加減な奴で面白い。

「球極道」はストレートだ。場面が前後する部分はやはり読みにくいが(過去に戻る時はそれがいつなのか冒頭で分かるといいが、やり過ぎるとドキュメンタリーみたくなっちゃうんだろう)、方向は明らかなので主人公の演技に期待が膨らむ。てゆーか、じらさずにさっさと見せろよって感じ。彼の演技への興味が高まるにつれ、だんだん前置きがどうでも良くなってくるのだ。困った。しかしラスト、演技の表現は期待以上、言葉の力を感じさせるものだった。どうも作者はこれが書きたかっただけじゃないのかって気もするが、わりと淡々と進行するそれまでの表現との対比は鮮やかである。

 さてどっちかに投票しなければならないのだけど、何回も読み返してあーだこーだと楽しんだのは実のところ「処理場のパンドラ」である。しかし私がアホなせいか一本の筋が見えない。色々な仕掛けを置いといて読者がどれかにはまれば良かんべという感があって、いや、私がアホなせいなんだろうとは思うんだけれど。
「球極道」は「パンドラ」に比べれば下手で、読みにくい。しかしそれも演出ではないかと思うくらいラストは力強く鮮やかだ。たぶん演出なんかじゃないと思うけど。
 結局作品なんて作者を離れたとたん、読者しだいでどうにでも変性するんやねえ。そして私の中に残った分で言えば「球極道」の方が良かったかなあということになった。メンゴ! アディオス・アミーゴ!

MAO

ネタや修飾でごまかしの利かない長さ、8000字。面白かったです。
で、MAOさんに投票。
視点・語りの巧みさは身に沁みたものを感じます。けれど最後の三行、どうにか変換できなかったものか。

KAZUさんのは、スポーツ根性がよく分からんもので、始め「ううん」と思ってました。が、流れがサクッと速くてわりと気持ちいい感じ。けれどもう一歩のところで、「おっ」って食い入ってくるような表現をとめているような気も。

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どちらの作品からも鬼気迫る意気込みを感じましたが、
文句なしにKAZUさんの方が面白かったです。

MAOさんの既視感ありありの表現方法は、
(おそらく意図してそうしているのでしょうが)
内輪受けの域を出ていないような気がして
私にはちと物足りなかったのでした。

(カピバラ)

MAO

 人間存在の不幸をベースにした純文学作品。こういった作品はネット上では少ないのではないでしょうか。私はネット小説の不満をそこに感じてきましたので、こういった小説を読めることが嬉しくてなりません。
 三、四箇所変換ミスが目につきましたが、これほど中身の濃い作品なのですから、もう少し校正の時間があったらと思います。

※作者希望により削除

「球極道」の感想:
 どこがどう、と具体的に言えませんが、よかったです。発熱時のゾクゾク感、あの熱くて寒くて眩暈がして震えが止まらない状態は、思えば舞台袖で出番を待つときの緊張にとてもよく似ているなぁ、と思ったり。私は大道芸の技に非常に簡単に魅了されるタイプで、技を会得している方を尊敬しているので、それに情熱を燃やす人々の話は面白かったです。文章も読みやすくて(硬めの文体が青春の血の濃さをほどよく中和して、話に合っていたと思います)。終わり方は唐突だと感じましたが、それまでは、大いに楽しませてもらいました。……でも、タイトルは、浮いているような気がします。
「処理場のパンドラ」の感想:
 とても巧い、とは思ったのですが、波に乗りきれぬまま読了してしまいました。創作に対する意気込みや、勢いや、慣れは強く感じるのです。作者のなかではおそらく、紡いだ言葉が音楽のようにうねり、飛びはね、鳴り響いているのだろうとも思うのです。でも私は、読んでいてそのリズムを共有できませんでした。ついていけなかった。私の読んで咀嚼する速度と話の進む速度がどうやっても合わない、私の求める情報量と提示されている情報量が違いすぎる、と感じました。その結果、ストーリーと文章技術、どちらも十分に味わうことができなくて、とても疲れてしまったのです。……自分で文字を読むのではなく、噺家や弁士の語りで聴いたら、もっと面白く感じたかもしれない。そう思います。

 自分の好みに頼って、インスピレーションで投票する、と決めているので、今回はこちらに。
 タイマンに投票するのは精神を消耗します。自分は文学賞の選考委員や新人発掘のためのエージェントにはなれそうもない、とつくづく思いました。

 お二人とも、お疲れさまでした。

MAO

 今回は、激戦だったように思う。どちらにするか迷ったけれど、MAOさんの「処理場のパンドラ」に一票。
 文章に関しては両者トントン。非現実の世界をリアルに現出させるMAOさんの多彩な文体は見事。そして何よりリズムがいい。一方でKAZUさんの理系ならではの緻密な描写。ジャグリングを体験したことのない人間でも感覚がつかめる、というのがすごい。
 決め手となったのはテーマ。結局好みでしかないのだが。MAO作品のどろどろした感じ、良かった。KAZU作品のラスト、パッと広がる感じもいいのだけれど。本当に、今回は僅差だった。お疲れ様でした。

