poem
黒ちゃん

発端

 やっとみつけた友達は、腐っていた。
 数日前まで、一緒に遊んでいたトモダチが。
 これで何人目だろう。
 僕はただ見てるだけ。
 僕はなにも出来ない。
 できるわけない。力がないんだから。
 僕に出来るのは、恨みを内に溜めて、あふれた想いを涙に変えることだけ。
 力がほしい。
 英雄になりたいわけじゃない。世界を変えられるとも思っていない。
 ただ、友達を……家族を喪った痛みを、奴らにも味あわせたい。
 その為に僕は力を手に入れてみせる。

 迫るビルを前に俺は満足していた。
 力は与えられた。
 一瞬だけの力。使えばすべてを巻き込んで、焔と共に消えてゆく。
 俺の魂は、きっとみんなの元にはいけないだろう。
 永遠に消えぬ汚名を与えられるだろう。
 英雄という汚名を。テロリストという名誉を。
 あと、数秒。
 与えられたこの時間。だれの為に祈ればいいのか。
 親? 友? 自分? それとも一緒に燃えてゆく、不幸な同行者たち?
 誰でもいい。自己満足だと知りつつも……俺は幸福だ。
 それだけで。




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