第7回3000字小説バトル結果
訂正。すみません。計算間違いしました。申し訳ありませんでした。
『書き置き21番』しょーじさん作は3票でした。
今回は『茶の湯はなぐさみに候』厚篠孝介さんと同時チャンピオンとさせていただきます。
しょーじさん作『書き置き21番』と厚篠孝介さん作『茶の湯はなぐさみに候』が
同時チャンピオンの座を獲得しました。
しょーじさん、厚篠孝介さん、おめでとうございます。そして、ごめんなさい。
●書き置き21番(しょーじ)
- 意外性とかはないんだけど、言いたいことはよくわかるし何を狙ってるのかもわかりやすい。笑いの持っていき方がいやみじゃなくほほえましい。何より、他のと違う個性がある。シンプルでよいと思います。短いなりに読める。
- この作品が一番ぼくの好みでした。
ユーモアがあって、とにかく楽しく読めました。
- 『書き置き21番』、笑えました。
難を言えば、ラスト近くの実力行使の場面ですが――少々読後感に陰が落ちますね。まあそれも狙いなのかも知れませんが。
●茶の湯はなぐさみに候(厚篠孝介)
- 初めて、感想を書かせていただきます。投稿も初めてでしたので、私の作品が人様にどう評価されるのか、とても楽しみにしています。独り善がりな感想ではありますが、読んでやってください。
Entry 1● 『朝』
自分の作品の感想を書くと、どうしても言い訳みたいになるのでやめておきます。情けない話ではありますが、ご容赦を。
Entry 2●『冷たい雨』
リズムやテンポはいいと思うのですが、抗争の理由にリアリティを感じれず、残念に思いました。小説を書く以上、嘘は必要であるとは思うのですが、リアリティの無い嘘はスパイスにもなりません。もう少し本物らしい設定のほうがよかったのではないかと思います。
Entry3●『my home』
ネタとして、使い古されたものであると思います。オチもありきたりですし。もう少し、『なぜ殺されたのか』『どうして自分を確認できなかったのか』などを膨らませると、面白くなったと思います。作者の考えるテーマとは変わってしまうかもしれませんが。
Entry4●『気分はe滅入る』
ちょっと、私には理解できない類の作品でした。村上春樹や、映画『ピクニック』のような世界観なのでしょうか。もしそうだとすれば、あまりに陳腐な技術と表現力であるように感じました。
Entry5●『そしてわたしと自動販売機は一つになったのだ』
世界観、テーマがつかみにくい作品でした。読めてしまえるオチよりはいいのかもしれませんが、どうなるのだろうかという期待を最後に裏切られた感があって、とても残念です。
Entry6●『鳩』
話の内容はとてもキレイなのですが、登場人物のからみがどこか不自然であるように感じました。妹の子供っぽさを出すにしても、もう少しやり方があったように思います。わざとらしさが無くなれば、もう少し読みやすくなると思います。
Entry7●『踊り場』
テーマ、ネタ共に面白いのですが、想像から現実に戻ったあたりがあいまいで残念に思えました。使われた小道具も、どれが何を象徴しているものなのか、作者にしかわからないのではないでしょうか。
Entry8●『書き置き21番』
テンポよく、最後まで飽きる事無く読めました。キャラクタの設定もしっかりしており、文句の無い作品であったように思います。書置きという形を取らなければ、他のオチも用意できたように思えますが、これはこれで充分に楽しいものでした。
Entry9●『美談』
つかみが無理やりで、途中も少し中だるみがありましたが、オチは私好みでとてもよかったです。実際ありそうだし。途中、もうひとつくらいイベントがあれば中だるみしなかったのではないでしょうか。3000字にまとめるのは難しそうですが。
Entry10●『ファールから』
題となっている台詞を使いたいがために作った作品であるように思えました。内容も薄く、1000字でも充分書ききれたのではないでしょうか。逆に3000字で書くのであれば、もう少し内容を膨らませる必要があったと思います。
Entry11●『クローンのある風景』
クローンを作るための条件の部分、要らなかったのではないでしょうか。昔の恋人がクローンを作るための理由として使うのであれば、他のわかりやすい理由も作れたはずです。世界観を出すにはいいと思うのですが、少しわかりにくいようにも思えます。ショートショートならば、もう少し軽く読めるものの方が好ましいと思います。
