「処理場のパンドラ」一回目読んだ時はかなりつらかった。様々な要素が脈絡なく、それこそ処理場のゴミのように投げ出された様はリアルかもしれないけど、読者は時間を割いてまで敢えて日々の確認なんかしたくないのだ。しかし、悪魔さんって主人公自身、ひょっとすると二役演じてるのかなあと思い始めると少し分かってきたようにも感じた。題名に書いてあるくらいだから、主人公はパンドラなんだろう。ちなみにパンドラは美女だ。それはどうでもいいが、彼女は自分に関わる人間はみんな不幸になるという強迫的観念にあるようだ。そんな意識を怪しげな悪魔という形で切り離したせいか、残った人格は妙に楽観的だ。それでも悪魔は時々戻ってくる。そんな見方でよいかどうか知らないけれど。それにしてもこの悪魔はいい加減な奴で面白い。
「球極道」はストレートだ。場面が前後する部分はやはり読みにくいが(過去に戻る時はそれがいつなのか冒頭で分かるといいが、やり過ぎるとドキュメンタリーみたくなっちゃうんだろう)、方向は明らかなので主人公の演技に期待が膨らむ。てゆーか、じらさずにさっさと見せろよって感じ。彼の演技への興味が高まるにつれ、だんだん前置きがどうでも良くなってくるのだ。困った。しかしラスト、演技の表現は期待以上、言葉の力を感じさせるものだった。どうも作者はこれが書きたかっただけじゃないのかって気もするが、わりと淡々と進行するそれまでの表現との対比は鮮やかである。
さてどっちかに投票しなければならないのだけど、何回も読み返してあーだこーだと楽しんだのは実のところ「処理場のパンドラ」である。しかし私がアホなせいか一本の筋が見えない。色々な仕掛けを置いといて読者がどれかにはまれば良かんべという感があって、いや、私がアホなせいなんだろうとは思うんだけれど。 「球極道」は「パンドラ」に比べれば下手で、読みにくい。しかしそれも演出ではないかと思うくらいラストは力強く鮮やかだ。たぶん演出なんかじゃないと思うけど。 結局作品なんて作者を離れたとたん、読者しだいでどうにでも変性するんやねえ。そして私の中に残った分で言えば「球極道」の方が良かったかなあということになった。メンゴ! アディオス・アミーゴ!
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