第2回3000字小説バトル結果
作品受け付け/1999年10月10日〜11月28日
作品発表/12月1日〜
人気投票受け付け/12月1日〜12月20日
結果発表/12月25日
第2回3000字バトルチャンピオンは
鮭二さん作『年の瀬』に決定です。
鮭二さん、おめでとうございます!!
●年の瀬(鮭二)
- 気持ちよく読めた。煙草の芸の使い方もうまい。
話の傾向としては『エンドレス・イブ』や『狼娘と微熱少年』の方が好きだけど、どちらももう一歩だった。
完成度の点で『年の瀬』に一票。
- 初詣の情景や子供の頃の「かごめかごめ」等によって、主人公にぐぐっと感情移入が出来て、とても気持ち良く読み進む事が出来ました。
ムツキさんの所作や発言もとてもかわいらしく魅力的に書かれていて、好感が持てました。
- 鮭二さんの作品は基本的に好きなんですが、今回の『年の瀬』は前作の『ハンガーマン』よりさらに素晴らしかったと思います。前作の『ハンガーマン』はどうしてもストーリー自体のユーモア性が目立ってしまい、鮭二さん独特のなんというか絶妙の文体みたいなものが隠されてしまっていたように思います。それに比べこの『年の瀬』は、ストーリー自体がきわめて日常的なために文体や表現の妙が十二分に生かされていたのではないかと思います。とりわけ、朝に鳴く鳥の「チチチチ」という鳴き声。これは「チチチチチ」では長すぎで「チチチ」では短すぎます。ここをなにげなく四回にしてしまう、そんなところに鮭二さんの奥深い才能を感じました。ちなみにホームページのほうの長編も、素晴らしかったです。字数制限のない長編になると、いっそう技巧の上手さを感じました。
●音痴が街にやってくる(逢澤透明)
- ほのぼのとして読んでて一番楽しめた。
- 今回楽しめたのは、『ガソリンスタンド』『エンドレス・イブ』『年の瀬』『音痴が街にやってくる』の4点です。それぞれ、ほのぼのとした雰囲気(エンドレス・イブ以外)の話でとても好感が持てました。もちろん、ほのぼの作品じゃなければイケナイ訳じゃありませんが、私はそういう作品が好きですから、仕方がありません。鮭二さんの作品も良かったんですが、前回も受賞してるんで、どうしようか悩んだ挙句『音痴が街にやってくる』にします。
●結婚の理由(わけ)(岡嶋一人)
- 目を引かれたのは、『結婚の理由(わけ)』と『さるかにの水』でした。『結婚の理由(わけ)』は、ひょっとしたら自分の友人も、そんな目で自分を見ているのでは……などと想像の広がる話でした。
ただ、何の取り柄もない「私」氏が、なぜそう易々と浮気ができたのか、という点が引っかかります。むしろ、浮気相手との出会いの描写に文字数を割いた方が良かったのではないでしょうか。
『さるかにの水』はタイトル、冒頭の掴みともに意表を突かれた感じで、とても面白いです。
ただ、人間ではなく動物の話になっているので、今一分かりづらく、感情移入できませんでした。さるかにの水、という小道具は充分魅力的なので、普通に人間の話にしてもいいのではないでしょうか?
それと何本か、一人称と三人称をごっちゃにしている作品が見受けられました。段落ごとにでも統一性を持たせた方がいいと思います。
●月・魂( 厚篠孝介)
- 風景描写が巧みだったのか、寺や月の美しさや静けさが読後の余韻として心地よく胸に残りました。殆どの作品がアイデア勝負のような傾向にある中で、この作品は特に、読ませる作品だったと思います。
●四次元の扉(夏蜜柑)
●ロマネスクA(伊藤右京)
- 全体の完成度はそれほど高いわけではない(特に前半)のですが、後半の「彼」独白は思わず読んでいることを忘れるほど引き込まれました。
●狼娘と微熱少年(越冬こあら)
- それほどインパクトのある作品というわけではないと思いますが、抵抗なくすんなり読めて楽しめました。
ただ、実は今回の参加作品は全体的に完成度は高くなかったと思います。
本来なら、チャンピオン該当作品はないのではないかと思ったのですが、最も楽しめた作品として、やはり投票することにしました。
●ガソリンスタンド(林忠由)
- 全体的に好感の持てる作品でした。主人公の若者像の描き方が爽やかだと思います。「若者」ではなく「若者像」がきちんと描かれています。作者と主人公の関係がべったりしていないのです。一度突き放しているから作中人物としての「像」が浮かび上がるのだと思います。構成も素直です。ありきたりと言ってしまえばそれまでですが、私はその素直さに好感を持ちました。機械関係の用語をもうすこし分かりやすい言葉にしても良いのではないでしょうか。
感想票をお寄せいただいた皆様と参加作者の方々へ。
感想票をお寄せいただく方々にとって全作品読破は大変な作業です。今回はQの泣きにお応えいただき心より感謝申しあげます。また参加作者への投票の義務化は望みません。今後はぜひ積極的な全員投票参加を心よりお願い申しあげます。