※作者希望により削除

お題の扱い方が重要だと思う。MAOさんの作品からは「豚生姜焼き」「異常な犬」「親不孝」だからこその部分が見られなかった。それに、数ある諍いの例として、親不孝と夫婦喧嘩では幅が無さすぎるんじゃないだろうか。
KAZUは、「異常な犬」を捻ってあることが良かったし、他の二つは自然に溶け込んでいた。豚ショウガ焼きは、栄養もあるけど、安いんだろうな。
ってことでKAZUに一票。
キャラクターの厚みとか、最初と最後の処理なんかも、KAZUのほうが好ましかった、かも。文字数は、やや少なめという程度だから気にしない。
(日向さち)

MAO

日常の中に蠢く非日常。
幸福と不幸。
愛欲と嫉妬。
彼女と悪魔。

人間の絆、繋がりといった重いテーマを描きながら、悪魔さんをうまく語り手として置く事により、ファンタジーとしても読むことができ、素直に楽しめる作品に仕上がっているのではないでしょうか。

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ジャグリングのことなんか、俺、何にも知らないけど、これを読むと、へえ、そんなもんなんだなあと思えた。で、完成度はともかく、物語を丁寧にクライマックスへと持っていく作者の「手付き」に真面目さを感じた。この作品はそこに好感が持てた。まあ、「ヤマネと山根」問題とか、「ヨイチって誰?」問題とかあるけど、対戦相手のMAOさんの作品の方にも漢字の誤用(漱石ばりにわざと違う漢字を使ったのか?)が多くて(着て、猟師、挙げて)、その点では、どっちもどっちだなあと言うことで。
と言うことで、何?
いや、だから、Kazu・BBさんの「球極道」の方に1票。

(アナトー /Avril Lavigneを聴きながら)

MAO

テーマをさりげなく織り込んでいて、8000字ぴったりで終わったところ。そして、物語自体が好きになれたので、こっちに投票させていただきました。

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読み始めは題材が何なのか全くわからず面食らいましたが、すぐに引き込まれてしまった。私にとって未知の世界の事なのに、読んでいて網膜の裏にありありと光景が描き出される。終始途切れない緊張感。脱字も字数の不足も全く気にならなかった。歯を食いしばるように、緊張しながら読ませて頂きました。とても面白かったです。
AOさんはきっとお得意であられよう青林堂的な世界観の、書き慣れた印象の一編で、本当に上手だし非常に読みやすかったのですが、これは文字で読まなくてもいいかな、と思ってしまった。マンガ的で。マンガ的が悪いわけではないですが、今回はそんな風に感じてしまいました。

と言う事で今回はKazu・BBさんに迷わず一票を捧げたいと思います。

MAO

「生きかえらないから、死んだんでしょう?」
「やっぱり業なんですよ。私も自分自身、悪魔だという自覚があるからこういうことやってます。」
「因果の渦の中で生きられるなんて。きっと退屈しないでしょうねえ」
今回の悪魔はMAOさん作品の原種のような感じがしました。
(そこまで全部読み込んでいるわけではないですが ^^;)
”業”によって起きる”諍い”がまわす”因果”。
そんなベース音の体現だな、と。
主人公のテンパりながらも妙に落ち着いた(冷めた、醒めた?)感じは変わらず。
今回は自分もそれをやってみたのですが(いえ、相手がMAOさんだからではなく)、
……うーん、やっぱりどっか違うな。
>一刻も早く記憶を垂れ流そうと懸命に鼻をかんでいる。
という描写が好きでした。コロイド万歳!!
あと、全体的に食べ物の描写が多かったのも、流れに合い、自分の好みでした。

(KAZU.BB)

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 Kazu.BB君おつかれさまでした。御投票いただいた皆様、有難うございました。8000字、長かったでしょう。御退屈様だったでしょうか。でも、途中で投げ棄てられないものを書こうとしていたのは本当です。嘘じゃありません、って、他の感想票とともに並ぶことを思うと妙なものなのですが。ともあれ、お読みいただいた方、ありがとうございました。読んだけど票に値しないと思って無視された方、あーたがたも正直な人であたしゃ大好きです。匿名で「くだらない」なんて書かれるより余っ程いい。大人です。
 さて、と。
 Kazu君、おいらはKazu君がジャグリングやってるの知ってるからな、おお、直球勝負できた! という感動があった。こういう直球を惜しげもなく投げられる力を非常にうらやましく思うし、蹴ったらでてくる缶コーヒーも面白いし、ジコチュー、ゲージュツ、なんて表記にも意図が見える。言い回しもそれなりにはまっていて、狙ったのであろうところについては実に小気味がいい。
 ただ、これはタイマン云々を考えないで、の話であるが、ただ、その言い回し自体が浮いてしまっているところが、過分にある(人のコトは言えないが)。この言い回しが面白そうだからと云って、メクラメッポウに遣ってしまうと、全体の流れがちぐはぐな印象になってしまいがち。あと、面白い設定の一方では、別の面から見たときの違和感に気づかにゃならんだろうな、とも思う。蹴ったら出てくる自動販売機だって、オーナーがおかしいな、と思うだろうし(缶の減る量より100円玉の数が少なかったら不審だろう)ジャグリング自体も、自分の営みとは別に、読者として、どうしたらとっつきやすいかなどの改良点は、まだまだあるような気がする。
 より一層の鍛錬と、そしていま少し、視点の余裕を求む。
……って、これだけ書いていて小生の圧敗だとしたら、すごくかっこ悪いよなー。いや、ネタとしては面白いのだが。はぁドキドキ。(M)



投票結果!!





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