第1回3000字小説バトル結果

第1回3000字小説感想票
作品受け付け───1999年8月10日〜9月30日
作品発表─────10月2日〜
人気投票受け付け─10月2日〜20日迄
結果発表─────10月23日

●ハンガーマン（鮭二）

• じろうさん作『行列の出来る店』のタイトルの付け方と、「昆虫に限る」という展開に高度なセンスを感じて、とどちらにしようかだいぶ迷いました。ハンガーマンという適度の風刺性と悲しい滑稽さを持つ架空の職業を創造された力と、ハンガーマンに現実味を与えた表現力に脱帽しました。ドラマとしてもしっかり構築されていると思いました。
• わかりやすい作品。小説の中に入り込める。すんなりと楽しめた。文句なく一番でしょう。
• 他の作品に比べ発想がユニークでしたので、この作品を推します。
• 読みながら、モノクロのアメリカ映画の映像が瞼に浮かんできました。「第三の男」や「北北東に進路をとれ」とか「カサブランカ」など。ハンフリー・ボガードに主役を演じて欲しいな、そう思えてくるような格好良さに満ちていると思います。設定も展開も。ハードボイルドとユーモアがうまく折り合っています。結末もあっさりしていて良いですね。若干、構成の面で、流れに円滑さを欠いているのが気になりましたが、面白かった。惜しかったのはpavaneさんの『街灯の下』。構成もしっかりしているし、文章もとても丁寧で読みやすかったのですが、描写が浅かったように思えました。長編や中編のイントロダクションとしては適しているかもしれません。が、3000字でどうかと訊かれたら、次点まで。

●Blue Pain（ヒロト）

• 暖かさと、切なさ？空しさ？がさりげなく感じられて好感がもてました。しかし、いろんな設定、舞台をお持ちですね。すごいです。
• スマートな『ハンガーマン』と迷いました。どちらもそれぞれの持ち味があってよかったと思います。ただ推薦作品の方が3000字だからこそ書ける感情の揺れをテーマにしているようなので、第1回のチャンピオンには相応しいような気がしました。

●街灯の下（pavane）

• 冒頭からの探偵事務所への場面展開には舌を巻かれました。文章も表現も構成もうまいです。というわけで一票としました。ただ、期待させた割に後半結末にかけてが納得の行くものではありませんでした。精神科というものを生かし切れていない、あるいは精神科というものに頼らない結末の方がよかったような気がします。字数制限で難しいかも知れませんが、探偵事務所よりも家族３人についての記述がもっと必要だったのではないでしょうか。

●ノイズはいらない（君島恒星）

• この作品は「僕」という一人称で淡々と語られるので読みやすく、ＢＧＭに静かに「カルミナ・ブラーナ」が流れている錯覚を覚える。（その曲自体、君島さんの創作なのか実際ある曲なのか知らないのだけど）最後に待ち受けている結末も、また静かで淡々としていて読んでいて大変「心地よかった」ので、この作品に一票。

●軽い死、重い自由（永井真咲）

• さっぱりしててよかった。

●扇風機（越冬こあら）

• 自作を除く15作品について、何度か読み返しました。その中で、ヒロトさんの『BluePain』と越冬こあらさんの『扇風機』が最後まで印象に残りました。2つの作品を比べると、描写のうまさ、的確さ、構成の美しさなど作品の完成度は『Blue Pain』が上回っている感じがしました。その一方で『扇風機』には、この作者しか持ち得ない感覚、オリジナリティーがあるように思います。２票投じられるなら、両作品を推薦作としたいところですが、そのオリジナルな感覚を書き続けて欲しいという願いを込めて、『扇風機』に１票を投じます。