Entry 12●『ハートブレイク』
テーマはいいのですが、どうにも読後感がよくありません。このテーマにこの結末はわからないでもないのですが、私としては、もう少し救われる結末を望みます。読んでいてしんどいので。
Entry13●『ずぼらな死体』
作品にリアリティがあり、オチも利いていて、とても楽しく読めました。3000字のミステリーとして、とても完成度の高いものだと思います。
Entry14●『苦虫』
起、承と面白い流れで来たのに、転で台無しになってしまったように思います。確かに、書いている本人にして見れば面白いのでしょうが…。もう少し、読み手のことも考えたほうがいいのではないでしょうか。
Entry15●『お泊まり』
だらだらと最後まで読んでしまう、不思議な作品でした。書いてあることも面白いし、テンポも悪くない。でも、それだけですね。オチに至っては、なんの意味の感じれない。ただ、面白かったです。小説というよりはエッセーに近いような気もしました。
Entry16●『茶の湯はなぐさみに候』
読み応えのある時代小説でした。読みやすく、気持ちのいい読後感がある。時代小説は悪くすれば知識のひけらかしのようになるものも多いのですが、この作品は土台がしっかりしていてとてもよかったです。
- 他の作品が低調だった、ということもあるが、しっかりとした構成で読みごたえがあったので、この作品を推薦する。
加えて松永久秀の話が珍しかったし。
- 自分の事はガンガンに棚上げしておいて最後は爆死(!)する主人公が個人的にツボです。文体も、かなりの前のめりっぷりで主人公の人柄が想像できて良いです。ただ、その前のめりっぷりがなんていうかかなりのスピード違反、っていうかもうちょっとゆるいカーブなんて投げてみると効果的じゃあ無いのかな、なんて個人的に思ってみたり。
●朝(河野成年)
- 苦い。けど、だから面白い。
駅のトイレはかなり汚く臭いから、小学校の頃は
「ふん、あんなとこでうんちはしないぜ」
なんて言ってたけど、どっこい今は長井氏の気持ちが分かってしまう。(長井氏のような生活をしているわけではない、念のため)
いろんな意味で深読みもでき面白いです。
でもこういうの女性には分かりづらいんだろうな。すげ−分かられてもやだけど。
- 細かい点を論えばいろいろ欠陥はあると思うが、物語の「転がり方」にセンスがある。いい意味での突き放しがあるのだ。読み手との共同作業が可能な範囲での突き放し方。前半のベタな展開はほとんどリアリティを感じさせないのだが、後半の転がり方がそれを補っていて、結果的には読後感の濃い不条理劇に仕上がっている。
●そしてわたしと自動販売機は一つになったのだ(百内亜津治)
- 迫力のある世界を感じました。ラストは有名な「未知との遭遇」のシーンを彷佛とさせる感動的なものでした。文章も説得力に満ちています。随所に笑える工夫もちりばめられていて、丁寧に描かれた作品だと思いました。
- 昭和初期の頃のおどろおどろしい推理小説の世界を思い出しました。異常心理の主人公の手記のようで、面白かったです。
●19(nineteen)(川辻晶美)
- 私に合うというか、この作者はどの作品も上手いですね。場面が目に浮かんできます。
●鳩(さとう啓介)
- この作者の一貫した作風が好きです。20回1000文字バトルにも『落葉坂』という作品を投稿されているようですが、浪漫派的な涼風を感じます。今回の作品のテーマは妹なのでしょうが、静謐なセピアカラーの一大ノスタルジーの時空の中で意を込めて書ききっています。血の繋がり、家族愛、兄妹愛、戻れない少年期への憧憬淡々とした人生観、兄独自の死生観、忘却のせつなさ、ある意味での弧絶、無償の愛への懐古など感じ入りました。
句読点、段落、誤字当て字など基本はもちろん守る必要性がありますが、そのような読み方、批評傾向よりももっと大切なものがあるのではないかと、この作品を読んで思いました。読者の心に入り込み、作り手の意図するなにかが読み手に響くこと、読後に何らかの余韻を残すこともこの作品は澄んだ声で静かに伝えている様に思えます。
●クローンのある風景(羽那沖権八)
- 色々と考えさせてくれる作品でした。
文章も整っていて読みやすかった。
結末は思ったとおりでしたが、無理矢理に捩じ曲げるよりはあの方がすんなりしてていいです。
発想に振り回されて消化しきっていない作品が多いうちでこの作品が最も読んで楽しい作品でした。