第18回1000字小説バトル結果
第18回チャンピオンは一之江さん作『蝉』に決定です。
さらに一之江さんはこれにてグランドチャンピオンとなられました。
一之江さんおめでとうございます。
●蝉(一之江)
- 30年来の友人が生まれ育った土地に、「蝉ちん野郎」という言葉があるそうだ。例えば祝い事のあった家のドアを無闇に叩き、金のどんぐり一升をせがむ者は「蝉ちん野郎」と呼ばれる。「えへっ、じつにどうもおめでたいことで。金のどんぐり一升よこせ」「この蝉ちん野郎! とっととうせな!」といった按配である。ひょっとするとこの作者は、冬の寒い夜、潰した銀杏を鼻に詰めて暖をとるという、あの土地の出身者ではないだろうか。
- 今回は小粒な感じの作品が多かったように思うが、この作者の作品は、毎回感心してしまう。動物が出て来たり食べ物だったりする相手が楽しい。出来れば他の人の作品を推薦したいのだが、今回はこれといって面白い作品に出会えなかったので、大笑いしてしまったこの作品を推薦します。
- ぐいぐいと読めてしまった、「蝉」に一票。さすがです。
- 男なんて女にとってはこんなものかもしれない。いずれ萎んで、抜け殻だけが残って、振りかけみたいな粉になって、ふっと吹けば四散消滅。そんな男の泣き言に騙された振りして、ころりころりと掌で男を転がす女は、やっぱりいいよなあ。と思うのです。
●知らないあいだに、さようなら(小沢 純)
- 特に目新しい題材ではないが、それだけに状況や心理描写が丁寧に表された作品に好感がもてる。
- いろいろあるのが人生。作者の体験かしら?
- ありそうな 出来事で 悲しくなりました。
●missing(更羽)
- 更羽さんの『missing』を推します。感傷的なストーリーを綴る、抑えた表現が好ましく感じられました。もう一つ候補に残したのは、実に鏡像のような一之江さんの『蝉』でした。次点というか、悩んだというか、困ったのですが……
- タイトル、風景、回想、青春、旋律、余韻、会話等うまいですね。自己満足、独りよがり、難解な作品がある中、1000文字に納まり切らない物語のスケールと読後の余韻があります。キラリとしたものを感じました。
●ポケット(川島ケイ)
- 少し既読感があるような印象で物足りなさも感じるのですが、作品としてはうまくまとまっていたと思います。
- ポケットという意外な素材をこの上なく上手に使われていたと思いました。ラストも文句ない哲学で締めくくられていて、感動しました。金魚が死んでしまったことが少し気がかりでしたが、気絶しただけかもしれないので、この作品に投票します。
●バス ドライバー(有馬次郎)
- 有馬次郎さんの『バス ドライバー』を推します。川島ケイさんの『ポケット』や 爪木崎青也の『レモン』など今回僕好みの面白い作品がめじろ押しでしたが、その涼やかさと爽やかさで『バス ドライバー』を一押しします。
- 全作品を読ませて頂きました。感想は、個人的に好きな物だけ選ばせて頂きましたのでご了承下さい。
Entry6 どうにもならない
あと100文字以上書けるスペースがあるので、もう少し何か想い出のシーンがあるといいのかな〜。
Entry17 しろくろ
人間のたった一言の あっ が「あっ」となてるほうが読みやすい「 」がないと、何を読んでいるかわからない。
Entry18 愚痴
ねこの目、気にした事なかった。落語になりそう。
Entry21 合鍵
会話のシーンって少ないですよね(皆さん)小説で会話の少ないのってあまり見た事ないです。これはわりとしっかりしていると思いました。
Entry24 ポケット
現実には無い話、でもわりとリアル。会話の配置も読みやすいと思います。最後の一行は無い方が好きです。
Entry26 俺は文才
俺と主人の関係がいい。でもこの作者はどっちだ。
Entry30 バス ドライバー
主人公がかっこいい。アナーキーなおやじ、今はすくない。1000文字で書き上げている内容としてはバッチリ。台詞もいい。ハッキリ云って、好きです。
以上。その他の方々申し訳ございません。
●小豆洗いの憂鬱(南大介)
- 最初の1行、そしてその次の台詞にある「チマチマ」という単語に爆笑してしまいました。最初の出だしが肝心、という言葉はどんなに短い小説でも適応されるんですね。
- 関係ありませんが、新世紀の後のせいかやたら一本が短く見えますね。目を惹いたのは『小豆洗いの憂鬱』『ポケット』。完成度の高さで『小豆洗いの憂鬱』を推します。セオリー通りではありつつも効果的な掴みと、己が名刺に乗っ取られる『壁』を彷彿とさせる風刺的とも言えるアイデアがよく合致していました。ラスト一行も叙情的かつ風刺的で愉快です。ただ、ラストへの盛り上げのため、「小豆を洗わなかったらどうなるのか」という疑問はあまり早く抱かせるべきではなかったかも知れませんが。
●愚痴(岡嶋一人)
- 『愚痴』は行を追うごとにオチへの興味が積み重ねられました。個人的にノアさんの『夜と君』完全版も気になりますが、完成度から見て、こちらに一票です。
- 今回は猫ネタが多かったのですが、その中で気に入ったのでこれにしました。私も猫を飼っていると思うのですが猫ってきっとこんな喋り方なんだろうとか、擬人化したときの猫の雰囲気が私のイメージと合っていました。次点では「ポケット」が良かったです。独特の雰囲気が感じられて、是非映像化したら面白いはず。設定が独特だったため展開も奇想天外でもおかしくないはず。もう一歩後押しが欲しかったです。
●しろくろ(幸野春樹)
- なぜはじめから庭に埋めてやらないのか(借家なの?)、ちょっと疑問は残るけれど、小動物の愛らしさがふわふわと漂う、すてきな文章だったと思います。
●草原の羊(高橋英樹)
- とても読みやすかった。出だしで読もうかなと思わせた。途中で読むのを止めた作品が多かったが、これは最後まで読めた。ちょっと村上春樹っぽい気がするが……。
●水のない水槽の中で(岡さやか)
- 行間から漂ってくる雰囲気が好きです。抽象的なんだけれども、今の自分の心境に合っているような気がして、なんか、心に染みました。
●贋爺(鮭二)
- なにもかわりばえのしない日常の風景を淡々と綴る、といった感じの語り口と、実際に語られることの過激さとの対比が面白かったです。はじめ読んだときは「はあ、なんじゃこりゃ」という印象だったんですが、読み返してみてじわじわきました。
●洗礼(ショート・ホープ)
- 質感ある回想と現在の心の動きの描写のつながりが好きです。
●そして世界が(るーつ)
- 現在の世界のありように、考えを馳せられるような作品が好きです。人間の本性とかを想うことができるような。短い文章の中でそういったテーマを扱うことは難しいことだと想いますけど、多くの人が挑戦してくれるといいですね。
●合鍵(川辻晶美)
- 作品全体がまとまっている。作者はもうだいぶ書いてこられたかたなのではないでしょうか。
●該当なし。
- 僕も含めて全員出直せって感じですか。このサイトは茶化さないでやったら、次世代のアーティスト発掘に本当に貢献したりして。出直します。
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