←前 次→

第16回中高生1000字小説バトル Entry4

猫よりもこの害虫を!!

 この世で、一番嫌いなものは虫である。と、香奈はそう心の中で叫びきった。
 この話は、香奈がある日一人でお留守番していたことである。彼女は、夜一人でテレビを見ていた。親は、まだ帰っていない。
 一緒に住んでいる、猫も一緒にお留守番していたはずなのに姿が見えない。香奈はそんな事は余り気にしていなかったが、ゴトゴトっと言う音に気がついた。
「?」
 香奈は、玄関の方からの音に疑問を抱き、『泥棒か?』などと恐る恐る玄関の方に歩み寄って行った。
「リリ?」
 猫のリリが、暴れて見えるのは確かだ。けれど、薄暗くて何に構っているのかがはっきり見えない。なので、近くにある電灯のスイッチをいれて辺りが鮮明になったがそれでもはっきり見えない。
 恐る恐る、歩み寄ってリリが暴れている理由を考えて見る。
 すると、そこには『泥棒』よりももっと恐ろしいものがいた。
「むっ虫?!」
 香奈は、リリから後ず去った。そこには、黒くうねうねとした物体がリリにとって弄ばれていた。香奈は、はしゃいで楽しそうなリリの事を見下ろして思った。
『―――こいつ、そとの野良猫が怖いから滅多に外に出ないぐらいの臆病者のクセに、なんでそんなものいたぶってんだ?!』
 と、そして香奈は次の瞬間見てはいけないものを見てしまった。
「ニャ―!!」
 リリは、香奈の足元に近づきその黒い物体を持ってきたのだ!もちろんその黒い物体も生きたいと願うものだから、必死に逃げようとする。そして香奈のいる方向へ飛んだのだ。
 香奈は、その黒い物体の起こした行動によって行きついたその黒い物体の名前を『○キブリ』と言う名に改めるが、その○キブリが自分の足元にいることを確認すると、思考が停止した。
 香奈の町では、野良猫の増殖が問題となっているために、野良猫を捕獲して保健所に持っていくという動物保護団体が聞いたら激怒しそうな事を実行している。
 が、猫好きの香奈にとってはこう思ったことだろう。
『猫を撃退するぐらいだったら、この忌まわしき虫を排除しろ!!!』
 と心の中で激しく思ったに違いない。
 涙も出ないぐらい、怖いからなおの事。思考が回復した後香奈が殺虫剤を探しに行ったのは言うまでもない。
 そして、彼女の嫌いなものに虫がランクアップしたのは後の話のこと。

←前 次→